岩手県は全国有数のホップ生産地です。遠野で開催された遠野産ホップ<IBUKI>収穫を取材に岩手へ。せっかくの岩手ですから、盛岡の夜をじっくり味わいたい!ということで向かいました飲み屋は「沢内甚句」(さわうちじんく) 。岩手県沢内村の民話「およねと沢内甚句」が由来です。
JR盛岡駅と北東北最大の歓楽街「大通」を繋ぐ北上川にかかる開運橋。ここからすぐの場所にある創業三十余年の正統派の飲み屋です。
二階建てで一階は厨房とカウンター、テーブル席の配置。飲み慣れた常連さんが地元のお酒「あさ開」や「鷲の尾」を傾けています。
昔ながらの急な階段を登って二階へ。こちらは板間になっています。味わいたっぷりの飴色木造家屋に旅情を感じます。
看板料理の一つ「ももどり」は後半でご紹介します。メインは岩手の山菜料理ですが、日替わりメニューにはいる三陸の魚も人気。納豆汁やきのこ柳川など素朴な料理がしみじみ美味しいんですよね。
ひっつみ汁は小麦粉をこねて薄く伸ばしたすいとん汁のような料理。盛岡のスナック風の小さな酒場で飲んでいるときに、そこのママから「引きちぎるからひっつみ」と教わりましたが、調べてみると本当にそうなんですね。
定番メニューはそれとして、日替わりメニューがこれまた楽しい。三陸名物、どんこは今が旬。ぷりっぷりの肝はカワハギに勝るとも劣らない美味しい魚ですが、なかなか東京の飲み屋では見かけないものです。メローやまんぼう、地元のきのこや山菜のオンパレードに注文がなかなか決まりません。だってみんな食べたいですから(笑)
ここはイチオシと聞くわらびのおひたしでシンプルに。つるっとした食感と喉越し、爽やかな自然の風味にだし醤油がよくあいます。瓶のキリンラガーをいただいて、それでは乾杯!
渋い店内には歴史あるビールが似合います。
お通しとしてでてくる大根の漬物。浅漬けでシャキシャキ。そうそう、こういうシンプルなのが嬉しいんです。
こうなると日本酒がほしくなります。ご当地の老舗酒蔵・菊の司酒造がつくる七福神をもっきり(800円)で。飯米として知られる「ひとめぼれ」岩手県産を一部使用した辛口純米。キレのある味とふくよかな旨味が料理を引き立てます。
もうそろそろオフシーズンに入りますが、まだまだ美味しく食べられるホヤ。独特な苦味がお酒を誘います。東京でもみかけるホヤですが、お酒も地元のものをセットで楽しむのは、また別格の美味しさです。
さて、今回は「沢内甚句」で看板料理のももどりを頼まなかったのですが、せっかくなので系列店である「ももどり駅前食堂」で食べた様子をご紹介します。こちらの店舗はお昼からやっているので、盛岡駅前での昼酒ポイントとして要チェックです。
ももどりは、胡椒たっぷりのスパイシーなもも肉を骨付きのまま焼いたもの。山椒も聞かせているようなピリピリ感で、いつにも増してビールが進みました。岩手は鳥料理が昔から盛んなところですから、土地の雰囲気にもぴったりです。
ももどり駅前食堂では店の中で豆腐をつくっていて、作りたての寄せ豆腐(380円)も人気です。
観光や出張で訪れる人もよく利用する盛岡で人気の飲み屋「沢内甚句」。観光客ばかりのお店かというとそうではなく、あちこちから盛岡弁のあったかい会話が聞こえてきます。こういうお店でのんびり飲むの、大好きです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)
沢内甚句
019-654-4860
岩手県盛岡市開運橋通5-4
17:00~23:30(日定休)
予算3,700円