荻窪『松月庵』カツ綴じは町蕎麦の醍醐味。家族経営の優しい店が好き

荻窪『松月庵』カツ綴じは町蕎麦の醍醐味。家族経営の優しい店が好き

2022年11月29日

荻窪・すずらん通りに長年続く「町蕎麦」があります。店名は『松月庵』。駅前にありながら、馴染みやすい家族経営の懐かしい雰囲気です。お酒と肴が揃っており、「蕎麦前」を楽しむにもぴったり。こういう店が元気な街は、いい街です。

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荻窪すずらん通りで親しまれてきた町蕎麦

かつて、どの町の駅前にも1軒や2軒あった街のお蕎麦屋さん。いわゆる「町蕎麦」。格式高く感じる老舗の有名蕎麦とはまた違った良さがありました。近所の外食場所として家族で通い、ときには出前をとったりと、町の蕎麦屋は日々の生活に寄り添う存在でした。

それらの蕎麦店の多くは初代が名店で修行し、暖簾分けを受けて店を構え、奥さんやお子さんたちと一緒に切り盛りしてきました。いま、町の酒販店や大衆酒場も事業の将来性と後継者問題に直面していますが、町の蕎麦店も同様です。

立ち蕎麦よりも落ち着けて、高級蕎麦店よりも日常。そんな「当たり前」の良さを改めて考えるときだと思います。

外観

町のお蕎麦屋さんが元気な街は、いい街。なんたって、お店が街の個性をつくりますから。

荻窪の松月庵は、まさにそう思える一軒です。荻窪駅西口から善福寺川方面へ伸びる「すずらん通り」に入ってすぐの場所。

荻窪うまれの筆者は、すずらん通りは馴染みの通りです。善福寺川へ向かって穏やかに下る商店街も、店内にも聞こえてくる中央線が行き交う音も、タウンセブンからの買い物帰りの人たちも、いまは杉並を離れた筆者にはすべてが懐かしく感じます。立ち蕎麦チェーンや和食ファミレスではなく、あったかい雰囲気の故郷の蕎麦屋がある、それだけで嬉しいのです。

内観

店内は甘味処のようなボックス席を並べたつくりです。定員は20名ほどでじょうか。席数に対して空間が広く開放感と清潔感があります。

ご家族で切り盛りしているので、接客は終始穏やか。夕暮れに合わせて飲みに来た私たちを優しく迎えてくれました。

品書き

お酒


(取材時の価格・品揃えです)

樽生ビールはサッポロ生ビール黒ラベル:580円、瓶ビールは、黒ラベル中瓶:580円、大瓶:680円。

お酒1級酒:480円、生酒(金婚):550円、そば焼酎(雲海):480円など。

おつまみ

板わさ:480円、きつねのそばみそ焼き:400円、あげだしなす:480円、おでん:600円、にしんの棒煮:600円、あなご天ぷら:700円、牛のすき煮:700円、はまぐりの酒むし:500円など。

そば・ご飯もの

もり:650円、おかめそば:900円、にしんそば:1,100円、天とじそば:1,200円、かつ丼:900円、カレー丼:900円など。

荻窪の街と、おだやかな町蕎麦の時間

サッポロ黒ラベル大瓶(680円)

ここのビールは、樽生、ビンともにサッポロ黒ラベルです。どちらを飲もうか悩みますが、蕎麦屋に大瓶は珍しいですから、ここは大瓶で。それでは乾杯!

板わさ(480円)

かたくてもっちりとした、いい蒲鉾です。蕎麦前の定番、まずは板わさで気持ちを整えます。ぷりっぷりの歯ごたえと上品な旨味から日本酒が欲しくなります。

生酒 金婚 本醸造生貯蔵酒(550円)

そうそう、日本酒は比較的珍しい「金婚」なんです。東村山の酒蔵・豊島屋酒造がつくるお酒。この1合瓶はお蕎麦屋さんでしか見たことがありません。すっきりとしたいい味です。

かつ綴じ(裏メニュー)

カツ丼やかつ煮ごはんがありますので、かつ綴じの単品も受けてくれます。かつ綴じって、硬派な有名店ではあまり扱いがありませんから、町蕎麦ならではの楽しみだと思いませんか。

かえしの濃くてキリッとした味が玉子や汁を引き締めていて、全体的にメリハリのある味です。決して塩の強さではなく、濃い旨味が味のポイント。カツの衣に素晴らしく調和しています。あぁ、記事を書いていたらまた食べたくなってきました。

そば焼酎蕎麦湯割り(480円)

蕎麦屋のお酒といえば、ビール、日本酒、そしてそば焼酎の蕎麦湯割りでしょう。体の芯まで温まり、心もホロホロになる心地よいお酒です。

きつねのそばみそ焼き(400円)

かつ綴じと並び注目したいのは、そばみそを塗ったきつねです。かなりたっぷり味噌が塗られており、そば焼酎がスイスイと進みます。

時間は17時過ぎ。窓辺のテーブル席で飲みながら、ぼーっと外を眺めています。どうやら小雨がふってきたみたい。通り雨かな。もう少しゆっくり飲めそうです。

ざるそば(700円)

〆にはざるそばを。ここは、一番粉を使う白い更科風の蕎麦。整った細切りで喉越しが心地良いです。つゆは甘さ控えめでかたい味。

すっきりとした余韻のお蕎麦をいただいて大満足。雨は止みそうもないので、すぐ近くの酒場へささっとはしごしましょうか。ここは、一軒目の前にももオススメの『松月庵』です。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名松月庵
住所東京都杉並区荻窪5丁目18−9
営業時間11:00~20:30
日曜日 定休日