多摩地域最大の都市・八王子。東京都で唯一の中核市に指定されています。東京都でありながら、駅前を歩けば、まるでどこかの県庁所在地都市を歩いているような錯覚を感じます。
江戸時代は宿場町として、近代では絹糸、鉱物といった貨物輸送や、信州、甲斐方面の人の流れを支えた古くからの交通の要衝です。人が集まれば、お酒を飲みたい人も多くなる。八王子の飲み屋街は、かつて大いに賑わいを見せたと言われる多摩地区唯一の花街からの長い歴史をもっています。
若く元気な今風の飲み屋からお父さんたちが入り浸る昭和大衆まで、八王子で飲のならよりどりみどり。王道の飲み屋をお探しならば「酒蔵一平」で間違いはありません。
営業時間は午前10時から。通しで24時まで営業し、なんと年中無休。八王子で悩んだら、ひとまず「一平」へ行けばなんとかなる、ありがたい存在です。
店構えに黒板メニュー、食品見本が並ぶショーウインドウと、絵に描いたような昭和の大衆酒場です。料理のバリエーションも豊富で、一人二千円もあれば十分楽しめる。どこまでも大衆酒場なんです。
しかも席数は70もあり、カウンター、テーブル席、さらに奥には宴会に使える座敷まで完備し、あらゆる用途に対応しています。もうね、こういう酒場が好きでたまらないんです、私。
ひとり酒ならばカウンターで。厨房が目の前で調理風景もまた酒の肴です。ベテランのお父さんたちがお気に入りのセットでちょいと一献楽しむ姿が似合います。
樽生と瓶ビールはサッポロ黒ラベル。大生は600円(以下すべて税抜き)で、大瓶も580円とこれまた良心的です。中瓶ではヱビスも用意。
酎ハイ類も充実し、一杯267円からと今どき珍しい価格設定。ベースにはサッポロ焼酎(甲類)が使われています。本格焼酎も和ら麦、からり芋などボトル売りもあり。
昔ながらの見た目どおりにたっぷり入るジョッキが、老舗酒場らしい。フレッシュできめ細やかな泡にフロスティミストの層もある素敵な生がやってきました。では乾杯!
料理は魚、もつ焼き、煮物までまんべんない品揃えです。
ベテランの板前さんが厨房に立ち、天ぷらや刺身などの和食もさくさく仕上げていきます。カウンターでそんな様子を眺めて飲むのは楽しいです。ハムカツは分厚くインパクトがあるので、飲み屋のハムカツにフォーカスされている方にはぜひおすすめしたいです。
人気料理のひとつ、いかげそ唐揚げ。一人飲みに嬉しいハーフサイズ(290円)を注文。竜田揚げ風の味付けです。
石狩鍋風の一平鍋は既設を問わず用意されています。料理はおおよそ300円から400円という価格帯です。
常連さんが両隣ともにおつまみにしていた酢の物盛り合わせは、先輩にならえと頼んでみたら大正解。鮮度よしのホタテやタコ、エビと海鮮がたっぷり。味付けは優しくしみじみ美味しいです。
そうなれば、自然とお酒が欲しくなる。弾の人気酒、澤乃井の本醸造大辛口。
キリッとした味で、澤乃井の中でもひときわキレのよさを感じます。
いまの季節、辛いお酒と酢の物はぴったりの組み合わせ。ほっと一息ついて、のほほんといい気持ちです。
八王子の喧騒の中で、酒場の優しさに浸れるオアシスのような「酒蔵一平」。大箱なのに料理も早くアットホームさもあります。ザ・大衆酒場な雰囲気を好む人なら一度は訪れて欲しい一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
一平
042-644-8512
東京都八王子市東町11-5
10;00~24:00(無休)
予算1,500円