立ち飲み天国の上野にあって、ゆったりと座りながら飲めて価格帯的には立ち飲みと変わらない、そんな素敵なお店があります。マルイ裏の飲み屋通りではなく、昭和通りをこえて稲荷町方向へ進んだ路地裏。毎日どんちゃん騒ぎのエリアとは正反対、どことなく地方都市の飲み屋街のような感じです。
キンマル酒場は、もとは駅前で立ち飲み「よってけバー 」で働いていた店主・金丸氏が開業させた酒場です。「よってけバー」の名残から、店名に「酔ってけ場」の文字が入ります。
串かつをメインに、200円前後の小鉢メニューで飲ませるせんべろ飲み屋。店の入口に貼られたキッコー宮マークの通り、キンミヤ甲類が看板ドリンクです。
ビールはアサヒで、生中は390円(以下税別)。酎ハイ類は290円で各種。ベースはもちろんキンミヤです。炭酸ディスペンサーが導入されていますので、ガス圧が高い酎ハイが提供されます。
注目は、店名を冠したキンマルハイボールで260円。括弧書きでカンダハイボールと書かれていますが、これは神田食品研究所(プロはKSKの愛称で呼ぶ)がつくる下町エキスを使った焼酎ハイボールのこと。KSKのエキスは、台東区竜泉の天羽飲料製造の天羽の梅と並ぶコンクメーカーで、この両社や大手の合同酒精「梅の香ゴールド」も合わせて、味の違いは楽しい。え、マニアック過ぎ?
つまりは、美味しいということで(笑)
なお、土日祝は10円引きになります。
キンミヤカルーアとは一体…。組み合わせ無限大の甲類。
もともとは刺身なども出す「よってけバー」の店主だっただけに、揚げ物以外もしっかり。
特に日替わりのお刺身は190円と上野の立ち飲み各店もびっくりの価格ですが、なかなか上等なので揚げ物屋の刺身だからと無視せず試してほしいです。仕入れルートを確立した店は強い。
さて、色々語りましたがまずはホッピーで乾杯。氷入りですが、やっぱりキンミヤ&ホッピーは安定の組み合わせ。ソト1、ナカ3で。
揚げ物は50円から90円。バラエティ豊かであれもこれもと食べたくなります。衣にこだわりがあり、パン粉が薄いのにシャキシャキとした歯ごたえ。関西の串かつ屋と違い、どぶ漬けソースではなく自分でかけるスタイル。好みがわかれるところですが、私はこれもいい。
ヤングコーンは真ん中に串を突き刺して。コリコリ食感と甘さ、辛さのちょうどいいバランス。
皆さん気になる「俺のレモンサワー」は340円。キンミヤに強炭酸のソーダを注ぎレモンコンクを軽くいれ、最後にレモンを皮ごとすりおろしたもの。果実感がガツンときて、苦味や青味もアクセント。喉にあたってむせないように。
カレーもつ煮込みは、揚げ物の間でちょいと摘むのに最適。根菜とシロがたっぷり、バケットにのせて食べれば大満足。
カンダハイボールも飲んだし、そろそろお酒を変えましょうか。日本酒も290円からと良心価格で、しかも蔵元直送と心強い。
前身の酔ってけバーは、長野県諏訪の地酒「横笛」を広めるアンテナショップ的なポジジョンで蔵元の「伊東酒造」の系列が立ち上げたお店。独立したキンマル酒場の金丸さんはその当時のご縁を大切に守っています。”純米酒が290円で飲める”、これは知られすぎては行けない気がする…
店のカウンターは、酔ってけバー時代のカウンターをそのまま移設。伊東酒造の社長のこだわりで、立派な厚さ10センチ超の無垢の木を使っているので、せんべろ酒場とは思えない重厚感。横笛をいっぱい飲んでそのこだわりに貢献しないと。
合鴨の燻製に純米酒。キリっとした味なので合鴨の旨味と調和して、なかなかいい感じ。
割り材はホッピー以外はほとんどコダマ飲料。青りんごや梅など、定番のバイス以外にも様々揃っているので、ぜひ駄菓子屋感覚で試してみてください。
酔ってけバー時代の常連さんや、安く座って飲める噂を聞きつけた人たちなどで賑わう店内。場所柄、すぐ近くにある東京メトロ本社の方も飲みにいらしているようで。
店の賑わいは曜日や時間にムラがあるので、一度目に混んでいて入れなくとも、少しどこかで”ひっかけ”て、二軒目でトライしてみてください。トークも楽しい金丸さん、ここは立派なカウンターで飲むのが特等席です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
酔ってけ場 キンマル酒場
03-3837-1044
東京都台東区東上野3-15-10
17:00~23:00(土日祝14:00~・不定休)
予算1,500円