【営業再開】所沢「百味プロペ店」それは、百を超える楽しさ。地階に広がる酒パラダイス

【営業再開】所沢「百味プロペ店」それは、百を超える楽しさ。地階に広がる酒パラダイス

2017年6月27日

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所沢のオアシス「百味(プロペ店)」は、昭和40年の創業から55年、地域の人々だけでなく、地元球団のファンにも親しまれてきた大衆酒場です。お昼から営業、酎ハイとビ…
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昭和40年創業、所沢を代表する大衆酒場「百味」。

百の味があるという意味から「百味」なのですが、実際の料理の種類は150ほどで、すでに超過しています。数で驚くのはまだ早く、なんと総席数は260席。スタッフさんも10名以上がもくもくと仕事をこなしています。

看板に明かりが灯るのは、まだ多くの人が飲み欲もなく働いている午前11時。大箱酒場のスタートは早い。東京などの大都市から離れた街で午前から開くお店は珍しい。それでも需要があるというのだから素敵な話です。

百味はもとは埼玉所沢周辺で数店舗展開していた居酒屋ですが、平成になって店の数を減らし、現在は所沢のみの1店舗となりました。いまでもプロペ店と名乗っているのはその名残から。

西武鉄道の池袋線と新宿線が交差し、私鉄西武の要衝となる所沢。最近駅の改良工事も完了し、立派な橋上駅舎が誕生しました。各地へのアクセスの良さや、所沢の街そのものの商業・オフィスの充実もあって、日夜問わず賑わう駅前です。駅前に建つ西武百貨店所沢店が、そんな所沢の流通の象徴的な存在。

商店街はいくつか伸びますが、飲みのメインストリートとなる道は全長300mの所沢プロペ商店街でしょう。駅を降りた人たちが、軽く一杯ひっかけるべく、次々に飲み込まれていきます。

なかには、侮れないビルの路地があり、チェーン店だけではなく街の酒場コミュニティが元気に活きているのが嬉しい。

百味は、そんなプロペ商店街の中ほどにあります。といっても、大手ドラッグストアのほうが目立つので、初めての人は「え、ここ?」となりそう。以前は商店街のなかの路面だったそうですが、地階へと移転。ドラッグストアの煌々とした明かりと真逆にある激渋の雰囲気に引き寄せられます。

地階に降りると、商店街からは想像もつかない大規模な飲食フロアがみえてきます。ゆとりのある配置で、蕎麦屋や居酒屋でよくみかけるコンパクトなテーブルとこじんまりとした椅子が見渡す限り並んでいます。

さらに、入り口から折れ曲がった場所に板間の大きな宴会スペースが登場します。これもまた大規模で、これが家族経営の居酒屋というのに驚かされるばかり。

お一人様用のカウンターもあるので、1人ちょい飲みも心配ご無用。ちょっとした給食室クラスの巨大な厨房は、揚げ場や焼き場、包丁を握る板前さんと、分業かつ大人数で次々料理を作っています。この厨房を見ながら飲めるカウンターが好き。

さて、百味のドリンクはとにかく安い。レモンサワー、青りんごサワーなど酎ハイ類は220円、日本酒は490円、そして、極めつけは大びんビール430円です。いまどき、こんな価格で大びんが飲める着席居酒屋も珍しい。

銘柄はキリン一番搾り(IS)、キリンラガー(RL)、クラシックラガー(CL)、さらに季節によっては一番搾り埼玉に乾杯(JI)とキリン大びん勢揃い。さらにスーパードライが加わります。

水冷プールにこれでもかと詰められた瓶ビールは、キンキンに冷えて出番を待っています。気持ちの問題とは思いますが、瓶ビールは水冷の美味しさは格別。

乾杯!

冊子になっているメニューは、まるで家電のカタログのような厚さ。びっしりと書かれた料理は、握り寿司盛り合わせ860円~、巻物、手巻き、ろばた焼きの括りでもつ焼き・焼鳥110円、小鉢320円から、刺身はたこ650円から始まり、黒板メニューに季節の鮮魚がずらり。刺身三種盛り1,080円。

何を頼めばよいか迷って、しばらくメニューを右に左にいったりきたり。でも、最初はやはりお刺身でしょう。築地に直接仕入れに行く刺身は、旬かつ低価格で提供できるバランスの取れたネタを選んでいらっしゃるようで、日々書き換わります。

今夜はイチオシ、こちの刺身がお酒のお伴。

そんな百種をこえる百味のメニューに悩んだら、まずはにくじゃが430円がおすすめ。長年の看板料理で、常連さんも着席と同時に、「キリンラガーとにくじゃがね」と頼む人も多い。お通しがないお店ですので、こういうスピードメニューを頼むのはお店も飲む側もちょうどいい。ところで、ここのにくじゃがは日によって豚だったり鳥だったり、理由は謎です。

揚げものも豊富。定番のハムカツなどパン粉系や唐揚げもよいですが、寿司も提供する大衆割烹ですから、やはり天ぷらを肴にしたいところ。穴子天(540円)はホクホクでクセもなく、素直に美味しい一品です。

220円の酎ハイは、おそらく所沢最安値。ボトルで焼酎をとっても、どこか懐かしい麒麟ピュアブルーが1620円だったりとお財布に優しい。常連さんが「ここは安くてなんでもあるし、最高よ」と話してくれましたが、まさにその通り。

レモンハイは甘くなく、スライスレモンの酸味とガス圧しっかりの炭酸で味わうすっきり系。

お酒をつくる”ドリバ”は独立していて、ビールや酎ハイを目まぐるしく次々とつくる職人的なスタッフの方も素敵。生ビールの品質もよく、例えるならば街のビアホールといったところ。

大箱でお昼から通しで営業、そして安い。お客さんがいい感じのベテラン揃いでスタッフの皆さんの阿吽の呼吸も素敵。所沢におけるノンベエの楽園はここに違いありません。

お店の方も近すぎず遠すぎず、程よくほっといてくれるけど、注文したいときにはすぐに気づいてくれる。大衆酒場っていいねと思える要素が詰まっています。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

百味 所沢プロペ店
04-2921-0100
埼玉県所沢市日吉町4-3
11:00~22:30(無休)
予算2,000円