葛飾亀有といえば、こち亀こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の舞台となった街として有名です。下町に暮らす人々の人情や昭和の風情を感じる亀有は『こち亀』の世界観そのまです。いまにも両津勘吉が歩いてきそうな商店街が駅前に広がります。
元気な商店街のある街に、いい酒場あり。飲み屋の名店も豊富な亀有ですが、食堂飲みだって素晴らしい。JR亀有駅を南にでると2つの商店街が伸びており、そのうちのひとつ「亀有中央商店街」をしばらく進んだところにあります「ときわ食堂 亀有店」は、この界隈を代表する食堂です。
大衆食堂の魅力「なんでもある肴」をつまみに肩の力を抜いた安らぎのひとときが楽しめます。
ときわ食堂といえば街場の食堂好きにはお馴染みの東京下町に点在するお馴染みの屋号です。明治の頃に上野の料亭「常磐花壇」で修行した人が本所で常磐花壇の屋号の一部をもらって「ときわ食堂」を開業。それを起点として多数の暖簾分けがあり現在に至ります。ときわ食堂の半数以上は”東京ときわ会”に加盟していて、どことなく共通点があったりするのも興味深いです。
壁にずらりと並ぶ商札。飴色に染まった壁に黒のコントラストが美しい。この眺めだけでも酎ハイが飲めてしまいます。
ときわ食堂といえば、だいたいのお店がビールはアサヒと決まっています。亀有も同様で、大びん550円と食堂としては良心的。酎ハイ類も320円からと懐に優しく近所にあれば高頻度に通いたくなります。
ビールの鮮度、圧、ジョッキやディスペンサーの洗浄もばっちりの美味しい一杯。昔ながらの500ジョッキも嬉しい。ひえっひえのキリっとしたスーパードライで乾杯!
料理は1,280円のうな重以外はすべて3桁ととっても安い。エビフライ定食もまぐろ刺身定食だって900円でお釣りが来ます。すべてメイン料理は単品で頼めますので、500円の生姜焼きと酎ハイ二杯でせんべろするもよし、リーズナブルだからとプチ贅沢で値段を気にせず大宴会をしたって、二千円程度で収まっちゃう。なんと素敵な下町食堂。
手元の品書きに載っていない料理が短冊にあるので、店内はくまなく見渡しましょう。料理の名前が次々飛び込んできて目が回りそうですが、これがまた楽しいんです。
まずは冷やしトマトとおひたしで、ゆるく飲み進めます。
亀有ときわの酎ハイの濃さは相当なものです。下町酒場は概ね濃いものですが、それにしてもここは飛びきっている感じ。
今日のおすすめはまぐろの漬け。醤油に漬かったまぐろにワサビをちょいと添えて、ちびちびつまめば酩酊酎ハイは何杯でも飲めてしまいます。
食堂飲みといえば忘れちゃいけない「ハムエッグ」。これで350円とまさに人情価格。醤油やソースをかけて、敷かれたキャベツ千切りにとろけた黄身を和えてもりもりいただきます。
…いつからだろう。ナポリタンがおつまみに思えたのは―
お子様ランチに添えられている頃からみんな大好きナポリタン。気がつけは食堂飲みの定番〆つまみです。意識高くなくてむしろ結構。コシのないスパゲティに、ねっとりと絡むケチャップ。ウインナーと玉ねぎ、ピーマンだけのシンプルな作り。あぁ、たまらない下町食堂の味。
下町の名物ドリンクといえば下町ハイボールと称される色付きの焼酎ハイボールですが、ときわ食堂は下町の”ボール”はほぼ全店でだしていません。上等な甲類を使用しているというアピールのためにプレーンの酎ハイを売りにしていたという話を関係筋で聞いたことがありますが、いまや定かではありません。
そのかわり、各店とも個性的な看板酎ハイをもっていて、例えば町屋店ならば牛乳割りなど。ここ亀有店では果汁たっぷりのフルーツ酎ハイが名物とされていて、グレープやレモンなどが常連さんたちに愛飲されています。
グレープフルーツを入れた「グレープサワー」(420円・左)とプレーンの酎ハイ。どちらも焼酎の濃度は極めて高く、果汁を入れると完全に焼酎の気配が消えますので飲み過ぎは気をつけなくてはなりません。
プレーンの酎ハイはほぼ炭酸の泡が立たないというのも、男前!(笑)
家族経営で丁寧な料理と親切な接客が嬉しいときわ食堂亀有店。のんびりとした雰囲気の中でじっくり、しっぽり飲める名店です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ときわ食堂 亀有店
03-3603-7041
東京都葛飾区亀有3-11-13
11:15~22:00(平日は15:00~17:00に中休みあり・木定休)
予算1,800円