神戸駅から徒歩7分ほど、神戸西元町にある明治4年創業の酒販店『須方酒店』。神戸で現存する最古の角打ちと言われており、いぶし銀の店内でお昼からお酒が楽しめます。質素な中にある穏やかな心地よさ。侘び寂びを感じる空間です。
三和土の上で静かに立ち飲むという魅力
港町には角打ちが多い。函館、横浜、門司…、そして神戸です。全国的にはすっかり貴重な存在となった老舗酒販店の角打ちが、今なお地域のコミュニティの場として存在しています。
今回訪ねる『須方酒店』は、大正時代に設置された公設市場を起源とするメルカロード宇治川商店街の近く。
明治期創業、昭和から酒屋になった店で、戦前からある建物の中で立ち飲みが楽しめるのです。店構えの渋さから初めての人は躊躇しそうですが、店内が確認できるガラス張りのドアなので、勇気をもって覗いてみてください。
三和土とニス塗りの柱や板材に囲まれた空間に、テーブルと酒が並ぶ棚がコンパクトにまとまっています。人々の痕跡が年輪のように刻まれており、寺社仏閣を訪ねたときのような背筋が伸びる気分です。震災時もお酒を求める人に提供していたそうですし、ここには歴史が詰まっています。
品揃え
- アサヒスーパードライ、キリンラガー、サッポロラガー、菊正宗、本格麦焼酎 克、サッポロワイン北極星
- はも煮こごり、手羽先、シューマイ、豆腐、ナポリタン:それぞれ150円前後
- 刺身:200円台
料理は日替わりで、いつも決まった料理があるわけではないそうです。
時間がゆっくり流れている
ビールは一版的な酒販店の小売価格に近く、大変リーズナブルです。コップ売りの日本酒を前に、常連さんたちはみな1本飲んでいきます。さすが酒屋さんと言いましょうか、ビールは各社あり、大瓶、中瓶、小瓶と揃っています。
サッポロを飲む先客に倣って、私もサッポロラガービールをお願いしました。ラワン材に反射する北極星が素敵、なんて眺めつつビヤタンへ注ぎ、小さく乾杯。
角打ちの”アテ”(関西の言葉。つまみのこと)は乾き物が定番ですが、こちらは手作り料理が充実しています。しかも、シューマイや八宝菜など中華が多い。100円ちょっとでちゃんとした料理が食べられます。
黒霧島、二階堂、菊正宗と一升瓶が並ぶ中に、一升瓶ワインを発見。サッポロワイン北極星です。結構しっかり注いでくれます。
ごちそうさま
配達を終えたご主人が帰ってきて、いろいろとお話を聞かせてくださいました。早い時間から飲みに来る人も多く、集会場のようになっている空間です。昭和から続く地元密着の角打ちがお好きな方は、一度訪ねてみてはいかがでしょう。きっと癒やされます。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 須方酒店 |
住所 | 兵庫県神戸市中央区下山手通8丁目7-5 |
営業時間 | 14:00~21:00 |
創業 | 1871年 |