高円寺『三神森』高知・愛媛直送の鮮魚を楽しむ、愛南出身の大将の店

高円寺『三神森』高知・愛媛直送の鮮魚を楽しむ、愛南出身の大将の店

2021年5月6日

四国西南の鮮魚が杉並区にいながら楽しめる。ここ「三神森」は愛南出身のご主人が5年前にはじめた魚の酒場です。カウンター10席に街の魚好きたちが集います。個性豊かな海の幸をおつまみに、お手頃価格の四国の地酒に舌鼓を打つ――

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ここだけ宿毛・愛南の漁港脇の店みたい

大小様々な酒場がひしめく杉並区・高円寺。居酒屋料理で食べたいものはなんでも揃うこの街ですが、四国の魚をおつまみにしようと思ったら、「三神森」で間違いありません。

お昼はラーメン、夜は酒場として営業する二毛作の店。2016年の開業で、ご主人は愛媛県南端、高知県宿毛に接する「愛南町」のうまれ。故郷の漁業関係者とのつながりを活かし、港から魚介類を直接買い付けています。

そのため首都圏の魚河岸でも貴重な、ウチワエビや亀の手、とんごろいわし、すまカツオなど珍しい魚種が勢揃いしています。旅に行けなくても旅酒気分に浸れる酒場です。

店頭の黒板メニューからして、ここが高円寺の店とは思えません。今日は愛南・宿毛の鮮魚で、いつもと違った一杯が楽しめそうです。

ガラス張りで、店の前を通るお酒好きの皆さんは店の様子が気になっていたに違いありません。筆者も以前から注目していたお店。V字型のカウンターにわずか10席ほど。普段は常連さんで深夜まで賑わい、満席で入れないこともありました。

壁一面に掲げられた四国ご当地料理に心をそわそわさせながら、一旦落ち着くためにもまずは瓶ビールから。サッポロラガーの中瓶(600円)で乾杯。

四国の飲み屋街にワープした!?ご当地色豊かな品書き

四国の地酒が400円から

ビールは樽生もあります。銘柄はアサヒスーパードライ(400円)。酎ハイ類は350円から、ホッピーセット(黒・白・赤)もあります。

ここで飲むべきお酒はやはり四国の地酒ではないでしょうか。土佐鶴(高知県安芸)、梅錦(愛媛県四国中央市・梅錦山川)など、1杯は400円と地酒でも手頃感ある価格設定が嬉しいです。

さらに差し込みメニューで地酒の誘惑は続く。酔鯨(高知県高知市)、桂月(高知県土佐町)、亀泉(高知県土佐市)など。

宿毛の味に挑戦しよう!

料理は手元のメニュー、ホワイトボード2つ、さらに刺身は入り口の短冊とあちこちに散らばっています。これが楽しいのです。あちこち見渡して、「あ、あなんたころにヒオウギ貝が!」なんて感じに、宝探し気分。

刺身は皆さん注文する刺身3点盛(並1,000円・上1,200円)、宿毛の九絵(くえ)刺し(1,000円)、金目鯛刺し(800円)など。

ホワイトボードには、四万十川の鮎(600円)や石鯛兜焼き(600円)など、もう1、2品追加したくなってしまう顔ぶれ揃い。産地直送なので、もちろん季節によって内容はがらりと変わるようです。

どの料理も500円ほど。奇をてらったものではなく、宿毛の飲み屋街にあたりまえにあるような内容で、それがとても嬉しいです。

ここはほんとに杉並区!?

亀の手(500円)は、海の枝豆です

見た目が苦手な方には申し訳ないのですが、亀の手は漁師町の飲兵衛が枝豆のようにエンドレスで摘む、とっても美味しいお酒の肴。由来はもちろん亀の手にみえることから。でも、実は甲殻類なのだそう。

酒蒸し風に熱が通されていて、殻をむくと中から小さな身がちょろっとでてきます。これを枝豆のように吸い出すようにいただきます。三神森の亀の手は、西日本の漁師町で食べたあの味そのもの。

こうなると、断然飲みたくなるのは四国の地酒です。地酒は基本的には冷やして保管されており、梅錦(450円)はそのまま冷酒でいただきました。

ぐい飲みはちょっぴりおしゃれな陶器。ほどより厚みでお酒の口当たりが甘く感じられます。

お刺身3点盛り

今日のお刺身の上は、金目鯛ヤイトハタ炙り九絵。なんと贅沢な3点でしょう。どれも文句のつけようがありません。

高級魚として度々話題になる金目鯛はもちろん主役級なのですが、クエほうがさらに華があるようにも思えます。そしてなんといっても、「ヤイトハタ」なる魚の存在が実に魅力的です。

表面を炙ると、まるでハケで油でも塗ったかのようにテカテカに脂が滲み出してくるのだそう。上品な白身の脂がぐーっと口の中で広がり、思わず大きくうなずいてしまいます。

四国でも貴重な魚だそう。金目鯛などもそうですが、すべて発泡スチロールにいれられ、まるまま宅配便で運ばれてきています。こういう魚が食べられるのは、こだわりある店主が本人のバックボーンを活かした店ならではの価値です。外食ってすばらしい。

ヒオウギ貝のバター焼き(350円)

九州や四国の海鮮料理店ではよく見かける、小さなホタテのような二枚貝。黄色やレンジ色、紫など、個体ごとに殻の色が異なりとってもカラフルなんです。

これをあまり内部まで熱が入らないように短時間、がーっと貝焼きにしたものがこちら。なんでそこまで書けるかと言うと、三神森の個性的な料理が気になって、飲みながらも厨房の様子を気にしていたから。ほらやっぱり、これもとってもいい味しています。

旅にいけなくても、高円寺には小さな宿毛・愛南漁港があるじゃないですか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名三神森
住所東京都杉並区高円寺北2-9-8
営業時間営業時間
ランチ 11:00~16:00
ディナー 17:00~
日曜営業
定休日
開業年2016年