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旅先の一軒目、駅ナカや空港の食堂もいいけれど、やっぱり市街の老舗に向かいたい…。地方で飲むときは誰だってそう思うはず。でも、ときどき駅ナカで特別なお店に出会うのも事実です。金沢駅の新幹線下のおでんだったり、新宿駅東口のビアパブだったり。
実は静岡にも、駅ナカだからと侮ってはいけない地場の料理を楽しむ大衆酒場があります。国鉄の民営化を前に静岡駅は高架化と駅ビルの整備が進み、現在の姿となります。
その際に地元の飲食店が駅ナカのテナントとして入り、そのひとつが今回ご紹介する「三九」です。
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JR静岡駅は東海道新幹線が発着する、静岡県の県庁所在地・静岡市の玄関口。駅ビルはJR東海とともに歴史を歩んできました。
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静岡は山側に大きな飲食店街が広がっていますが、早い時間に飲めるお店は街の規模に対してそれほど多くもなく、通しで営業する酒場が求められます。そんな中にあって、駅ナカの三九はベストチョイスと言えるのではないでしょうか。
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営業時間は11時から22時30分まで、約12時間通しです。昼時の2時間は定食が中心ですが、13時には千円のずばり店名を冠したサンキューセットが登場します。このセット、静岡県焼津産のサッポロ静岡麦酒や抹茶を使った静岡割り、地酒のどれか1杯と、名物のマグロ、桜えびかき揚げ、奴にキムチ、ソーセージ、黒はんぺんからどれか2品を選べ、とにかく豪華です。
一軒目にこのセットで1~2杯飲んで、それから繰り出すなんて素敵でしょ。
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店内は昔ながらの居酒屋のテイスト。ご主人を中心に個性豊かで元気なお姉さんたちが切り盛りされています。一歩店に入れば、頭上に東海道新幹線が走っていることを忘れてしまいます。
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昔ながらのたっぷり入るジョッキが使われています。ビールは全国共通のサッポロ黒ラベルではなく、静岡県焼津にあるサッポロビール静岡工場で製造される静岡県内限定の「静岡麦酒」(中ジョッキ580)が供されます。加えてヱビスの樽生も。
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東京駅→ひかり号→静岡麦酒。無駄のない昼酒行動で、まったなしで地元のビールにたどり着きました。では乾杯!
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瓶ではアサヒスーパードライとキリンラガー(CL)も並びます。
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13時前に飲みに来ると、原則的にはランチメニューを頼むもの。桜えびやしらすがのった駿河丼や海鮮丼が1,080円と結構リーズナブル。
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居酒屋のランチなので基本飲めるものばかり。駅で働く鉄道関係者や乗り換えで立ち寄った地元の皆さんには茶そばが人気です。
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ランチタイムは一部出せない料理があるそうですが、飲んでいく人は大歓迎とご主人。13時以降のサンキューセットもあるので、明るいうちから一献楽しみましょう。
清水港で水揚げされたマグロは、お店の看板料理のひとつ。キレイな紅色で分厚くどっしりとした赤身(1,200円)は、食べごたえも十分で、一人で食べるには贅沢過ぎる一品。
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スジがなく、きめ細かな身質のまぐろです。
御前崎港水揚げ かつお(1,080円)や由比の生桜えび(980円)、用宗港のいわしたたき(630円)や生しらす(590円)など、地元の鮮魚・海産物が充実しています。まぐろスジトロ 串焼き2本(590円)はあまり他では食べられないもので、これもおすすめ。
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そして、やっぱり食べておきたいのは静岡独特のおでん(1本140円)でしょう。串に刺さっているのが特長で、タレも濃い色あいで甘辛い味です。
つみれや黒はんぺんからでた青魚のコクを吸った牛すじは、関西おでんのスジの味とは一味違います。日本酒を誘うその味に、店の定番酒・初亀が飲みたくなります。
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こまかな鰹節と青のりをたっぷりかけるのが静岡おでん。味が濃厚でコク深いです。本格的な味は、中心街の知られた老舗にも負けないレベルです。
静岡県の改札から傘をささずにいける老舗酒場「三九」。覚えておくと出張・観光が少し楽しくなるかも?
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
三久
054-283-7502
静岡県静岡市葵区黒金町4 アスティ東館
11:00 ~ 22:30(基本無休)
予算2,500円