京急電鉄の列車の行き先として頻繁にみかける金沢文庫という独特な駅名。京急は不思議な由来の駅名が多いですが、金沢文庫の名前は古い。駅の近くにある「県立金沢文庫」からついた駅名です。
金沢文庫とは、鎌倉時代に北条実時が創設した武家文庫で、現在は県立の歴史博物館として続いています。国宝や重要文化財など2万点以上の資料を保管していて、見学することも可能です。称名寺(横浜 八景島)と合わせて、時間旅行に浸るのもよいかもしれませんが、やはりそのあとの一杯は外せません。
金沢文庫で飲むならば、ここ「市場食堂」がおすすめ。卸問屋の松井水産直営で、店名の通りの市場の雰囲気そのままの食堂です。11時30分の開店と同時に、飲み客と食事客で席はあっという間に埋まり、大衆食堂なので当然相席ごめんという人気ぶりです。
昼食の時間を過ぎるとゆったりとしたアンニュイひとときを楽しむ昼酒タイムに突入します。刺身をつまみに日本酒を飲む常連さんや、レース日ともなれば競馬新聞を片手にテレビに夢中のお父さんがやってきます。
メニューは海鮮を中心におよそ100種類。小鉢類は300円、刺身は380円から、天ぷらも400円からとリーズナブルです。焼き魚、煮魚も充実していて、通いたくつまみが勢揃いしています。
飲み物はビールが生も瓶もアサヒスーパードライ。中ジョッキで450円、中びんは500円と食事メインの食堂としては良心的な価格設定です。もちろんお通しはありません。
生ビール中ジョッキは昔ながらのサイズでどんとやってきます。ジョッキが冷やされていることはもちろんのこと、鮮度やディスペンサーの状態もすこぶるいい、”おいしい生”が楽しめます。散策後の乾杯は最高です。
甘エビの刺身がイチオシで、有頭でかなり大きいサイズのものが7尾も盛られて500円です。ご覧の通り鮮度は抜群で、身がぷりっぷりの食感です。
数人で飲みにきた場合は刺盛りも選びたい。ホタテ、かんぱち、タコに鯛、エビとまぐろがついて桶盛り980円です。鮮度は言うまでもなく抜群です。ランチで寿司や海鮮丼が人気でつぎつぎ売れていくので魚介の回転がよい。これはもう、金沢文庫を素通りしている場合じゃないと思いませんか。
穴子天ぷら(650円)も、大きな穴子が2つに、さらにナスや舞茸がついてこの価格です。揚げたてでサクサクとした仕上がり。食堂的な天ぷらではありますが、油の状態がよく、ふんわり甘い香りが漂います。ビールや日本酒・日本盛の冷酒をきゅっと合わせていい気分。
磯辺揚げや串かつなど、大衆酒場の定番も一通り揃うので、飲み屋としての利用にアウェイ感はありません。
そば茶割りが常連さんに人気のようで、緑茶のお茶割りも含めて焼酎がしっかり効いているのがポイントかもしれません。
300円のおしんこもこんなにキレイに盛り付けてくれます。「こんなお店が家の近くにあったらいいのに」と心から思える食堂です。駅前のすずらん商店街を行き交う人をぼーっと眺めながら、心やすらぐひとときを過ごしました。
年配の方がおもなお客さんですが、接客も丁寧ですし、若い人もぜひ覗いてみてください。きっと好きになると思います。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
市場食堂
045-785-9901
神奈川県横浜市金沢区谷津町359
11:30~21:00(日祝定休)
予算1,600円