「食事とお酒カヤシマ」は、喫茶店のような酒場のような不思議な空間です。そこには吉祥寺の要素を詰めた方のような空気で満たされています。創業時からの人気メニュー「ナポリタン」が人気ですが、お店イチオシの牛すじ大根も絶品です。
目次
コーヒー専門店から喫茶店、いまは食事とお酒
中央線沿線、中野から三鷹にかけての各駅は”中央線カルチャー”と言われる独特な雰囲気が漂っています。かつては作家、出版関係者が好んで住んだ地域で、いまも演劇人やアニメーター、漫画家、音楽関係、芸能関係などが多いと言われています。この街の居酒屋は街のムード同様に個性的な店が多く、中央線の魅力は酒場に凝縮されているように思います。
さて、吉祥寺らしい店はどこかと考えたとき、有名なやきとり店やハモニカ横丁はまず思い浮かびますが、”らしさ”という店では「カヤシマ」をご紹介しないわけには行きません。
創業は1975年。現在は2代目社長が店を守っています。いまの社長はもともと同店のアルバイトだった方。一度は店を離れるも、初代に誘われ社員となり、いまは社長として厨房に入り料理をされています。
当初はコーヒー専門店としてオープンし、その後喫茶店となり、お酒を提供するようになってからは、半分居酒屋のような営業スタイルになっています。
老若男女、買い物や仕事途中の一杯を
客層は実にまちまち。
百貨店のショッピングバッグを持った老夫婦や、奇抜なファッションのカップル、漫画本を読む青年、そしてお酒を飲むノンベエたち。
店内は落語家のグッズや映画や演劇のポスター、常連さんの写真などで埋め尽くされています。
レトロなシャンデリア、平成初期を感じさせるソニーの業務用スピーカー、ナショナルの扇風機。飴色に染まった空間は、玉手箱のように時代をこえて様々なものが詰め込まれています。
フカフカのソファに腰掛ければ、店に体も心も溶けるような気分です。
吉祥寺の老舗に星がある。昔からビールはサッポロをメインに扱っていました。くつろぎ軽く深呼吸をしたところで、サッポロ生ビール黒ラベルで乾杯。
品書き
飲み物のメニュー
「喫茶店にお酒があっても、あまり積極的に飲む雰囲気ではない」なんていうことは全くありません。
壁一面、手書きの力強い文字でお酒の品書きが掲げられています。福生の石川酒造がつくる多満自慢(本醸造500円)をはじめ珍しい銘柄も多く、コーヒーで一休みのつもりがお酒を頼んでしまいそうなほど惹かれます。
そのほか、生ビール(大きめ550円)、瓶ビール(550円)、デュワーズハイボール(490円)、レモンサワーやシークワーサーサワーなどのサワー類(540円)など。
人気の喫茶メシ
喫茶店ですから、ランチが人気。カヤシマを紹介する記事の多くは、ナポリタンやハンバーグなどの”喫茶メシ”がテーマな事が多いようです。
人気はスパゲッティナポリタンと豚肉生姜焼きのセット(1,050円)。
自家製の推しととりあえずの一品
ですが、ここは酒場好きの心を満たしてくれる、膨大なおつまみに注目したいところ。もはや喫茶店飲みとは言えない本格的な顔ぶれで、かつ値段も手頃です。
もつ煮(320円)、鶏皮ポン酢(320円)、自家製牛すじ大根(540円)、自家製餃子・水餃子(540円)、自家製ポテトサラダ(500円)、ハムカツ(540円)、〆鯖(580円)、小アジの南蛮漬け(320円)など、多種多様。
さらに飲みたくさせる黒板メニュー
ここに黒板メニューが加わります。老舗の飲食店が醸し出す、どれも間違いなく美味しそうなオーラです。
和洋折衷、喫茶店酒場の自由な時間
サービスの一皿
お酒といっしょに出される小鉢は、なんとお店のサービス(無料)。日替わりで、スパゲッティサラダだったり、麻婆豆腐だったり。手作りのほっとする味です。※一人1皿です
ハンバーグ小(390円)
喫茶店ランチとして人気のハンバーグや豚の生姜焼き。おつまみとして、小さいサイズで楽しみたい!そんなわがままに応えてくれるのが、カヤシマの優しさ。肉がみっちり、手作りのハンバーグは懐かしい美味しさ。
多満自慢(550円)
飲み飽きない美味しさ、旨味とコクが心地いい上撰本醸造です。
お酒は社長自ら試飲会などをまわり取扱銘柄を決めているとのこと。東京都酒造組合に加盟する都内の日本酒蔵元は10蔵あり、そのうち数蔵をカヤシマで味わうことが可能。
お店のオススメ、牛すじ大根(540円)
長年、おつまみメニューの代表的な存在の「牛すじ大根」。
毎日、朝から5時間かけて煮込むそうで、大きなブロックの牛すじはレンゲがすっと入るほど、フワフワ・トロトロに仕上がっています。甘めの味付け、旨味は力強いのに余韻はすっきり。
ナポリタン(900円)
喫茶店ではない、もはや酒場です。といいつつも、やっぱり気になるのはナポリタン。創業時から続くロングセラーです。
ちょっぴり柔らかいスパゲッティに、ベーコン、玉ねぎ、ピーマン、これをたっぷりのケチャップと一緒に炒めた昭和の味。たっぷりチーズをかけて食べれば、ビールを誘う主役級のおつまみにもなります。
キリンハートランド(550円)
樽生はサッポロ黒ラベル、瓶で黒ラベルとサッポロラガー。そして嬉しいキリンハートランド。今年で35周年、喫茶店に似合うビールです。
サントリートリスハイボール(350円)
ナポリタンにはハイボール、神保町の喫茶店でそう教え込まれた筆者としては、ビールに続いてトリスハイボールも外せません。自家製のマイルドな炭酸が優しく心地いいです。
観光客も、近隣に暮らす人々も、働く人も――
吉祥寺に集うあらゆる人が、ふらっと入っては、喧騒を忘れてひとときの落ち着いた時間を楽しむ場所、それがカヤシマです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | カヤシマ |
住所 | 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-10-9 |
営業時間 | 11:00~23:00(基本無休) |
開業年 | 1975年 |