浅草通りと三ツ目通りが交差する本所吾妻橋。ここに明治16年(1883年)創業の酒販店があります。鳥井駒吉氏が大阪で朝日麦酒㈱の前身である大阪麦酒会社を設立した年が1889年(明治22年)ですので、アサヒビールよりも歴史があることになります。
酒販店を始めるさらに前は、造り酒屋として江戸時代の頃から商売をされていたとのことで、本所という町の奥行きを感じさせてくれる場所です。
こちらで灘の下り酒を購入し、江戸の吾妻橋にロマンを馳せるのもよいですが、せっかくなので”一杯売り”を楽しんでいきませんか。
酒屋の片隅でお酒を飲むことをいまは全国的に角打ちと呼んでいますが、角打ちは北九州由来の言葉。東京ではそのまま「立ち飲み」などと呼ばれてきました。(本記事では以下、角打ちで統一します。)
明治屋酒店は建て替えに合わせて角打ちコーナーが誕生。本所吾妻橋駅からすぐの場所という好立地と、12時から23時(土曜日は21時まで)と長い時間で営業されていることもあって、終日賑わっています。
吾妻橋にはアサヒビールの本社があります。そういう場所柄もあって、アサヒ社のビールが充実しています。アサヒスーパードライだけでなく、なんとマルエフも選べます。樽生でスーパードライとマルエフを並べて味比べできるのはとてもめずらしいことです。
大瓶(400円)でアサヒだけでなくキリンとサッポロもありますから、特定のメーカーのビールだけを飲まれる職業・趣味の方もぜひ。
ただ、こうしてアサヒだけでなく江井ヶ嶋酒造(兵庫)の甲類「ホワイトボール」をベースに使っているなど、さすが歴史ある酒販店(古い東京の酒屋は関西のお酒と縁が深いところが多い。)という感じ。
乾きもの、缶詰だけでなく、おでんやポテトサラダなどちょっとした酒の肴も用意されています。
定番の生ビールは、小(250円)、中ジョッキ(300円)、大ジョッキ(550円)と、その安さはさすが酒販店です。東京の角打ちでマルエフが飲めるなんて素敵ですね。では乾杯!
東京隅田川ブルーイングの樽も種類豊富に揃っています。アサヒビール本社周辺のグループレストランで飲むことができますが、こちらのほうがより手軽です。ピルスナーウルケルはアサヒビールが販売するチェコの定番銘柄。いつか明治屋酒店でも飲めるといいですね。
吾妻橋と言えば、アサヒだけでなく、下町炭酸の大定番、アヅマ炭酸の興水社もこの地で製造されています。そんなアヅマ炭酸の中でも幻のレモン炭酸がここに。甘酸っぱい味は、ホッピービバレッジや博水社のそれとも違いますが、これまたあと引く美味しさです。
ホッピーなど、甲類と割材のセットは300円です。
乾き物も良いですが、女将さんてづくりのタマゴサラダも素敵でしょ。ねっとりマヨ多め、ちょい濃い味なのがお酒を進ませます。
隅田川ブルーイングなどはすべてがディスペンサーにつながっているわけではなく、今日はデュンケルスタイル「琥珀の時間」(400円)が選べました。濃厚で本格的な香り・のどごしは、本場ドイツに負けない美味しさ。
吾妻橋の西詰、浅草の角にある日本を代表する酒場、カミヤバー。そこの看板ドリンク「電気ブラン」も、ここでは150円から用意されています。
歴史ある店が始めた浅草らしい品揃えの角打ちは、浅草散策の合間にぜひ立ち寄っていただきたい一軒です。切り盛りされる皆さんのお人柄も隠し味。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
明治屋酒店
03-3622-1592
東京都墨田区吾妻橋3-7-12
12:00~23:00(土は21:00まで・日定休)
予算1,000円