中央線の沿線は十駅十色。ひと駅ごとに個性と深さと輝きが異なる魅力的な駅が続く路線です。とくに、ノンベエにとってはこれほど素晴らしい沿線はないでしょう。
東京、新宿は言うまでもなく、中野から立川までどの駅で降りても引力の強い名酒場が毎晩待ち構えてくれています。
たとえば三鷹。吉祥寺以西にだって銘店があるのだよと教えてくれるようなお店があります。創業84年の酒の店「大島酒場」です。
直線で構成された店構え。誘われる屋号の文字がたまらない。派手な飲み屋街ではないので周囲はいくらか暗いですが、そこの対比として店からこもれる暖かな光が素敵です。
基本は立ち飲みの店。着席もありますが、立ってきゅっと飲んでいくほうが大島酒場らしいです。
さて、創業84年というと年季の入った建物を想像すると思いますが、こちらは「昨日オープンした」と言われても疑問を持たないほど明るく清潔で手が行き届いています。
火をつかう厨房機器から冷蔵ケースまでまるで鏡面仕上げ。ニットクの酎ハイマルチサーバーにカメラを構える自分の姿が写ったことなんて、まずここくらい。
生ビールは一にも二にもクレンリネス。生ビールに期待が高まります。
さて、そんな生ビールは黒ラベルで550円。大びんで赤星と黒ラベルが550円。酎ハイは430円。そして、アルコールは豊富な日本酒も特色です。
極上の一杯。サッポロ黒ラベルの美味しい生がやってきました。昔ながらの大きいサイズの中ジョッキが似合います。それでは乾杯!
よい生は、飲む度に泡の輪(レーシング)がグラスに残ります。エンジェルリングなんて言われることもあるこの泡の線は、美味しい生ビールの証。
定番メニューのほかに、日替わりで刺身、煮魚、焼魚、天ぷらが並びます。全国各地から集まる旬の幸、今日はどれを食べましょう。のどぐろ(400円)など標準的な立ち飲みでは見かけない顔ぶれです。
かまぼこ(350円)をつまみに、まずはきゅっと生ビール。カウンターから伝わる店の歴史。こういう雰囲気で飲めば、外飲みはもっと楽しく感じます。
お刺身から宮城のかつおを。質がよく、包丁の入れ方もさすが。こってりと濃厚な味にうっとり。こうなると、日本酒が飲みたくなります。日高見があるなぁー、どうしましょう。
日本酒の銘柄はいま風のものから地酒の王道までバランスがいい。私は比較的古くからの銘柄を好むので、この並びはホッとします。
北海道産、ぷりぷりのあいなめ。厚く切っているのに皿の色が透けて見えるほど鮮度が良い。軽くわさびを載せて、ちょんとヤマサの醤油にひたして頬張ると… はぁ、思わずため息が。そしてお酒をきゅっと。
2個で100円のしゃりがありますので、最後の2キレを酢飯にのせてシメの寿司として楽しむのもおすすめです。
ある程度魚を満喫したところで、あとは厚焼玉子や豆腐をおつまみに、ちびちびと飲んで楽しいひととき。
飲み屋の血筋に生まれ、代々の暖簾を守る大将。お酒や魚の説明をとても楽しそうにされています。それを支える次の世代やアルバイトの学生男子も、みんなとても熱心で輝いています。
美味しいはもちろん、人がいい酒場がなによりです。立ち飲みなのに長っ尻してしまいそうな居心地の良さ。三鷹に降りたら「大島酒場」はもう立ち寄らずにいられません。
大島酒店を愛するファンの中には業界人も多く、飲み屋をよく知るビール会社の中の人も常連さんです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)
大島酒場
0422-48-4434
東京都三鷹市下連雀3-37-41
15:00~22:00(日祝定休)
予算1,500円