福岡中心部は、どこもかしこも餃子屋さんだらけ。餃子の激戦区「蒲田」や「宇都宮」にも引けを取らない店数と、なにより観光客向けになりすぎていない地場感が強い店が多いのが特長です。
大衆中華のひとつに餃子があるとか、今流行りの餃子バルスタイルではなく、福岡で餃子は酒場のメインディッシュのような存在。東京のもつ焼きみたいなもの。
博多駅から10分ほど歩いた遊心(ゆうしん)も、そんな福岡の地場に根付いた人気店で、連日近隣で働くサラリーマン・OLで賑わうお店。
といいながら、なんでしょう。隠れ家割烹的な店構えでしょ。そう、ここ遊心は餃子屋の概念を覆すオシャレ系なのです。といっても、女子ウケ狙いの可愛い系の内装ではなく、例えて言うならばシティーホテルのロビーのよう。
割烹でいえば花板さんが立つ厨房の中央は大将の餃子の調理台。振り向けば焼台と鉄板があり、テンポよく次々と焼き上げていきます。ある程度仕込みで用意されていますが、売れ行きに応じて追加で作るのだそう。その日の分はその日に使い切る。美味しい料理のための微調整。
さて、メニューをみていきましょう。ビールは生ビールがヱビスとアサヒの併売。一杯430円(以下税込)と嬉しい価格。瓶ビールもあり。日本酒は福岡の泰山など500円~、焼酎は麦・いいちこ、芋・霧島、米・繊月とさすが福岡らしく種類も豊富で400円~。
ドリンク・料理ともこの一枚板に収まっていてみやすく、メニュー数が控えめなので全部食べたくなます。看板料理の餃子は380円で7個と大衆中華と変わらない良心価格。福岡の餃子酒場では餃子と並んで定番の酢モツももちろんあります。
ヱビスビールの生を一杯。グラスもよく冷えて状態ばっちりの一杯。ジュージューと音を立てる餃子を前にして、乾杯!
団子状で寝かした中力粉と強力粉を重ねた皮は、包む直前でぐりっと引き伸ばしてスピーディーに餡をくるむ。オーダーと同時に特注5mm厚の鉄板にのせ強火でいっきに焼き上げる。そのまま鉄板のまま目の前にやってくるのですから、美味しいに決まっています。
※写真は2人前。一人前7個。
外はカリっと素揚げ風で、餡の近くは水餃子のようなもちもち感。そして複雑に広がる旨味たっぷりの餡。余韻にすかさずヱビスを合わせれば、誰でもきっとえびす顔。
お通しの塩こんぶサラダは旨味強い餃子の合間に挟むベストパートナー。
ほぼ垂直に盛り上げたポテトサラダ(460円)は、自家製チャーシューが小さくサイコロ状に入っていて、肉の旨味と香りでより華やかに。ポテトサラダが美味しい居酒屋は安心できます。
数量限定、早い者勝ちのゴマサバは裏メニュー。餃子屋でお刺身ということに違和感を感じることはよくわかります。私も遊心のゴマサバを食べる前はそうでしたから。
これが思わず笑ってしまう美味しさ。地元の常連さんたちにも人気の本場の味で、甘くしっかりしたコク味の醤油にたっぷりの万能ねぎと粗削りのゴマ。ぜひ餃子を注文の際には、ゴマサバありますか?と聞いてみては。
酢モツ(500円)は餃子と並ぶ地場の定番オツマミ。薄くスライスした新鮮なホルモンで、コリコリとしたナンコツ風の食感と意外なほどあっさりとした後味が特長。モツ系が苦手という方でも、博多の酢モツは食べられるかもしれません。
黒ゴマが風味のポイントで、ただひたすら酢モツ&ヱビスのリピートをしているだけで楽しくなります。
餃子づくりの最中にも関わらずニッコリピースの大将。強面な職人さんの雰囲気なので撮影をお願いするのにヒヤヒヤしましたが、とっても気さくな方。
店の雰囲気は大将の人柄が反映されるなんていいますが、まさにその通り。きちっとした仕事と楽しませる心のある素敵な方です。
地元率高し、できれば予約したほうがいい賑わいの「遊心」。ちょっと上品に飲みたい夜にいかがでしょう。価格は大衆価格です。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)
游心
092-282-3553
福岡県福岡市博多区住吉2-7-7 ラ・コンチェルト 1F
17:00~24:00(不定休)
予算2,500円