浦安駅前に人気の酒場があります。焼鳥「とさか」、駅前で長年続く老舗です。1969年(昭和44年)、営団地下鉄東西線の開業とともに急速に都市化が進んだこの地。駅前には街の発展を見続けてきた老舗酒場が数軒あり、とさかもそのうちの一軒です。
持ち帰りの焼鳥が芳ばしい香りを漂わせているため焼鳥屋のイメージが強いのですが、暖簾の向こうは昔ながらのなんでもござれの昭和酒場が変わらず続いています。
大手町駅から東西線で17分。旧江戸川を渡り、千葉県最初の駅である浦安。かつて陸の孤島と呼ばれていた面影はどこにもなく、整備された駅前商店街には賑わいがあります。東京ディズニーリゾートの街でもありますが、舞浜までは路線バスに乗る距離です。
昭和の高度経済成長期に誕生した街も、まもなく50年目を迎えます。隅々見渡せば、昭和の面影をみつけました。いい味のある駅前ならば、飲み屋さんも期待できるというものです。
居酒屋・御食事のとさか。赤い提灯と縄暖簾が迎える懐かしい佇まいの店。若い世代も多いベッドタウンですから、古いお店は寂しいものかと想像される方もいらっしゃるかと思います。それが扉を開けてみると、なんと若い人たちで大賑わい。ピークタイムは満席で入店できないほどです。チェーン店もよいですが、こういう街の個人経営の酒場を気軽に利用する人が最近増えています。
昔のサッポロのロゴ、赤い星マークのジョッキも現役の店。昔から変わらずサッポロのようです。中ジョッキは昔ながらのたっぷり500mlサイズで、しかも状態がいいのも嬉しいです。では乾杯!
お通しは日々変わるそう。今日は小松菜と厚揚げ豆腐に煮浸しです。
ビールは樽生が黒ラベル(中ジョッキ520円)、瓶ビールはサッポロラガーの中瓶です。酎ハイ類は420円もウイスキーはおなじみサントリー角をおいています。
一ヶ月キープのボトルもあって、ご近所の飲み友達風のお父さんたちが、耳を程よく赤くして二階堂を楽しんでいました。
格子状の天井に碧色の壁。細工が施された昭和のランプシェードも味があります。
料理は店先の焼鳥に加え、500円前後で豊富な品ぞろえ。銀だら煮、鮭ハラスやいわし、穴子天と海鮮が多く、よく見れば名物蟹汁(570円)の文字も。これはテンションあがります。
何気なく見渡していたところで、ふと鯨さしみを発見。真鯛刺しと天秤にかけて、たまには品を変えてこれを注文。たっぷりもられて520円。飾りの人参に紫蘇の実、たっぷりのすり生姜と丁寧な盛り付けです。
焼鳥は1本から注文可能で、さらっとした甘さ控えめのタレ、もしくは塩で焼いてくれます。その日串打ちしたフレッシュなものを提供してくれるので、ジューシーでビールも進みます。
千葉県といえばホンビノス貝。千葉ブランド水産品に認定され、今や正真正銘の土地の幸。市川沖などで漁獲されています。ここ10年で食卓に加わった外来種ですが、蛤に似ていて、大ぶりで味は濃い目。アメリカではクラムチャウダーの定番だそうですが、千葉ならば酒蒸しが似合います。
肉厚、ぷりっぷり。4個はいって500円はお得感もあります。三つ葉を入れてお澄まし風の盛り付けです。
お茶割り(420円)。焼酎はしっかり入ってじんわり酔ってくる一杯です。みりんやだしをつかった料理には、なんだかんだで酎ハイならお茶割りで落ち着きます。
テーブルの上が楽しくなってきました。あとはじっくり、酎ハイをちびちび飲みながら老舗酒場の景色の一部になれる幸せを噛み締めて、ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
とさか
047-351-0161
千葉県浦安市北栄1-15-13
16:00~22:40(日定休)
予算2,500円