西鉄福岡(天神)駅の目の前でお昼から営業する立ち飲み『角屋』。食券式ですが、料理は品数豊富で本格的です。ごま鯖などの郷土料理もお手頃価格。世代を超えて使いやすいフードコートのような空間で、お昼からセンベロを楽しみませんか。
目次
お昼から飲む人に優しいまち「天神」
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福岡の賑わいの中心、天神。西鉄電車の始発・西鉄福岡(天神)駅が鎮座し、駅周辺には老舗百貨店や大小様々な商店街が広がります。昼夜を問わず人通りが絶えないこの街は、お昼から飲ませてくれる居酒屋や専門店も多数。老舗の食堂や中華だけでなく、最近は若い人向けの昼飲み可能な立ち飲み店も増加傾向です。
そんな天神のまん真ん中にある立ち飲み(一部着席)の店『角屋』をご紹介します。地元の老舗百貨店よりもさらに西鉄の駅に近く、雨天でも天神地下街やソラリアステージから傘を開かずに行けるような距離にあります。
年中無休で、毎日11時オープン。会社員や買い物客で賑わう天神の中心で、お昼から飲み始めるのはちょっぴり背徳感がありますが、店をみてみるとすでに常連さんで賑わっています。中にはショッピングバッグを持った買い物帰りの人の姿も。
角屋 外観
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天神の『角屋』はこの界隈立ち飲み居酒屋としては最も歴史があり、店員さん曰く1950年代から続いているそう。運営母体の変更や、約23年前に店名変更などがあったものの、何十年と変わらず、この場所でお昼から営業してきました。リニューアル以前は、硬貨を投入すると焼酎や自動的に抽出される「酒の自販機」が設置されていたと聞きます。かなり硬派な酒場だったようです。現在の角屋はちょっぴりレトロながら、若い人でもひとりで入りやすい雰囲気。
ちなみにこのビルそのものが角屋食館ビルという建物。らーめん屋、串揚げ屋、焼肉屋もみな角屋グループです。まさに、地域密着の店。
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ショーケースが設置されているものの、おでんと唐揚げ、肉じゃが以外はほとんどキリンビール関係の見本です。素晴らしい。
内観
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「いらっしゃい!」ベテランの店員さんが温かい雰囲気で迎えてくれます。
一階はテーブルが並ぶ広めの立ち飲み空間。テレビを見ながら一人飲みをする人や、仕事明けで飲みに来たエッセンシャルワーカー風のお父さんたちが楽しそうに過ごしています。
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地階へ続く階段。地下にも同じような空間が広がっていますが、下のフロアは椅子を完備しています。なお、立ち飲みと着席、値段は変わりません。
いたるところにキリンのPOPがあり、まるでキリンのショールームみたい。店員さんも熱心なキリン推しだそう。
注文はカフェテリア方式
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もともと角打ちのような営業スタイルだったからか、いまも料理やお酒は自分で取りに行く「カフェテリア」方式になっています。先払いですが、金銭の受け渡しはなく、まずはじめに食券機でチケットを購入する必要があります。
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食券機でお酒とおつまみのチケットを購入したら、カウンター越しに店員さんに手渡します。ここにも小皿が多数並んでいますが、これは券売機に記載はなく、値札に書かれた値段と同額の共通券で交換してもらえます。文章では複雑ですが、一度覚えれば簡単!明朗会計!
品書き
飲み物
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これだけキリン推しですから、もちろんキリン系が充実しています。
大樽はキリン一番搾り中:450円・1L(ちかっぱ)ジョッキ:980円。中ジョッキはプラス20円で、キリン一番搾りプレミアム:470円も選択可能。立ち飲みで一番搾りプレミアムを扱うお店はとってもレア!タップマルシェのクラフトビール:各500円もあります。
瓶ビールはキリン一番搾り・キリンラガー大瓶:各550円、一番搾り<黒生>:440円。希少な瓶入り淡麗極上〈生〉大瓶:480円もあります。
ハイボール(オーシャンラッキー):280円、スコッチハイボール(ホワイトホース):400円、富士御殿場蒸留所のジャパニーズウィスキー陸ハイボール:400円など。
食券機にあるお酒と料理
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手元の品書きはキリン商品のみ書かれており、日本酒などは食券機でチェック。日本酒1本:290円、焼酎いも・むぎ:各240円、焼酎こめ・そば:250円、酎ハイサワー:300円など。焼酎文化圏、さすがの安さにびっくり。
料理は、刺身:350円、しめさば:350円、ごま鯖:350円、まる天揚げ:200円、豚足唐揚:300円、豚足トロトロ煮込み:350円、博多がめ煮:250円、若鶏唐揚:300円、串カツ盛:350円、酢どり:300円、角屋の塩肉:490円など。
冷蔵ケース
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こういう酒場で一番ワクワクする場所は、冷蔵ケースでしょう。共通券等で交換可能。刺身はブリ、鯛など。
あさりのしぐれ煮:200円、鶏肝のしぐれ煮:300円、ふぐ皮ポン酢:300円、おばいけ:250円など。しっかり福岡らしい料理が揃っています。
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常温コーナーにもずらり。小鉢類は150円、ホルモン煮込み:300円、手羽煮:300円、松浦のアジフライ:400円など。おでん:120円~は通年あり、糸島あつあげやごぼう天が美味しそう。おでんは系列のラーメン屋で使用する鶏がら出汁を使用しているのだとか。
店員さんも常連さんもフレンドリー、郷土色の強さが心地良い
淡麗大瓶(480円)
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淡麗の大瓶を飲んだのは何年ぶりでしょう。ワンコイン未満で飲める一番搾りプレミアムにも惹かれましたが、思わず淡麗を購入。では乾杯!爽やかでキレある発泡酒です。
ごま鯖(350円)
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福岡名物、ごま鯖。立ち飲みということもありますが、天神の真ん中で350円は本当に安い!
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東京でももっと気軽に食べられればいいのに。そう思いながら、ちびちびと。甘いごまタレに淡麗が進みます。
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時刻は午後1時頃。昼食利用のお客さんも減って、店内はのんびりとした時間が流れています。店員さんが話しかけてくれたのをきっかけに、常連さんとの昼酒トークがはじまりました。
麦焼酎水割り(240円)
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皆さん焼酎を飲んでいらっしゃったので、私も麦焼酎を。結構濃い目で、顔が火照ってきます。開け広げた扉から吹き込む天神の潮風が心地いい。
煮物小鉢(150円)
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九州風の出汁で炊いた煮物もまた、福岡で楽しみにしている酒の肴のひとつです。甘くて優しい味わいに、焼酎の水割りは空になります。食券機が近いので、すぐにお代わり出来てしまう――。これは困りました。
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対応してくれた長年同店で働くベテラン店員さんのおすすめは、チーズ揚げ。プロセスチーズを大葉と春巻きの皮で包んであげたもの。
ごちそうさま
最近は近隣で働く若い人が飲みに来ることも増えているそうです。若い人の好みをイメージした料理も多数。地元に根づいた酒場は、いまも成長中です。手頃な価格だから日常的に使える『角屋』。待ち合わせ前の一杯や、帰宅(帰宿)前の〆にもぴったりです。
飲んだあとは食器を片付けて、テーブルを自分で拭いて、ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 角屋 |
住所 | 福岡県福岡市中央区天神2-10-12 角屋食館ビル B1F・1F |
営業時間 | 11:00~23:00(土日祝は22:30まで・基本無休) |
開業年 | 1950年代 |