150年以上の歴史を誇る鰻の老舗『竹葉亭』の銀座店は、銀座の今と昔を知るランドマークのような存在です。文豪たちにも愛された江戸前の鰻は、ふっくらと柔らかく、口の中で優しくほどけます。実は鰻以外にも名物あり。今日は老舗の暖簾をくぐり、のんびりお酒を楽しみましょう。この立地で、実は意外とリーズナブルなんです。
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銀座のまん真ん中でも気軽に入れる鰻屋さん

銀座四丁目交差点、誰もが知る時計塔・銀座和光や三越銀座店のすぐ近く。常に新しい店が生まれる刺激的な街の真ん中で、長年変わらずに迎えてくれる店の存在は、なによりも安心感を与えてくれます。
ここ「竹葉亭 銀座店」は、木挽町の本店とともに銀座の歴史を刻んできた、まさにそんな一軒。隣が老舗ビヤホールの「ライオン銀座5丁目店(銀座プレイス内)」というのも、飲兵衛には嬉しい立地です。
店の歴史は古く、慶応2年(1866年)に遡ります。驚くことに、始まりは武士の刀を預かる「留守居茶屋」だったそう。明治時代の廃刀令を機に鰻屋へ転身し、夏目漱石の『吾輩は猫である』に「竹葉でも奢りましょう」と登場するほどの名店になりました。

店内は老舗らしい落ち着きがありながら、過度に堅苦しくないのが良いところ。テーブル席で気軽に利用でき、昼時は近隣で働く人々で賑わいます。2階は座敷で、ゆったりとしたお座敷で会食を楽しむことも可能です。

昼営業が16時までと長く、お酒・おつまみともに充実しているので、ご隠居さんたちの昼飲み処としても使われています。
鰻を待つ間の、粋な酒肴

まずはヱビスビールの樽生をもらって、喉を潤します。クリーミーな泡と麦の深いコクが、これから始まる食事への期待を高めてくれます。それでは、乾杯!

ビールを飲み干したあとは、日本酒へ。こちらで定番として置かれているのが、愛媛県今治市の銘酒「山丹正宗」というのが興味深い。すっきりとした辛口のなかに米の旨味が感じられ、鰻のタレとも、繊細な和食とも相性が良い。季節に合わせて冷やでもお燗でも楽しめます。
肴は、鰻屋らしいものから割烹のような一品まで揃います。
肝わさ(990円)

まず注文したいのが、珍しい「肝わさ」。新鮮でなければ出せないこの一品は、ぷりっとした肝の食感と、ほのかな苦みがたまりません。わさび醤油でいただけば、日本酒がぐいぐい進みます。老舗の仕入れの良さがシンプルに伝わってくるようです。
海老しんじょ(990円)

海老好きとして見逃せないのが、こちらの「海老しんじょ」。品書きの一品料理は、筆頭が刺身で、そこから天ぷらと続いていますが、海老しんじょは玉子焼きの更にあと。随分うしろのほうにありますが、仕込みもあるしこだわりも感じられます。

ふんわりとした口当たりの中に、海老の豊かな風味が凝縮されています。丁寧に仕事がされているのがわかる、上品な味わいです。
うざく(1,980円)

定番の「うざく」も外せません。お重の鰻とは少し異なり、地焼きにしたような香ばしさとしっかりとした食感の鰻が使われています。きゅうりのみずみずしさと三杯酢の酸味が、鰻の脂の旨味を一層引き立てます。
鯛かぶと煮(1,100円)

もう少し肴が欲しいときにおすすめなのが「鯛かぶと煮」。この店は、池波正太郎も愛したという「鯛茶漬け」が鰻と並ぶもう一つの名物。その鯛の頭を使った立派なかぶと煮は、食べごたえも十分。骨周りの身をつつきながら燗酒をちびちびとやる時間は、まさに至福のひとときです。
いよいよ真打ち、江戸前の鰻重

お酒と肴を十分に楽しんだところで、いよいよ鰻重(4,536円)をお願いします。塗りのお重の蓋を開けると、甘く香ばしいタレの香りがふわりと立ち上ります。

竹葉亭のタレは、100年以上継ぎ足されてきた秘伝のもの。なんと幕末の頃からレシピを変えていないのだとか。醤油とみりんだけを使ったという上品ですっきりとした甘さが特徴で、鰻本来の味を邪魔しません。

箸を入れれば、ほろりと崩れるほど柔らかい。これは、素焼きの後に丁寧に蒸し上げる江戸の鰻ならではの仕事の賜物。口に運ぶと、しっかりとした鰻の旨味を感じた次の瞬間には、すっと溶けていくような感覚です。このご時世でも、お重をしっかりと覆う大きさなのも嬉しいところ。

銀座で鰻が食べたくなったら

創業から150年以上。激動の時代を乗り越え、銀座の地で暖簾を守り続ける「竹葉亭」。文豪たちが愛した味は、今も変わらずここにあります。
とびきり高いわけではなく、それでいて老舗の確かな仕事を感じさせてくれる。この絶妙なバランス感覚こそ、長年この街で愛され続ける理由なのでしょう。銀座での食事に迷ったら、この老舗の暖簾をくぐってみてはいかがでしょうか。美味しい鰻とお酒が、きっと満ち足りた時間を提供してくれます。
店名 | 竹葉亭 銀座店 |
住所 | 東京都中央区銀座5丁目8−3 |
営業時間 | 11時30分~16時00分 16時30分~21時30分 無休 |
創業 | 1866年 ※鰻店としては1871年より |