茅場町「とり健本店」 昔の東京の姿を想像しながら、焼き鳥をつまむ時間

茅場町「とり健本店」 昔の東京の姿を想像しながら、焼き鳥をつまむ時間

2020年1月14日

絶え間なくスクラップ・アンド・ビルドで成長を続ける都市、東京。大規模開発が各所で次々と進行しているため、都心部の街並みは大きく変わってしまったように思えます。ですが、実は千代田区や中央区には、いまでも昭和初期の住宅街の面影を残す一画が、大通りから隠れる場所に点在しています。

古い建物や路地には長年にわたり人々が使い続けてきたことによって、隅や柱、壁に予熱のようなものを感じ、それがなんともいえないお酒の肴に思えるものです。

今回は茅場町の路地で、昭和20年代の木造民家をつかった焼き鳥の店「とり健」をご紹介します。

 

永代通りと新大橋通りが交差し、地下鉄日比谷線、東西線が接続する茅場町は、表通りは絶えず人通りがあります。それが、いくつか角を曲がるだけで喧騒とは無縁の路地にでる…東京ってやっぱりおもしろいです。

 

金魚が泳ぐ桶を横に見て、ガラガラとお店の扉をはいれば、そこはどっしり構えたカウンター。お店は創業から18年ですが、建物の味わいから感じられる雰囲気は、老舗の酒場です。

お酒のラインナップも渋く、日本酒にはたる酒も用意されています。ビールは樽生、瓶ともにサッポロです。

 

たる酒はお好きですか。一升瓶で販売されているものではなく、樽から片口で受け取り、それを枡に注ぐタイプです。

 

赤い星マークは、一昔前のサッポロビールのロゴです。これがかかれた年代物のジョッキをみかけるとちょっぴり得した気分。それでは、一杯目は黒ラベル(サッポロ式パーフェクト生ビール)で乾杯!

 

泡の線、レーシングが残るのは、美味しさの証。

 

コースの寄せ豆腐をおつまみに、ぐっとビールを飲む。季節に関係なく幸せの瞬間です。

煮込み一人前(380円)、皮ポン(450円)など、鳥料理の小鉢のほかに焼鳥のみというシンプルな品揃えの鳥料理専門店。しやしとまと(400円)などを軽くつまみつつ、焼鳥はコースで頼むのが標準です。

コースは6本豆腐付きで1,600円、十本豆腐付き2,400円の二種類があり、二人前からの注文となります。なお、一人で飲みに来た場合は一人前もOKとのこと。

 

まずは、ささみ。火加減がぎりぎり色が変わる程度に抑えてあって非常にジューシー。

 

ももねぎは、脂と身のバランスが良く、脂に両側を挟まれたネギが鶏の旨味を吸っていて、コク深い味を楽しめます。

 

美味しい焼鳥はビールがますます進みます。瓶ビール(600円)を傾けて、きゅっとひとくち。

 

ジューシーなハツは味が濃く、炭火の風味がそれを一層引き立てています。

 

味付けは部位によって塩、タレが決められています。最初に塩が続いて、ここからタレ。タレは甘さがほとんどなく旨味が強い独特なもの。とろみがあり、肉の隅々まで包み込んでいます。とろりとしたレバーはクセになる美味しさです。

 

そろそろお酒を。こちらでは「刈穂山廃純米」、「越乃景虎特別純米」、「出羽桜 出羽燦々 純米吟醸」など、日本酒の味わいを楽しみたいと思わせるものが多数(600円~900円)。

 

枡、受け皿ともにあふれんばかりのたる酒。その日によって樽香のつき具合が異なるのも樽酒の楽しみの一つでしょう。角からきゅっと飲めば、広がる木の香りと優しい米の甘さに包まれます。

 

つくねとししとうがでて、コースの6本。コリコリとした食感が混じるつくね。タレを重ねて焼き上げるなかでできたおこげもまたいいものです。

 

皮ポンは、鶏皮を一回串で焼いてから、それをポン酢、白髪ネギでいただきます。濃厚な味わいが日本酒を誘い、焼鳥で満たされた後の軽いつまみでもう一杯…なんていうときにぴったりです。

茅場町に残る細い路地の店「とり健」。落ち着いた空間で焼鳥をつまみにたる酒を一献、いい時間でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

とり健 本店
03-3639-9671
東京都中央区日本橋茅場町2-14-8
17:30~23:00(日祝定休・土不定休)
予算3,300円