大塚の歴史は古いです。
鉄道省が山手線と赤羽線の分岐地点として比較的平地だった池袋を選んで以降、池袋と大塚の立場は一転していきました。
西武鉄道と東武鉄道という2大民鉄路線が乗り入れターミナルとしてますます発展していった池袋とは違い、歴史ある大塚は衰退の一途をたどりました。三業地として東京北部でかなりの規模の繁華街だった大塚も、池袋にその立場を奪われていきました。特に営団地下鉄の乗り入れが頓挫したことが池袋に負けた大きなきっかけとも言われています。
今も料亭やネオン眩しいホテルが多く残るのがその名残。
飲み屋さんのレベルは町の歴史と比例します。大塚は繁華街としてはやや薄暗いですが、飲み屋さんは名店が揃います。
立ち飲み屋さんの「大つか」さんは、この界隈で安く毎日飲みたい酔っぱらいの皆さんのたまり場で、懐に優しく楽しく飲めるお店です。
お店の両隣はネオンがギラギラしていて女性一人で初めて足を踏み入れるのは躊躇してしまいそうな立地ですが、入ってしまえば安心。そこはほっこりとした温かな人情立ち飲みです。
いらっしゃい!と声をかけてくれる大将。女将が”安全なお客さん”と間に誘導してくれます。こういう場所ですから絡み酒さんもいるのですが、女将も多くの常連も、みんなが雰囲気をコントロールしています。
酎ハイとポテサラ。今日の大皿料理はどれも美味しそう。
240円の酎ハイに190円の手作りポテトサラダ。
ハムもきゅうりも入った具沢山ポテサラは、味が薄ければソースかマヨネーズをかけてねと一緒にだしてくれます。
お隣さんが「今日はマヨネーズ少ないなぁ」と言いながら味を整えています。
毎日のように通っているというお隣さんは昨今この界隈に越してきた方でお店では”新参者”だそう。普段は雑誌社で働いているそうで、毎日文字を相手に過ごしているから、仕事あがりのここでの会話がなによりの楽しみとのこと。
せっかく取材に来たのなら、あれもこれも、全部撮っていってよと話しかけてくれたのは、3つ隣のダークスーツのお父さん。
「ここは大塚で飲む飲兵衛の誇りのような場所、知名度が上がると私たちも嬉しいから」と。
お店は不思議な一体感があり、初めての人も大将や女将を介して気付いたらみんなの会話に仲間入り。
「やまちゃん、今日来るのかな。あの人が一番長いから話が聞けるといいんだけどね」と、教えてくれる一番奥のハンチングのおじさん。
煮込みが名物で、女将が毎日早い時間から仕込みしているんだよ、食べていって。
ということで、根菜たっぷりの味噌ベースのシロもつ煮込みを。うんうん、確かにこれはいいですね。一緒に飲むのならハイサワーがいいかな。ハイサワーレモンがすいすいと進みます。
()綴じの料理がボリュームがあって美味しいんだ。あとは魚が美味しいよ。毎日通っているんだから間違いない!
さっきからここのお客さんたちはお店の人以上に売り込んできます(笑)
お通しなし、料理が安くてお酒も300円くらい。千円あればゼロ軒目としてしっかり楽しめます。
「このあと、どこに行くの?俺は大塚のおでん屋やっているんだ。今度飲みに来てよ。」
「俺は待ち合わせしたあと、江戸一の女将に挨拶しに行くんだ」
皆さん、酒場を十二分に楽しんでいてなにより。ネオン街の真ん中の立ち飲み屋さんでも、ここは大変心地よいです。女性お一人様もぜひチャレンジを♪
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見なゆ)
立飲みコーナー大つか
03-3910-4554
東京都豊島区北大塚2-6-4 コミヤビルIII 1F
14:00~23:00(日祝定休)
予算1,000円
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