十条のソウルフード「からし焼き」をご存知ですか。ひがじゅうこと東十条の食堂「とん八」で高度経済成長時代に生まれた豚肉料理で、名前の通りピリカラの味が魅力のスタミナ料理です。
そんな「からし焼き」を肴にしっぽり飲めるお店といえば十条駅前の「大番」。今回はそんなからし焼きを肴に瓶ビールを傾ける幸せをご紹介します。
JR十条駅。新宿駅から埼京線で3駅とは思えないローカルな佇まい。駅前にも古き良き昭和の商店街が広がり、数十年前の東京の町並みが今も残る北の下町です。
この界隈は関東大震災で大きな被害を受けた下町の人が移住して誕生した街なので、ある意味、本当の下町情緒といえるでしょう。
駅周辺には昭和初期誕生の大衆酒場や食堂が立ち並びます。十条駐屯地があることから自衛官や関連業者が飲みに来ることで潤った飲み屋街でもあります。
味の大番もそのひとつ。名物の「からし焼き」のほか、夜は22時まで営業の食堂飲みの人気店でもあります。定食は500円からと実に良心的。
ふた昔まえの社員食堂のような雰囲気。昭和がそのまま残っていますが手入れは行き届いていて清潔。
暖簾越しに差し込む昼の日差しに照らされて飲む瓶ビールは、アフターファイブの乾杯とは異なる”特別感”。それでは、サッポロ黒ラベル大びん(600円)からトトトと注いで乾杯。
からし焼きは定食で850円。(写真はからし焼きミニ定食で750円)
ミニといっても、普通の定食の満腹になるボリューム。標準サイズは今の時代では腹ぺこさん向け。
からし焼きと言うと初めての方はトウガラシかネリガラシの生姜焼きのようなものを思うかもしれません。これが全然違います。そして一口食べるとやみつきになり、額にじんわり汗をにじませながら、もくもくと食べて、ぐいぐいビールが進みます。
からし焼きはすき焼きに似た作り方。豚肉を炒めたあと、残りの油で豆腐を炒め、そこに甘辛くニンニクたっぷりタレをたっぷりかけて軽く煮込んで出来上がり。こってり濃厚。うま味調味料とニンニクの強烈なコクと香り、脳裏の彼方をくすぐります。
いつの時代になっても、昭和のスタミナ料理と瓶ビールの組み合わせは色あせません。
このあと、商談・接客がないときのとっておき昼酒処です。もちろん、夜の酒場利用もよいお店。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
味の大番
03-5993-4182
東京都北区上十条2-11-10
11:00〜14:30・17:00〜22:00(水定休)
予算1,500円