2021年3月13日、東京と伊豆を結ぶ特急踊り子号が全列車新型になりました。
これをきっかけに伊豆箱根で「温泉」&「お酒」を楽しむ旅を考えてみてはいかがですか。
首都圏周辺には数多くの行楽地があります。その中でも特別な場所のひとつは、熱海、伊豆半島といった太平洋沿岸西部の温泉街でしょう。
江戸時代までは東海道を何泊もかけて徒歩で旅をしていた伊豆も、いまは電車や自家用車で日帰りできる場所になりました。それでも、やっぱり行楽地に行ったら一泊して、温泉とご当地グルメを味わいたいものです。
ここでは、お酒片手にほろ酔い旅行に行きたくなる電車旅の情報をご紹介します。
(旅行の計画は各種状況にあわせて。)
目次
1,おつまみ選びから、一軒目がはじまります
行きの列車がすでに一軒目。東京から伊豆箱根方面を結ぶ特急列車では、路線にゆかりがあるおつまみを選びませんか。東京駅で買える、定番のお弁当はこちら。
崎陽軒のシウマイ
やっぱり東海道線のおつまみの定番といえば、横浜・崎陽軒のシウマイ。朝ごはんを兼ねるなら、崎陽軒のシウマイ弁当や横濱チャーハン弁当を。どちらも看板料理のシウマイが入っています。シウマイ弁当に入っている具材は何年も変わっていませんね。
メインがお酒ならば、シウマイの単品を。6個入りのポケットシウマイは、1箱300円というお手頃価格も魅力です。ただ、困るのは東京駅に入荷する時間がやや遅く、9時台の列車に乗る場合はまだ店頭に並んでいない(筆者の経験)ことがあるのが残念。一人飲みならば、これがベストサイズ。
国技館やきとり
両国の国技館は大相撲の聖地。ですが、その地階は日本最大級のやきとり工場があることはあまり知られていません。東京駅などのお弁当売り場にいくと、そんな国技館の地下でつくられた「国技館やきとり」(国技館サービス株式会社)が並んでいます。
焼鳥は熱いほうが美味しいという概念を覆す、冷めているほうが美味しい、不思議な焼鳥です。5本入り700円。
とんかつまい泉のカツサンド
まい泉のカツサンドは、朝食を食べずに東京駅から列車に乗るとき、朝食代わりにつまむ定番のひとつ。かんぴょう巻き、いなり寿司、煮物がはいった「玉手箱」(約700円)は主に東京駅などの駅ナカで売られている東京圏限定のお弁当です。
まい泉はサントリーグループなので、プレミアムモルツとあわせて「サントリーセット」にしても楽しいかも。
大船軒 鯵の押寿し
鎌倉市の駅弁企業「大船軒」がつくる、崎陽軒と並ぶ東海道線(東京近郊)を代表する駅弁「鯵の押寿し」。大正2年から続く歴史ある駅弁です。江ノ島近海では当時、大量の鯵が水揚げされていたことから誕生したと言われています。
鯵の押寿しが大船軒最古のお弁当かと思いきや、同社は明治期に日本初のサンドイッチ駅弁を発売した、さらに歴史の長い弁当店です。
ちょっと寄り道、東京駅グランスタ「Depot(デポ)」
東京駅で列車まで時間があれば、出発前に一杯のおいしいビールを飲みませんか。
東京駅内商業施設「グランスタ」内にオープンした、ビア&カフェ「デポ」では、午前7時のオープンからこだわりの樽生ビールが味わえます。ビヤホールなどで使われる、レトロ調のスイングカランから注がれる、品質管理が行き届いたサッポロ黒ラベルが味わえます。おつまみは唐揚げがオススメ。
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2,特別な車両でなくても、お酒とお弁当があれば特別です
電車が新しくなりました
東京と伊豆を結ぶ東海道線の特急列車「踊り子号」。踊り子号といえば、ホワイトにグリーンのストラップ塗装が施されていた国鉄特急電車ですが、ついに引退。特急なのに普通列車よりも古くて騒がしい電車だなと、あまりいいイメージはなかったのですが、渋い酒場が建て変わるのと同じような寂しさも感じます。
こちらが新型の車両。イメージカラーはグリーンからかわって、伊豆の海を連想するような爽やかなブルーになりました。
古い車両は、いかにも昭和の鉄道といったデザイン。無骨で重々しい雰囲気です。走ると、ゴトゴトと重そうに動き、カーブでは床からゴゴゴとこすれるような音がします。
新型車両は明るく軽快、清涼感のあるブルーの椅子が現代風ですね。ちょっと明るすぎて、お酒を飲むならば旧型のほうが似合うかも?ふわふわと跳ねるような走り。乗り心地はやっぱり新型のほうがいいです。
お酒を飲むならば、どちらも甲乙つけがたいところ。国鉄の特急は頑丈な鉄に囲まれ、使い込まれてきたくすんだ空間に身を置くと不思議と安心感がありました。長年、たくさんの人が飲んできたテーブルにお酒を並べれば、ここもひとつの老舗酒場のような気がしたものです。
