古くから工業都市として発展してきた黒崎。駅周辺には働く人のための酒場が密集していますが、実はビール分野でも非常に興味深い店があります。『DAIMARU(ダイマル)』は、1989年創業の老舗ビアバーです。国内に数台しか現存しない昭和38年製の特製氷冷サーバーを操り、熟練のマスターが極上の一杯を注ぎます。今回は、1日3時間だけ開く琥珀色の空間を紹介します。
目次
工業都市で30年以上親しまれる隠れ家空間

北九州工業地帯の一角を担い、三菱ケミカルや安川電機、日本製鉄など洞海湾沿岸に大規模工場が立ち並ぶ黒崎。企業城下町として独自の発展を遂げたこの街は、酒場カルチャーが根付くグルメタウンの側面も持ち合わせています。そんな街の中心部で長年支持される存在が、カウンターのみの隠れ家的な空間『ダイマル』です。

店内はイングリッシュパブを思わせる落ち着いた色調でまとめられ、街の喧騒から切り離された穏やかな時間が流れます。カウンターに座れば、これもまた黒崎の夜なのだとなんだか不思議と納得してくるから不思議。実に居心地がよいお店です。

目を引く存在が、カウンターに鎮座する円筒形のビールサーバー。国内に数基しか稼働していない昭和38年製の氷冷式であり、側面に昔のアサヒビールのロゴが描かれた代物です。

円筒状の容器の中にビールが流れる回路があり、ここに氷を継ぎ足し温度を微調整していきます。近年の瞬冷サーバーは家庭用コンセントで稼働しますが、こちらは泡を抑え込むだけでも職人技。そんな手間のかかる機材を、この道40年以上のマスター・白石さんが巧みに操ります。
マスターは開業前、大阪の酒場「酒の大丸」で経験を積み、そこから現在の屋号を受け継ぎました。メニューに並ぶ「どて焼き」は当時の名残なんです。
営業時間は1日わずか3時間、いまも長年磨き上げた職人技を目当てに、地元のビール党が集う人気店です。
氷冷サーバーが引き出す極上の味わい
熟練の技が光るクリーミーな一杯

まずは生ビール(アサヒ熟撰)を注文しました。注文を受けると、マスターがサーバーのスイングカランからゆっくりと時間をかけてグラスを満たしていきます。強制的に泡を取り去ることなく丁寧に注がれた一杯は、ふんわりと盛り上がるクリーミーな泡が特徴。
氷冷式ならではのまろやかな口当たりと、麦芽の深いコクが喉の奥へと滑り込みます。
ビールのための定番おつまみ

ビールのお供には、定番の「ジャーマンポテト」を選びました。あらかじめラウンドケーキのような形に焼き上げられており、カウンター上のガラスケースに並びます。注文が入ると1カット切り分けて提供されるスタイル。

あえて冷めた状態で味わう洋風のおばんざい風の仕立てで、しっかり効かせた胡椒のスパイシーさがビールのピッチを上げます。ハインツのトマトケチャップを少し添えて味の変化を楽しむのもおすすめ。
黒生ビールと名物スペアリブの共演

続いての一杯は黒生ビール(ヱビス プレミアムブラック)を。黒ビール本来の旨味を感じられるよう、適正な温度管理のもとで注がれた漆黒の液体。

香ばしい炭焼きロースト香とバイエルン産ホップの風味とともに、心地よいコク深い苦味が広がります。

時間をかけて丁寧に注ぐ様子も含めて、なんだか喫茶店でコーヒーを飲んでいるような気分になってきました。

これに合わせる肴は、名物「スペアリブの黒ビール煮」を注文。たっぷりの玉ねぎとともに黒ビールでじっくり煮込まれた豚肉は、フォークを当てるだけで骨から綺麗に身が外れるほどの柔らかさ。

玉ねぎの自然な甘みが溶け出した濃厚なスープは、添えられたバゲットにたっぷり浸して余さずいただきます。
黒崎の夜を豊かにする珠玉のビアバー

国内に数台の貴重な氷冷サーバーを守り、日々の氷による温度調整を怠らないマスター。極上の一杯に対する真摯な想いが伝わってきます。東京から来た私へも丁寧に解説してくださり、生ビールへの価値観がさらに深まりました。
カウンター越しに美しい注ぎの所作を眺め、名物料理を味わう穏やかな時間。北九州を訪れた際、歴史を刻むサーバーが注ぐ至高のビールを目当てに立ち寄りたい一軒です。
店舗詳細

| 店名 | ダイマル |
| 住所 | 福岡県北九州市八幡西区黒崎4丁目6−1 グリーンパーク三共 105 |
| 営業時間 | 17時00分~20時00分 日定休 |
| 創業 | 1989年 |
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