国分寺「おは肴」 大皿料理を手軽な価格で。一寸一杯の進化系

国分寺「おは肴」 大皿料理を手軽な価格で。一寸一杯の進化系

2016年12月13日

今日は国分寺ノンベエに愛されている止まり木をご紹介します。2014年にオープンした大皿料理が自慢の居酒屋です。料理上手の大将がつくる肴はどれも美味しいと評判で、近隣の飲食店で働く人達も常連です。

国分寺駅は北口の飲み屋横丁が再開発によってごっそり更地になってしまった印象がありますが、この街の飲酒パワーはそんな街の変化をもろともせずに、その先にある商店街に次々と良い飲み屋がオープンしています。まるで削られた分を取り戻す「質量保存の法則」的なものを感じます。

店の外から店内を見渡せるオープンなデザインは、夏場は清涼感があり、寒い季節は暖色照明と燗酒の気配につられて思わず吸い込まれそう。口開けから賑わう店で、満席のことも多いと聞きます。

特等席のL字カウンターに腰掛ければ、所狭しと並べられた”おばんざい”が目に飛び込んできます。イワシにカレイの煮付けに、里芋のたいたん、厚焼き玉子も美味しそうです。

飲み物メニューを見てみましょう。ビールの生樽はサントリーのプレミアムモルツですが、瓶ビールにサッポロラガー(赤星)の姿も。ホッピーを価格指標にされていらっしゃる方へ、セットは400円です。

ハイボールのコーナーにある元祖下町ハイボールの文字を見逃さない。

おばんざい3種盛りが「間違いのない」注文。カキフライやハムカツなどの揚げものから、昆布〆さばの一夜干し、いかそうめんのあん肝醤油などバリエーションが豊かで、どれもお酒の肴としてスペックが高そうなものばかり。

店のサイズから考えられないほど献立が充実しているのは、満席率の高い人気店ならでは。

一杯目は赤星と頼みそうだよね、と言われつつ、ここはあえて焼酎ハイボールで。キッコー宮印の宮崎本店公式グラスにはいったガス圧強めのボール。天羽飲料製造(梅エキスなどをつくる台東区の割材メーカー)の公式レシピでつくる正統派です。それでは乾杯。

このお店、雰囲気がいいのにお通し(突き出し)がない。目の前に並ぶ好きなものを食べられるので大変素晴らしいし、一寸一杯飲み屋の基本に忠実です。おばんざい3種盛りは、目の前にあった甘エビ揚げと、ナス煮浸し、白バイ貝を選びました。

焼酎ハイボールとは海老をあわせ、残りは追加で頼む日本酒で行こうという狙い。

衣かつぎをつけるこの酢味噌が、ここ最近の中では特にフェイバリット。あぁ、書いていたらまた食べたくなってきました。味のバランスが絶妙で、里芋を食べきったあとも、これを箸先につけてチビチビと飲みたくなります。

〆あじ(400円)も酒の肴にぴったりのもの。浅く締められていて酸味と鯵の脂の割合が絶妙なのです。盛り付けもキレイでミョウガもたっぷり。

日本酒飲み比べ3種類がおもしろい。銘柄の選定が秀逸で、大将のお酒好きがよく伝わってきます。国分寺でボールなんぞを出している時点でそうとうな”マニア”とは思っていましたが(笑)

飲み比べの顔ぶれは随時変わっていくので、ここから好みの味の方向性を探るのが楽しそうです。

そんな飲み比べをプッシュしておきながら…ですが、私は大好物の樽酒を。樽酒の香味が好きでたまらなく、一度は菰樽を自宅に置きたいと思っているほどなのでが、麒麟山の樽は東京で初めて飲みました。

カウンターの奥に積み重ねられた樽は、こだわりの証。売れないとすぐ味が濃くなってしまうので扱いに困る樽酒ですが、こちらはばっちり。銘柄入りのマスの角を口に打つのが心地良い。

くじらの刺身を置いているお店も国分寺では貴重です。たっぷり盛られて650円は、くじら料理で有名な三陸や和歌山・太地町の店にも負けないお得感。ねっとりとした口当たりなのに余韻のキレがいい。あぁ、お酒をもう一杯飲みたくなってきます。

取材はここまで。あとはじっくり終電近くまで国分寺の街を徘徊しようと思います。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

おは肴
042-312-0871
東京都国分寺市本町3-14-1
18:00~24:00(不定休)
予算2,300円