鶴見市場という地名から市場が今でもあるのかと思いがちですが、市場は西暦1500年代の頃のものであり、以来地名として「市場」が残り続けています。
そんな鶴見市場駅近くで、京急線の車窓からみえて気になっていた一軒を訪ねてみました。定食、中華、食事処、のみ処とファサードに書かれたジャンルが多く、気になる佇まいです。しかも朝7時から営業しているというのですから、これは飲みに行かなくては。
店先にはさらに、「キンケイインドカレー」と大きな矢沢永吉ポスターもあって、ますます情報過多。これは楽しそうですよ。
鶴見市場駅は京急線の起点からみて最初の横浜市にある駅。普通列車しか停車しないので、京急線を頻繁に利用していてもなかなか下車する機会はないかもしれません。
駅舎の出入り口すぐ、踏切の横に「亀鶴」はあります。駅前立地で便利。”帰宅前の最後の一杯を”と吸い込まれそう。いえ、むしろ吸い込まれたいです。
厨房に向いたカウンター席と小さな4人テーブルが数卓というこじんまりとしたお店。品書きの短冊に囲まれた中で、矢沢永吉のポスターが輝いています。
二代目ご主人を中心とした家族経営で、アットホームな雰囲気です。リーゼントをキメたちょっぴり強面のYAZAWA風な出で立ちの二代目は、話すととっても温厚で人懐こい方。奥様も矢沢永吉ファンで、家族揃って応援されています。
色々お話を伺いたいところですが、まずはなによりビールを飲まなきゃ始まりません。扱っている銘柄はキリンとアサヒの2銘柄。それでは乾杯!
生中は580円、小瓶で一番搾りブラックも。ホッピーは白・黒あってセットで500円。YAZAWAシリーズというカテゴリーがあって、GOLD RUSH(矢沢永吉のアルバムの名前)やワイルドな俺の”ウイスキーコーク”(楽曲名)など、いい感じでファンショップ感がでています。
9割以上の人が飲み屋として利用されている様子で、メニューもお酒の肴になるものが大変に充実しています。ホワイトボードには横浜の市場から仕入れる魚介類が連なっています。
初代が駅前で食堂として開いたのが「亀鶴」のはじまりだそう。蕎麦も昔からの看板料理のひとつ。今でも350円でかけそばを提供するなど路麺(立ち食いそば)価格で提供され、とくに出勤前の働く人々の胃袋を満たしているようです。
蕎麦屋が中華そばを併売することは稀にありますが、こちらはその拡大版とでもいいましょうか。ラーメンからとんかつ、焼肉定食まで、豊富な品ぞろえは、お店に通う常連さんたちの要望に答える形で増えていったそうです。
早朝から営業しているお店なのに、この品揃え。驚かされるばかりですが、ここは定番の焼き餃子(420円)を。結構大ぶりの餃子6個は食べられるか不安になる量です。
これが頬張ってみると驚くほど軽い味わい。もちろん自家製。余韻にビールが進むこと間違いありません。
ここはやはり、YAZAWAシリーズに挑戦してみないと行けないでしょう。ゴールドラッシュは、シャリシャリなるまで凍らせた甲類焼酎をグラスいっぱいに満たしたもの。ほぼホッピーハイというよりは、焼酎レモンなので、酩酊にご用心。冷たく口当たりがよくスルスルと飲めてしまいます。
さんま塩焼きもサンマーメンもありますが、さらに多ジャンルミックスを感じさせてくれるのが、「キンケイインドカレー」の存在。1960年後に流行った自宅でつくるカレーの素がここでは現役。ご主人ならではの味付けで、もちろんカレーライスで食べられるほか、アタマだけをもらってカレールー飲みだって楽しめます。
懐かしい味なんです。最近、スパイスの個性を効かせた華やかなカレーが続々と誕生していますが、酒場のカレーはこれがイイ!と感じます。
カレーのルーには生ビール。状態のよいアサヒスーパードライの中生(580円)をぐーっと一口。※お酒は自分のペースでゆっくりと。
先代から続く名物料理の煮込み。※写真は標準より少ないサイズです。
濃厚な味わいなのにくさみがなく、旨味が優しく口に広がる味わい。スタンダードな味付けですが、ホッとするものです。
三代目も店に立ち二代目の仕事を手伝いながら、店の味を受け継がれています。
いろんな要素が集まり一見するとカオス。でも、カウンター席に腰掛けみると、丁寧に料理をされるご主人や明るい接客の奥様、「なんでもあるから楽しんでいってね!」と語りかけてくるような品書きが、実に居心地がよく感じます。ハマのロックは優しい!(笑)
朝7時から13時過ぎまで、午前の部だって飲む人がひる素敵な朝酒処。もちろん夜だっていい雰囲気です。お近くに用事の際は覗いてみて。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
亀鶴
045-501-5172
神奈川県横浜市鶴見区市場大和町8-7
7:00~13:45/17:00~21:00(日祝7:30~13:30/16:30~20:00・土定休)
予算2,300円