新型は、それはもう、軽い軽い。お酒はカップ酒や缶ビールよりも、おしゃれ系なチューハイや、「グランドキリン」に「ソラチ1984」のようなクラフト寄りのビールが似合いそう。
おすすめはA・B席
東京から熱海、伊豆方面に向かう下り列車ならば、進行方向左側の座席「A・B」席を選びたい。小田原駅を発車し、早川駅を通過したあたりから車窓には相模湾がみえてきます。根府川付近は、比較的高い場所を走るので遠くまで見渡せる箇所もあります。
熱海をすぎれば、もっと海のギリギリを走ります。缶ビールを片手に、海を眺めてゆったり旅先を目指すのは、一軒目の居酒屋と同じくらい楽しい時間です。
3,小田原の酒場
特急踊り子号で飲みに行きたい、西湘の街「小田原」。
城下町・小田原。歴史と文化がある街に名物料理あり。ういろうやかまぼこ、梅干しに柑橘類などの名産グルメが多数ありますが、飲み屋さんもいいお店があります。ブリなどで財を成した漁業関係者が飲み歩いた、かつての花街の名残りもあります。
魚料理 大学酒蔵
小田原で歴史ある酒場といえば「大学酒蔵」。漁師や農家の方など、飲みに集うお客さんも小田原らしい職業の方が多く、旅情を感じる名酒場です。料理は早川漁港で水揚げさられた魚介類を中心に、旬の安くて美味しい魚を食べさせてくれます。
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4,熱海の酒場
バブル期は団体旅行に対応するため、巨大な観光ホテルや温泉旅館が立ち並んだ熱海。その後、一時は廃墟が目立つとまで言われ時代もありました。それが、いま、奇跡の復活。個人旅行向けのコンテンツを、熱海市が中心となって創造し、官民一体となった町おこしが行われています。
旅館の中で完結せずに、夜の温泉街を楽しもう!という企画が動いています。行政である熱海市がつくるパンフレットでありながらスナックの紹介記事が載るなど、熱海は夜もテコ入れ中。
大衆割烹 鳥秀
熱海はガイドブックに載っているような観光向けの海鮮料理店は多数ありますが、Syupoでご紹介したいお店は、奥に入った知る人ぞ知る店。
「鳥秀」は、熱海銀座でもひときわ奥まった場所にあるのですが、早い時間から地元の人でいっぱい。夜遅くなると、旅館などで働く観光業の人達が仕事終わりの一杯を楽しみにやってきます。焼鳥をメインにしながらも、相模湾の鯵やハマチの刺身、カマスのフライなど地物も食べさせてくれます。
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5,伊豆急下田の酒場
特急踊り子号の終点、下田。温泉とビーチが魅力の観光地。
と同時に、中心街を通り太平洋に注ぐ稲生沢川(いのうざわがわ)には数多の漁船が停泊し、早朝には大量の海産物が水揚げされる漁師町です。キンメダイを筆頭に、いか、まぐろ、むつ、伊勢海老などが主な魚種です。
これらを食べさせてくれる昔ながらの料理店で、格別の一献を楽しみませんか。
地魚料理 魚河岸
キンメダイの水揚げ日本一の下田。街を代表するキンメダイを駅近くで食べさせてくれる居酒屋の一軒が「魚河岸」です。
板前の大将を中心とした家族経営の店で、調理場に向いたカウンターと畳敷きの小上がりという、ザ・昭和の居酒屋といったつくり。下田であがる、あわび、キンメダイ、真鯵、地ダコなどを700円前後で食べさせてくれます。キンメダイずくしを昼飲みで楽しむならば、「金目鯛定食」(2,350円)。煮付けと刺身、塩焼きから2品選べます。(写真は刺身と煮付け)
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6,三島の酒場
特急踊り子号は熱海から、一部の列車は東海道線をさらに西へ。三島を経由し、修善寺に向かいます。東京から三島までは東海道新幹線が圧倒的に早くて便利ですが、踊り子号で旅情に浸りながらいくのもいいものです。
三嶋大社周辺に広がる、規模の大きな飲食店街はぜひ一度訪ねてほしいエリア。入り組んだ水路と趣がある老舗飲食店の街並みが美しい場所です。
和食処さがみ
地元の常連さんで賑わう活魚の店「さがみ」。
観光向けのお店ではなく、近隣の魚好きが集う店なので、ちょっと慣れないと難しく感じるかもしれませんが、ご主人の人柄とてもよく、次第にお店の皆さんとも打ち解けていると思います。少しずつ色々食べられる刺身盛り合わせなど、一人飲みにも嬉しいボリュームです。三島の土地柄を感じるいい夜になりました。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)