【閉業】沼津「さがみ軒本店」 優しい大将が迎えてくれる、最古参中華は夜酒場。

【閉業】沼津「さがみ軒本店」 優しい大将が迎えてくれる、最古参中華は夜酒場。

2020年4月6日

沼津には半世紀以上続く中華料理店が何軒かありますが、夜飲むお店といえば?と地元の方に聞くと、ここの名前が挙がりました。

昭和の大箱中華の雰囲気をそのまま残す店「さがみ軒本店」です。戦前から続く町一番の老舗中華。

沼津の繁華街・添地町の真ん中に位置し、この町で飲む人にはお馴染みの店。また、さがみ軒のご主人も町の顔の一人。今のご主人はご本人も飲み歩きがお好きな方で、暖簾を下げたあとはよく沼津の町に繰り出すそうです。

看板料理は麺類なのですが、点心だけでなく中華の定番も千円以下と手頃な値段なことから、夜は飲み客が多いです。ボトルキープだってできてしまうほど。

 

沼津は、東京からJR東海道線を乗り継いで約2時間15分。静岡県にある駿河湾に面した港町です。

 

沼津港で水揚げされる海産物を楽しむのもよいですが、ときには中華飲みがしたくなることだってありますよね。さがみ軒はお昼から夜まで通しで営業し、夜も21時までと長いので使い勝手は抜群。かつては早い時間から漁師が集まっていたそうです。最近は沼津を舞台にした人気アニメのファンや関係者も来るのだそう。

 

昔ながらの赤い丸椅子のカウンター席。ただ、椅子がよくあるビニール張りではなく、スナックにあるようなモケット生地で、さらに簡易的ながら背もたれもあります。飲める店の気配はこんなところにも感じます。

 

ターンテーブルつきの丸テーブルもあれば、小上がりもあります。小上がりもターンテーブル付きなのがちょっと面白いですね。2階には宴会用の座敷もある大箱店です。

 

さてさて、なにはともあれビールから。樽生は樽冷式のアサヒスーパードライ(中550円)、ビンはキリンラガー(中650円)です。では乾杯。

 

中華屋にはチューハイの取り扱いがないことも多い中、ここはハイリキがあります。正直、嬉しい。

日本酒は白鶴、紹興酒は宝酒造です。

 

麺飯類はいろいろ。夏季は冷やし中華ならぬ冷やしラーメンがあり、さがみ軒のそれは沼津のちょっとしたソウルフードとなっています。静岡県では珍しいサンマーメン(800円)もあります。ご主人のオススメのひとつは特製担々麺(900円)とのこと。

お酒飲みの友、点心はギョーザ(450円)、シューマイ(550円)、春巻(400円)といずれも手頃です。

 

中華はどうしても大皿なのでおつまみにしづらい…なんてことはありますが、ここは小皿メニューと題して、定番大皿中華がリーズナブルに揃います。イカエビチリ(800円)やホイコーロー(800円)など。

 

思わず嬉しくて「へへっ」って口にしてしまいそうなこの眺め。老舗中華で瓶ビールと自家製春巻き。飲食店には小さな幸せで満ちています。

 

外はバリっと、なかはしっとり。豚肉と野菜の旨味が汁になって滴る一品。

 

紹興酒「塔牌」。おなじみの塔のマークの赤いビン。濃い味、深い香り。中華料理の脂やうま味調味料に負けないガツンとしたお酒です。

 

チャーハンはおつまみです。五目チャーハン(800円)、さがみ軒人気no.1のズワイガニ入りチャーハンとコメントされてしまうと、それはもう頼むしかありません。色合いがまず素敵。念入りに炒めてパラパラです。そして、たしかに感じるカニの風味。チャーシュー、かまぼこの食感も楽しい一品です。

 

沼津の人が世代をこえて通うお店「さがみ軒」。観光名所を尋ねるのとはまた違った沼津の魅力を知れる場所です。料理はもちろん、親しみやすいご主人の接客もあいまって、非常に心地よいひとときでした。このあと、近所のバーを教えてもらい、そちらも良店でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)

 

さがみ軒本店
055-962-1708
静岡県沼津市添地町83
11:00~21:00(木定休)
予算1,700円