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さっぽろテレビ塔にほど近いオフィス街の路地に、「第三モッキリセンター」という不思議な袖看板がついたビルがあります。
「もっきり」とは、酒屋の片隅でお酒の一杯売りを飲ませていたことをいいます。別名ではモギリとも。現在は北九州発祥の言葉である「角打ち」が一般的な呼び方となりました。酒屋の店先で一杯飲ませていたというのは、実は居酒屋の誕生よりも古く、蕎麦屋で飲む”蕎麦前”と並び、日本の居酒屋の原点とも言われています。
そんな「もっきり」の名がついた第三モッキリセンターは、1926年(昭和元年)に小樽で創業し、その後札幌へ移転し、もうすぐ一世紀酒場となる銘店です。現在の建物は1993年のもの。歴史ある飲み屋ではあるものの店は鉄筋コンクリートで味気ないと感じるかもしれませんが、過酷な北海道の大地では仕方がない。
店構えのシンプルさとは真逆に、店内は奥に広がる大きなコの字カウンターと、14時(土は13時)オープンと同時に明るいうちから乾杯を楽しみたい黒帯の常連さんたちで賑わい、実に名酒場らしいムードになっています。
蛍光灯の光に機能美のあるカウンター、ピカピカのホシザキの厨房機器などではありますが、やはりいい酒場には独特な空気感がありまして、飲み欲をくすぐられる雰囲気がたまらない。
瓶ビールは480円でアサヒスーパードライの大びんが安く、アサヒスーパードライを飲む人が多い。というのも、最寄りの札幌地下鉄バスセンター前駅から地下鉄東西線で3駅の場所にアサヒビール北海道工場があり、サッポロビールのイメージが強いこの地にあっても、アサヒもご近所さんなのです。
元祖プレミアムビールの貫禄を感じるヱビス大びんは580円。ちょっと贅沢ではありますが、それでも大びんでこの値段は嬉しい。では乾杯!
甲類では大五郎、チューハイもアサヒ系。日本酒は日本清酒社の千歳鶴。第三モッキリセンターから徒歩3分の場所に「千歳鶴ミュージアム」もあるので合わせて梯子されることをおすすめします。
いかにもエクセルで作りました感のあるメニューですが、店の雰囲気とあっていて、なんだか楽しくなります。並ぶ品書きの名に郷土の味が多く、飾りっ気のないメニューながら魅惑を醸し出しています。フライドポテトと刺身類に挟まれて突如でてくる雪印チーズ150円の文字も、なんだか楽しい。
300円の湯どうふは年中通して人気の料理。タレはただのポン酢ではなく旨味があり、昆布で出汁がでた湯どうふの「湯」とタレをれんげ上で合わせそのまま口に運べば、その余韻で千歳鶴がますます進みます。
ししゃも(350円)は一人飲みにちょうどいい量。同じく焼魚ではほっけが600円と高級なのですが、ボリュームも多く梯子ができなくなるので要注意。棒だら、にしんのきりこみにシャウエッセンウィンナーまで、食べたい料理が多いので困ってしまいます。
ところで、シャウエッセンは日本ハム社の商品名ですが、雪印といいそのままブランド名がメニューに入っているのがおもしろいでしょ。
一人、二人でお昼過ぎからのんびり飲むのがオススメの第三モッキリセンター。カウンターでゆったりとした気分で扉越しから差し込む日差しを眺めて飲めば、日頃のストレスもどこへやら。
お隣の常連さんと一期一会の会話なんかも楽しめる素敵な酒場です。なによりも、お店をきりもりするスタッフの皆さんの人柄の良さがなによりのおつまみです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
第三モッキリセンター
011-231-6527
北海道札幌市中央区南1条東2-2
14:00~22:00(土13:00~19:30・日祝定休)
予算2,000円