本日は春日部から銘店をご紹介します。東京東部最大の酒都こと、北千住から東武電車で30分。案外近いことに驚くのは私だけでしょうか。東急田園都市線や日比谷線でうっかり寝過ごして、あわや大惨事という経験をされた人もいたりして。
今回は寝過ごしてやってきたのではなく、素敵な焼鳥屋を楽しむためにやってきました。大宮駅からも東武野田線(アーバンパークライン)で繋がっていますし、結構交通の便がいい街ですが、駅の雰囲気はどこか懐かしい昭和の佇まい。これはいい酒場も期待できるな、ということで商店街を散策です。
目的のお店がここ「彩鳥」。春日部で創業19年を迎えた個人系の焼鳥飲み屋です。モクモクのコテコテ、パイプ椅子に銀皿というド大衆ではなく、ちょっぴりオシャレないいお店。
串は茹で置きではなく、その日串打ちしたものを生の状態からじっくりと炭火で焼き上げるこだわり。今日は焼鳥で癒やされたい。そんな地元の人たちで、20数席の店は毎日大変な賑わいです。
女性のお客さんには「酒場の敷居(ハードル)を越えられたご褒美」的におちょこ一杯の純米酒がプレゼントされます。私はご褒美していただかなくとも余裕なのですが、上品なふりをして一献。
さて、お酒メニューをご紹介しましょう。生ビールはサッポロの白穂乃香と、キリンブラウマイスターというなんともクセのある二種類。白穂乃香は春日部で唯一(2016年塩見なゆ調べ)飲める店です。
キリンブラウマイスターも、キリンシティ流でスフレ状のモコモコの泡をつくって提供される「4分お待ちください」のあれが楽しめます。(480円)
今宵は白穂乃香の気分。那須工場(固有記号:K)だけで作られる地域限定の無濾過ビールで乾杯です。
焼き場の前、大将とお話できる特等席に通してもらいました。さて、じっくり飲みましょうか。24人がキャパシティのつくりですが、スタッフさんの人数に余裕があり、きめ細やかに対応しているのが印象的です。
焼鳥を焼いてもらう間のつなぎ役として刺身など。鳥料理が多いですが、サイドメニューも気になるものが多い。
焼鳥は1本180円~。ささみわさび載せは230円とちょっぴり高級ですが、これが秀逸です。表面の火の通ったところから、ささみ刺しに近い中のほうへ、食感・味にグラデーションが感じられ、なにより鮮度の良さが伝わる一品です。しっとりとした「ささみ」、食べたことありますか。
焼鳥にあわせるビールといえばラガーでしょう。キリンラガー(CL)とサッポロラガー(赤星)の二種類を用意している大将、これまた「好みを突かれた」感じです。
ぷりぷりで脂の甘みがぎゅっと詰まった鶏レバー(200円)もたまらない。レバーが苦手な人もこれなら食べられるかもしれません。
大将のこだわりが詰まった串の数々、その中でもひときわ気に入りましたのがこのつくね。シソで巻いたものでタレと塩の二種類を食べさせてもらいました。
もちもちの食感で鶏の美味しいところがぎゅっと濃縮されたような味に、赤星の中びんをあっという間に空にしてしまいます。
焼鳥といっても、冷凍かどうか、鮮度は?、生の状態から焼いているかなど、様々な条件で大きく化ける奥の深い食べ物です。正直、春日部でこれだけのものを居酒屋価格で食べさせてくれるとは思わなかったです。
珍味や郷土の料理なども390円から揃っています。
気になる赤天は、魚のすり身に唐辛子を練り込んだピリ辛の揚げかまぼこです。ジャンキーな感じでマヨネーズをたっぷり付けて食べれば、これまでの緊張感ある焼鳥から開放されたような気分です。焼鳥って緊張しません?(笑)
この赤天も鳥取県浜田市の郷土料理なので、そんなところにもこだわりを感じられます。
徳利でお燗酒をさしつつ、ほっこりとするひととき。やっぱり酒場のカウンターは最高なのです。地元・埼玉の地酒「新亀」など、純米酒系を多く揃えていますので、日本酒好きの方もきっと楽しめるはず。
大将の持木さんは20年ほど前まで、大手小売業のアパレル畑で働かれていたという異色の経歴を持っています。仕事終わりに仲間と飲む居酒屋が好きで好きでたまらなく、やりたいことを詰め込んだ店を自分で作っちゃったと笑顔で話されます。
カウンターと小上がりの小さな渋い雰囲気の酒場。焼鳥好きならば、春日部で途中下車して立ち寄られてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材同行/式守錦太夫[外部リンク])
彩鳥
048-755-6668
埼玉県春日部市中央1-2-6
17:30~23:30(日定休)
予算3,000円