本日は東京は築地から市場人御用達の食堂「東都グリル」ご紹介します。グリルという店名の通り、半世紀前の開業時には洋食のお店だったそうですが、通う食品のプロたちの「食べたい、飲みたい」の要望に答えてきた結果、なんでもござれの大衆食堂となったそうです。
観光客でごった返すもんぜき通り界隈の活気も楽しいですが、じっくり午前から飲むのであれば「波除稲荷神社」寄りが穴場です。こちらは市場を職場とする人々や仕入れ・営業で出入りする食品関係者の憩いのエリアだから。
波除稲荷神社は築地の神様。飲みに行く前に普段頂いている海産物への感謝の気持ちを込めてお参りするのもいかがでしょう。
東都グリル周辺は築地市場の勝手口。いや、もともと市場なのだからすべて勝手口とも言えそうなのですが…
場外に位置しているので、市場の緊張感は少し安らぎ、長靴姿で歩く方々も表情はやわらかい。
食品系の会社が入るビルの地階に広がる食堂がご紹介する「東都グリル」です。65席と大箱ながら、朝6時30分の開店と同時にチャキチャキのお兄さん、お姉さんたちが集まってきて午前のうちから満席になるほどの賑わいです。
市場の男・女の朝は早い。太陽が昇る前に仕事をし、私たちが築地へ散策に行く頃には彼らはもうオフタイム。だから、市場人向けの食堂は朝から飲酒天国なのです。
意外に思うかもしれませんが肉料理が多い。魚河岸ややっちゃ場の人だって労働の後は肉が恋しいですもんね。チキン、ハンバーグ、とんかつにカレーライス、そしてラーメンまで元気メシが目白押し。
もちろん、魚のプロを納得させる魚介系フライや焼き魚、刺身も豊富です。
洋食メニューもこの通り。食べたいものはなんでも揃う、とりあえず東都グリルに行けば問題ないわけです。
朝から飲酒ウェルカム。ターレットトラックを車庫に納めたら、その足で東都グリルへ直行ね!
ミートボールにナポリタン、いくつになっても子供の頃好きだった料理は定番からハズレませんね。
生中でも、世間の大生サイズがお店のウリ。市場で声を張った喉にはこのくらいの生ビールが必要と言わんばかりに、ウィンドフレーカーを着こなすイケメンたちが喉を鳴らして杯を空けていきます。
写真は中生620円でこのサイズ。取材時は午前中だけれども、私もオールデイズ生ビール。黒ラベルで乾杯!
日替わりのA、B定食は850円から。ボリューム満点、丼ぶり山盛りのご飯が出てくるので空腹時には定食と瓶ビールというのもよさそうです。
お刺身を適当に盛り合わせて、というざっくりしたオーダーにも笑顔で「はいはい、今日はヒラメが美味しいよ」と応えてくれるスタッフの皆さん。市場用語を交わしながら熱燗を酌み交わしているお隣さんもつまんでいるお刺身は、言うまでもなく素晴らしい。鮮度ではなく、旨味がでる寝かした美味しさが楽しめます。
ねっとりとして旨味が強く、余韻がお酒を誘うお刺身。
こりゃたまらんとお店の定番酒のひとつ中尾醸造の誠鏡ひやおろしの冷をひとつ。目の前で枡に注いでくれるのですが、時間はまだ正午前なのです。口から迎えにいってきゅっと飲んでしまったら、今日の原稿書きなんてどうでもよくなりそう。
定食の盛り合わせはメインのみを頼むことも可能。今日のB定食、チキンカツとカキバターを頼んでみました。やっぱり洋食屋さんだけあってオリジナルのソースが味の決めて。
カキバターにはタルタルがかかったムニエルのよう。牡蠣を頬張り…
広島は竹原の誠鏡をきゅっと飲む。ふくよかな味わいのお酒で言うまでもなく牡蠣の余韻にマッチします。
三枚におろして揚げたフレッシュなアジフライや長年変わらず愛され続けるビーフシチューなど、他にもおすすめの料理はいっぱいあるのですが、なにせしっかりボリュームがあるので満腹になってしまうのが残念。
地階にあって、集まる人の生活リズムも早い方向へシフトしているので、気分はいつでも夜の食堂飲み。素晴らしい一軒です。築地は働く人が集うお店を目指してみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 東都グリル |
住所 | 東京都中央区築地6-22-4 東水ビル地下1階 |
営業時間 | 営業時間 [月・火・木・金] 8:00~20:00(L.O.19:20) [水] 8:00~15:00 [土] 7:00~15:00 定休日 日曜・祝日 |
創業 | 1963年 |