東京都最東端の商店街「篠崎新町商店街」にある『大林』は、もう12年くらい飲みに行っている大好きな酒場です。最寄り駅である都営地下鉄新宿線・篠崎駅からは徒歩20分も離れていますが、それでも定期的に通いたくなる名店。コの字、家族経営、焼酎ハイボール、魅力が詰まった『大林』の魅力をご紹介します!
目次
コの字カウンターに響く女将さんの優しい声
都内には「大林」という店名の居酒屋や酒販店がいくつもありますが、その多くは暖簾分けの関係にあります。今回ご紹介する篠崎新町商店街の『大林』も、1967年(昭和42年)に大島の「大林酒店」で修行した初代が開いた酒場です。
一般的に居酒屋は人が集まる駅前に出店しますが、篠崎新町商店街の『大林』は、最寄りの都営地下鉄新宿線の篠崎駅まで、1.4km・徒歩20分も離れています。なにより、篠崎駅の開業は1986年なので、新宿線延伸まで篠崎は鉄道空白地帯でした。
では、『大林』はどんなお客さんが通っていたのでしょうか。そのヒントは、篠崎が東京の東端を流れる旧江戸川に接していることにあります。川沿いという利便性を活かした巨大な製紙工場を始めとした事業所が建設された篠崎には、高度経済成長期、従業員たちの飲酒ニーズが急拡大しました。それに応えたのが『大林』です。
実は、篠崎新町商店街へは地下鉄よりも便利な行き方があります。商店街の入り口にあるバスの停留所をみると、その便数の多さに誰もが驚くはず。
なんと2~6分間隔(行き先・経由は様々ですが、JRや地下鉄駅を結ぶ)でバスがやってきます。これは都営バスを代表する基幹路線「都01」(渋谷~六本木ヒルズ~新橋)並かそれ以上。
ということで、いつものようにのんびりバスに揺られてやつてきました。周囲に代わりになる酒場は多くないため、『大林』が満席ではないかと毎回ヒヤヒヤしています。
外観
長屋のように連なった商店街の中の店ですが、老舗らしいどっしりとした構えがたまりません。暖簾は清潔で、店先も掃除が行き届いています。
内観
いらっしゃい!と、三角巾が似合う女将さんが優しい笑顔で迎えてくれます。もうそれだけでホッとします。
比較的長めのコの字カウンターを配置しただけのつくりです。どの席からも店内を見渡すことが出来き、その場に居合わせたお客さんたちの、”近すぎず遠すぎず”のちょうどいい一体感に包まれています。
女将さんや二代目が往復するコの字カウンターの内側。その上には屋根を模した造作に杉玉がさげられています。お客さん側の上には瓦まであり、なんだか細い路地に入った屋台で飲んでいるような気分になってきます。
壁一面を埋め尽くす膨大な短冊も、『大林』で飲む楽しみのひとつ。とりあえずビールをもらったら、あとは首の運動のごとく3分ほど短冊を見渡し、気になる料理をチェック。だいたい「あ、あんなところに鯛かぶと焼きがあった!」と、注文後に気になる料理を発見します。
品書き
お酒
- サッポロ生ビール黒ラベル 中:650円
- 瓶ビール サッポロ黒ラベル小瓶:400円
- 瓶ビール サッポロ黒ラベル大瓶:650円
- 瓶ビール サッポロヱビスプレミアムブラック小瓶:450円
- 宝焼酎ハイボール赤・白:450円
- 桃川にごり酒:400円
料理
- あじフライ:400円
- イカフライ:350円
- とんかつ:450円
- 鳥てりやき:450円
- いわしつみれじる:450円
- いわしフライ:400円
- さんまフライ:500円
- 芝えびからあげ:450円
- 豚なんこつ煮:450円
- すいとん:450円
- お好み焼き:500円
カウンター脇にチョークでつけるサインが伝票の役割
サッポロ生ビール黒ラベル(650円)
『大林』は、江戸川区らしくオリジナルの焼酎ハイボール(いわゆる下町ハイボール・元祖酎ハイ)を提供しており、お客さんの約半数は、この焼酎ハイボール赤(愛称:ボール)を注文されています。ですが、実は生ビールの提供品脂質も極めて高いのです。
数世代前のレトロなジョッキが今も現役でピカピカです。鮮度、ガス圧、洗浄、温度、どれも完璧なサッポロ黒ラベルで乾杯!
お通しとのサイズ比較でも分かる通り、昔の中ジョッキは大きかったのです。今も変わらぬジョッキサイズなのが素晴らしい!
かつお刺しなど刺身(400円~)
メニューが豊富なのでお刺身が埋もれ気味ですが、ぜひ発掘して選びたい。お手頃価格で、一人ならば十分に楽しめるボリュームです。
菜の花おひたし(300円)
老舗酒場に来ると、こういうおひたしが何杯も美味しく感じませんか。日頃の野菜不足を酒場の小鉢で補います。
えびフライ(450円)
洋食店にいけば、2,000円くらいするエビフライ。ここから、揚げたてが酒場値段です。
焼酎ハイボール(450円)
ビールを飲み干したら、『大林』の醍醐味。焼酎ハイボールをもらいましょう。
一概に焼酎ハイボールといっても店によって提供方法は様々です。ここ『大林』では、宝焼酎とエキスを予め合わせたものと、ドリンクニッポン(野中食品工業)炭酸が別々にでてきます。
そのまま梅割りのようにして飲むもよし、ジョッキに炭酸を適量注ぎ、そこへ色のついた焼酎を注ぎ、焼酎ハイボールにするもよし。ぜひお店でご体感ください。
トマトたまごとじ
50品を超えるメニューの数々。あれもこれもと、ついたくさん注文してしまいます。
サッポロ黒ラベル大瓶(650円)
ボールを数杯飲むと、再びビールに戻りたくなるから不思議。大瓶をもらって、もう少し料理をいただきます。
いわしつみれじる(450円)
『大林』の定番料理はなんでしょう。人それぞれ、ここにきたら「これ」という料理があるようで看板メニューというものは無いように思えます。あえて言えば、「いわしつみれじる」でしょうか。お椀に5~6個の大きなつみれが入り、満足感大。小腹を満たす温かい料理ですから、〆にもぴったりです。
ナポリタン風うどん
〆といえば、うどんやお好み焼き、お雑煮などのごはん類も揃っています。毎日のように通う常連さんもいらっしゃるようですし、夕飯を食べる食堂的な利用が一定数あるからでしょう。写真は、品書きにはありませんが、うどんでナポリタンを作ってもらいました。
ごちそうさま
唯一無二の癒やしがある『大林』。店の雰囲気を知ると、遠方から電車とバスを乗り継いででも飲みに行きたくなります。
人気店ではありますが、ここは親子二代で切り盛りする街のコンパクトな個人系酒場です。カウンターだけのつくりですので、一人、二人での利用をオススメします。
近くの酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 大林 |
住所 | 東京都江戸川区下篠崎町10-10 |
営業時間 | 営業時間 17:00~23:00 日曜営業 定休日 木曜日 |
創業 | 1967年 |