下町の風情が色濃く残る墨田区立花。東武亀戸線に揺られて訪れたのは、町蕎麦好きだけでなく肉好きをも唸らせる名店『やぶそば立花』です。由緒ある暖簾をくぐれば、そこには規格外の「極厚カツ丼」が待っていました。私の知る中で下町最大級。昼下がりのビールとともに味わう、ごちそう感全開のカツ丼をご紹介します。
2両編成の電車に揺られて、下町の隠れた名店へ

亀戸駅から東武亀戸線に乗り込みます。都内では珍しい2両編成の可愛らしい電車。コトコトと揺られること数分、たどり着いたのは小村井駅です。スカイツリーのお膝元でありながら、観光地とは異なるゆったりとした時間が流れています。

駅を降りて住宅街を歩くと、目指す『やぶそば立花』が見えてきました。端正な蕎麦屋の佇まいに、白地に黒字で染め抜かれた「やぶそば」の暖簾。外観は、江戸蕎麦の御三家である「藪」の名を誇りにしているようにも感じられます。
それなのに、どうしてそんなカツ丼が名物になっているのか…
通常、藪蕎麦といえば、濃いめのつゆで手繰る量の少ない粋な蕎麦を想像するところ。しかし、ここは事業所も多い働く街・立花。そんな地域の人々の胃袋を支え続けてきたこの店は、良い意味でその期待を裏切ってくれます。

清潔感あふれる店内は、高級店のような凛とした空気感。この落ち着いた空間で、本当にそんな爆盛りがでてくるの?
どうしてこうなった!?極厚カツ丼を肴に乾杯

席につき、まずは喉を潤しましょう。アサヒスーパードライの生ビールをお願いします。よく冷えたビールで、それでは乾杯!
明るいうちから蕎麦屋で飲むビール。背徳感も蜜の味。

品書きを眺めると「そばがき」や「穴子天」といった、酒飲みの心をくすぐる藪ならではの酒肴(つまみ)が並んでいます。「カツ煮」で一杯やるのも魅力的ですが、今日の目当てはあくまで「カツ丼」。ここのカツ丼は並盛でも凄まじいボリュームがあるとの噂。ご飯を少なめでお願いすることにしました。
ほどなくして運ばれてきたカツ丼(1,375円)を見て、思わず息を飲みます。

丼の表面を覆い尽くすカツ。その断面を確認してさらに驚愕。厚さはなんと3cm!トンカツ専門店でもそうそうお目にかかれない、見事な肉の塊です。

出汁の香りが心地よく、蕎麦屋のカツ丼らしい出汁の風味が実に心地いいです。トンカツ店のカツ丼、食堂のカツ丼、みんな同じようで結構違うんです。藪蕎麦といえば黒いつゆが印象的ですが、ここのトンカツもしっかり飴色に染まっています。

箸で持ち上げると、ずっしりとした重量感。頬張れば、想像を覆す柔らかさに驚かされます。薄めの衣が肉の旨味をダイレクトに伝え、藪蕎麦特有の少し辛めでコクのある割り下が、脂の甘みを引き締めています。

美しい飴色に染まった玉ねぎと、半熟卵の絡み具合も絶妙。三つ葉の香りが爽やかなアクセントとなり、濃厚な味わいながらも箸が止まりません。

ご飯を少なめにして正解でした。ビールのつまみとして、この極厚カツを味わう。東京の蕎麦屋さんらしい濃い味なのでお酒と相性抜群。まさに「飲むためのカツ丼」です。
蕎麦屋の美学と下町の心意気
「やぶそば」という看板が持つ伝統的なイメージと、目の前に出された大迫力のカツ丼。このギャップこそが、やぶそば立花の真骨頂。上品な空間で、あえて豪快に肉を喰らう。そんな違和感も楽しめました。
昨今、こうした個性と実力を兼ね備えた町のお蕎麦屋さんは貴重な存在となりました。近所にあったら朝食を抜いてでもときどき食べに行きたくなるような、胃袋も心も満たしてくれる一軒です。
| 店名 | やぶそば 立花 |
| 住所 | 東京都墨田区立花4丁目15−8 戸部ビル |
| 営業時間 | 11時15分~15時00分 17時00分~20時30分 水定休 |
| 予算 | 2,000円 |
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