新杉田からシーサイドラインで1駅。南部市場内にある海鮮の店「鈴」の名物料理「海鮮丼」は、市場酒好きならば一度は食べておきたい人気料理です。市場仕入れの新鮮な魚介類を満喫します。
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横浜の中央卸売市場の歴史は築地市場よりも古く、1931年(昭和6年)に東日本で初めて設置されました。横浜市の人口増加により1973年(昭和48年)には、当時開業したばかりの根岸線・新杉田駅徒歩15分の場所に南部市場(金沢区)が新たに開設されます。
その後、南部市場は横浜市の市場再編に伴い、2015年に公設市場としての機能は廃止され、現在は民営の施設となっています。
※横浜市ホームページ・中央卸売市場概要より
中央卸売市場といえば、関連棟や事務棟などに民間の食堂が入り、朝から市場で働く人のお腹を満たしているものです。民営化後の南部市場では、この別棟にあった飲食店が一部移動し、新たに「南部亭」という名のフードコートで営業を続けています。
市営の頃から職域食堂の海鮮店として親しまれていた「鈴」へ、市場酒を楽しみに行きませんか。
一般の人向けのマーケットとして再整備
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JR根岸線の新杉田駅から、シーサイドラインに乗り換えて1駅。徒歩だとちょっと距離があるので、1駅でも乗車するのが便利です。
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南部市場駅を降りれば、駅からそのまま南部市場へアクセスできます。以前は業務用施設として大型トラックやターレットが行き交っていた場所が、いまは買い物カートと自家用車でいっぱい。今も業務用施設は一部残されており、作業着姿の働く人々の姿も多いです。
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大和ハウス系列の企業が運営する「ブランチ横浜南部市場」は完全にショッピングモールの雰囲気ですが、隣接する「食専街」(協同組合横浜南部市場共栄会)は、市場の活気をそのまま残してた雰囲気です。
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公設時代からの店舗などが立ち並んでいます。休市日が毎週水曜というのも市場時代のままです。
南部亭とは
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関連棟で営業していた飲食店など、4店舗が集まったフードコートが「南部亭」。質実剛健、いかにも公共施設らしい店構えで、むしろ朝から市場で一献というときには、こういう雰囲気のほうがしっくりくるものです。
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ザ・職域食堂。パイプ椅子と合板の机、明るすぎるくらいの蛍光灯は、学生食堂や社員食堂を思い出します。
作業着姿の人はエネルギーがつきそうなラーメンやカツ丼などを。ショッピングモールからやってきた一般の人はマグロ中落ち定食やあなご天定食などを食べています。
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飲酒運転は絶対だめ。ターレットの運転もだめ。
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和食店、洋食店、ラーメン店、そして目的の海鮮店とジャンルごとに4店舗。実は結構料理がかぶっていて、どのお店から買うかは悩むところです。
海鮮の店「鈴」
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店名よりも、ストレートに「海鮮」の二文字がぺらっと貼られているのが「鈴」です。長年、南部市場でやっている家族経営の店で、以前は関連棟にありました。
鯖味噌煮定食(900円)、赤魚定食(900円)、まぐろ漬け丼(850円)に、うな重(1,600円)などが列ぶなか、人気ナンバー1は、昔から名物の海鮮丼(1,600円)と聞きます。
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注文カウンターには、ほかにもちょっと摘むのに嬉しい玉子焼(200円)などが並んでいます。これでも、移転時と比べてだいぶ品数は減ってしまったのだそう。もちろんビールも売っていますからご安心を。
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青空からの明かり差し込む店内で、輝く黄金色のビアタンブラー。お昼のビールはいつだって特別なのです。では乾杯。
ビールはアサヒスーパードライの大瓶のみで650円。日本酒とハイリキ(各350円)も置いています。
南部市場名物、海鮮丼
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海鮮丼(1,600円)。
市場のごはんは提供スピードがとっても早い。一杯目のビアタンを空けたころに呼び出され、受け取ってきました。ボリューム満点、大胆な盛り付けは市場飯の醍醐味です。
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分厚いマグロの中トロと赤身、たっぷりの貝紐、甘海老にタコ、カニ身に子持ち昆布、そして神奈川県らしいしらすという内容です。
小鉢は唐揚げと大根煮から選べるほか、海老のカブトの味噌汁、お新香などがセットです。
丼ぶりは広くて浅めなので、ごはんは意外と控えめ。さらにご飯少なめでお願いすれば、お酒のお摘みとしても丁度いいくらいかと思います。
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貝紐や甘海老は鮮度がどうしても味に出やすいですが、コリコリとしていてクサミなし。ぶつぎりのタコもみずみずしくて箸がすすみます。
子持ち昆布の濃いめの塩加減と酢飯の味付けから、醤油は風味づけ程度でいいくらい。
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そしてなにより、このマグロが価格と比較するとよいものです。ざっくり切られているのは市場らしさということで!
身が引き締まり、非常に解像度の高い舌触り。ねっとりとした美味しさが口いっぱいに広がり、その余韻にはぐっとビールをあわせたくなります。
お酒を飲むときは昼食のピーク前がおすすめ
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子持ちの甘海老のアラが書いったお椀も豪快さがあっていい味をしています。
昼食のピーク時は行列ができることもあるので、お酒を飲む人は前後にずらすことをおすすめします。市場酒の醍醐味は、なにより朝酒にあると思います。
元気なベテランお姉さんたちの無駄のない接客ペースにあわせ、こちらもちゃきちゃきと味わって、大満足。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 南部亭 海鮮 鈴 |
住所 | 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町1−1 |
営業時間 | 営業時間 [月・火・木・金] 8:00~14:00 [土・日・祝] 9:00~14:00 日曜営業 定休日 水曜日 |