勝どき「魚仁」 市場と目と鼻の先、ここは場外飛び地酒場

勝どき「魚仁」 市場と目と鼻の先、ここは場外飛び地酒場

2017年5月4日

月島はもんじゃの街として広く知られていますが、その昔は石川島播磨重工に関連する町工場と、そこに勤める人々が暮らす長屋の街として栄えました。もんじゃ屋が多いのは、長屋に暮らす子どもたちのための駄菓子屋が多かったことに起源があります。

そして、町工場があるといえば、当然酒場もあるにきまっています。もんじゃの影に、いまでも老舗の赤ちょうちんが人々を呼び寄せています。

一応、島ではあるわけで、よって月島に暮らす人達のための商店街が必要で、それが発展したのが月島西仲通り商店街(もんじゃストリート)です。そこで1971年(昭和46年)に創業した一軒の魚屋「魚仁」が、現在すごいことになっています。

清澄通り沿いを歩いていると昼過ぎあたりから、魚の焼けるいい匂いが漂ってきます。魚仁はもとは魚屋、いまは酒場として営業しつつ店先では様々な海鮮惣菜を販売しています。

月島は勝鬨橋を渡った対岸が築地中央卸売市場。わずか数百メートルしか離れていません。そんな立地から、毎朝魚仁の大将はバイクとリアカーを使って市場から大量の魚を仕入れてきては、その日の分を売り切る(休場日などはこの通りではありません)というスタイルを貫いています。

400gはありそうな巨大チャーシューや山盛りのブリやタイのカマ焼き、マグロの頬などの珍味もあれば、箱ウニも相当安く販売しています。

16時の開店にあわせてどっと人が集まり、あっという間に満席になる店内。相席あたりまえで、袖振り合うも他生の縁ということでみんな仲良く、魚とお酒で笑い合います。

料理は300円から500円がほとんど。それでいて、これぞ市場の男飯といわんばかりの盛りの良さが特長。親父のおまかせ盛(2000円)は、二人で頼むと飽和状態になりますからご用心。

とにかく活気があり、飛び交う巨大な刺身の山に、雑多な雰囲気で飲むのに慣れていない方は落ち着かないかもしれません。お店の人の接客も威勢がすごくよいので、こちらもどっしりと構えておきたい。

ビールはサッポロ黒ラベル。435ワイドジョッキに入って400円と嬉しい安さ。次々たいへんな勢いで売れていくので、もちろん鮮度もよく、ジョッキの洗浄もしっかりしているのでここの生は美味しい。

乾杯!

日本酒・白鹿は300円、酎ハイ・ウーハイも300円と、飲み物も安くて、食べ物も安い。魚で飲む人にはこれほどや財布に優しい店はないかもしれません。

海老好きの筆者は毎回甘エビからスタート。おおぶりの甘エビが7尾で500円。髭がピンとはっていて角も硬い上物です。

安さで言えばイカ刺しが300円でボリューム満点でおすすめ。サーモンも二重になってたっぷりやってきます。

名物のまぐろ料理からぶつ切り単品で500円。盛り合わせで1000円、1500円とありますが、食べ盛りの4人グループなどでないと残してしまいそうな量なので、ひとり、ふたりのときは単品注文がよろしいかと。それでも、こんなに山盛り。

魚仁の刺身に慣れると、スーパーマーケットのお刺身コーナーが高級店にみえるから不思議です。

迫力満点、無骨な料理の極みはこのチャーシュー。魚が続いて疲れてきたところに、豚の脂と甘くにつけた味付けが別腹を開かせる。

グループでわいわい飲む人は、サッポロビールの甲類焼酎、トライアングルのインディゴがボトル2000円なので、それと割り材を頼んで注ぎ合うとよりお得。

〆のアラ汁をいただいて、大満足です。

活気のよさは、築地の場内に匹敵するほど。大量の魚が飛び交う雰囲気は、これもまた築地周辺の酒場ならではの個性ではないでしょうか。

雑然とした空間、相席当然、山盛り料理、飲みに来る人を選ぶタイプの酒場ですが、好きな人にはたまらないお店です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

魚仁
予約不可
東京都中央区月島3-12-5
17:00~23:30(基本無休)
予算2,000円