九州北部地方の方言が由来と言われる「角打ち」という言葉。いまではすっかり全国区になりました。北九州には角打ちの軒数は非常に多く、趣味団体の「北九州角打ち文化研究会」によると、現在でも100軒近くが営業中とのことです。
北九州の中心街、小倉駅周辺にも何軒か角打ちがあり、一日かけて梯子を楽しむことが可能です。今回ご紹介するお店は室町にある「末松酒店」。最寄り駅はJR北小倉駅ですが、この一帯が行政・オフィスの中心地であり、路線バスが大変便利。小倉駅から歩いても10分ほどです。
モノレールが駅ビルに吸い込まれていく小倉駅。駅は近未来のイメージですが、一歩ペデストリアンデッキを降りれば、そこはディープな北九州の歓楽街です。
末松酒店へ取材に行く前に、ぶらりとお城訪問。細川忠興公が築城した名城、小倉城。(現在の建物は昭和30年代に再建したもの。)
立派なお城がある小倉は、福岡と並ぶ北部九州を代表する都市です。NHK北九州放送局をはじめ、全国企業や団体の拠点もあり、角打ちを利用するメインの層になっています。
時刻は15時。角打ち営業がはじまりました。
お店の右側が角打ちエリア。小売コーナーとの間にあるカウンターが飲みの場所となっています。懐かしいお酒のロゴや商品名が蛍光灯に照らされているこの感じ。渋い角打ち好きにはたまらないものがあります。
日本酒いろいろ、焼酎も乙類が充実しています。缶ビール、缶酎ハイはお好きなのをご自分で取り出して飲んでね、というスタイル。
缶酎ハイなどは一般的な小売り価格とほとんどかわらない手頃な値段で楽しめます。それでは、千円札を一枚用意し、冷蔵庫からキリン氷結レモンを。ちゃんとビアタンまで用意してくれます。では乾杯!
おつまみは乾き物。角打ちでおなじみの柿の種やあられが並びます。50円程度から食べられるので駄菓子屋感覚です。
そんななかでひときわ人気の一品が、このちくわ。佐賀県でつくられたもので、すり身ものがお酒のつまみの定番となっている九州らしさを感じます。
やはり皆さん、冬はお湯割りですか?と訪ねると、結構日本酒も人気ですよと店の方。お隣のお客さんからは「北九州市にも酒蔵がありますし、この界隈は日本酒好きも結構多いよ」と伺いました。そんな話を伺いながらも、なんとなく今日はお湯割りの気分。寒い小倉の街を歩いた後は、麦の香り溶け込む湯気に包まれたいものです。きゅっと一杯、テレビから聞こえてくる鬼平犯科帳をBGMにして、のんびり夕方の空き時間を楽しみます。
北九州角打ち文化研究会発行の「角打ちのすすめ」でも紹介されているよ、とお客さん。若い人がこういう冊子や集まりを通じて角打ちを知ってくれることはいいことだと話されている姿が印象的でした。老舗の酒屋が老若男女幅広く受け入れる集合場所になっています。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
末松酒店
093-582-0001
福岡県北九州市小倉北区室町2-4-6
15:00~21:00(日定休)
予算1,000円未満