日光「花結」 素敵なご夫婦が営む、杉並木わき道の愛され酒場

日光「花結」 素敵なご夫婦が営む、杉並木わき道の愛され酒場

2018年6月25日

思いがけない場所で、素晴らしい酒場に出会うことがあります。そんなお店で、地元の常連さんと語らい地酒や土を楽しめられることは、まさに旅の醍醐味です。

歴史ある街によき酒場あり。ここは日光市街。説明するまでもなく歴史を持つ地域です。

観光客が集まる飲食店はガイドブックに任せるとして、「Syupo」では、日光でみつけた素晴らしき酒場「花結」をご紹介します。

日光へはJR日光線で宇都宮からおよそ50分。玄関口となる日光駅は、1912年(大正元年)築のネオ・ルネッサンス様式の立派な木造建築で、駅舎内には貴賓室も備えています。

また、下町・浅草や北千住からのアクセスは、東武鉄道も便利です。JR日光駅から少し離れた場所にある東武日光駅は高原ロッジ風です。東武日光側は、華厳の滝や中禅寺湖、東照宮などの観光地を目指す人々で賑わい、お土産屋やレストランが立ち並びます。

日光駅周辺でも、十分に日光山系の絶景を眺めることができます。

さて、目指す酒場「花結」はJR日光駅から日光街道を越えた先。杉並木が実に立派です。

観光の人をほとんどみかけない、多少の飲食店や商店、住宅が並ぶエリア。主に観光業に携わる人々が暮らす地域です。

瓦の平屋に縄のれん。青い看板が目印です。中禅寺湖方向へなだらかに傾斜した道路に面しています。この佇まいで「ビビッ」と来たのが覗いてみようと思ったきっかけでした。

ピシっとしたつくり。割烹というほどではなく、酒場らしいつくりなのですが、ご主人のこだわりを感じる内観。日光でもう何十年もやっているそうで、建物は古いですが、非常に清潔感があります。

元は鉄道マンというご主人。その後和食の修行をして店を開きました。料理は刺身、焼き物、揚げ物に焼鳥と酒場らしく幅広い品ぞろえ。日光の里で真ツブ刺身の文字を見かけるとは驚きます。

杉の一枚板はご主人のこだわり。長く使ってきたものを最近、鉋(かんな)がけして蘇らせたそうです。

お店のビール・サッポロは創業時から。清潔なサーバーから丁寧に注がれた黒ラベルは美しいです。では乾杯!

お隣の常連さん方と軽く会釈して、まずはあん肝酢を肴にビールをぐっと。お隣の方は観光業の方だそうで、日光の今・昔のことを教えてくれました。旅行のスタイルは変わっていくから日光の街も変わらなくては…という言葉が印象的でした。

結構ピリ辛だけど大丈夫?と聞かれて、では試してみましょうと「スタミナ焼」。ホルモン炒めでキャベツと一緒に食べれば辛さもちょうどよく、しっかりしたコクがビールを進ませます。

お酒は遠く尾瀬をこえた先、会津の「末廣」です。日光から会津にかけて、里・街道の歴史と水の良さから銘酒揃いです。軽くぬる燗にしてきゅっと飲めば広がる米の旨さに頬が幸せになります。

ここの焼売は美味しいんだよ、と奥のお父さんからおすそ分け。いっしょに街のこと、酒のことで会話に花が咲きます。日光に来ると観光地で接客的な会話はあっても、こういうリアルな会話の機会は多くありません。街の酒場ならではの一期一会の出会いに、飲み旅の旅情を感じます。

続いて地元・日光のお酒。冷酒できゅっと。水飲み鳥のごとく口からお迎えです。

次のおつまみは、店名を冠した「花結」。常連さんの好物料理で、もともとメニューになかった料理が評判になったもの。生姜と梅肉を大葉と豚肉で巻き、衣をつけたとんかつ風のおつまみ。お客さんたちによって、裏メニューに「花結」と名付けられ、以来名物になったそうです。

注文を受けてから丁寧に巻き上げて揚げるので時間はかかりますが、ジューシーかつすっきりした味はビールや日本酒をすいすいと進ませます。

明るい笑顔が素敵な女将さんと、しっかりした仕事ぶりで町の人々に慕われているご主人。夫婦二人三脚で営む日光の大衆酒場は、今日も常連さんたちの笑い声に包まれます。若い男女や家族連れも訪れるお店なので、店構えの敷居に恐れず、ぜひ覗いてみてください。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

居酒屋花結
0288-53-2781
栃木県日光市相生町13-4
17:00〜22:30 (日定休)
予算2,800円