浜松町『秋田屋』東京タワーを見上げる都心の角で、みんな大好き大衆酒場

浜松町『秋田屋』東京タワーを見上げる都心の角で、みんな大好き大衆酒場

2017年7月11日

JR浜松町駅前のガードをくぐってまっすぐ増上寺へ伸びる大門通り。浜松町のメインストリートで地下鉄大門駅もあることから、日中は多くのビジネスマンがもくもくと行き来します。

ビル群越しに三解脱門と東京タワーを眺める絶好の東京らしい景色なのに、みんな昼間は時計を気にして歩くだけ。そんな芝大門の街にも、夕暮れとともに人間くさい素敵な酒場に明かりが灯ります。

1929年(昭和4年)創業の秋田屋です。ぶっちぎりで浜松町イチの名酒場。21世紀になって店舗は建て替えられど、昭和のひとなつっこい酒場の雰囲気はそのままです。

店名の由来は、創業者が秋田は横手の出身から。昔は、自分の生まれた街の名を屋号に冠する酒場は多かったです。店名よりも目立つ高清水の看板はもちろん秋田の銘酒で、秋田屋で変わることなく愛され続けている日本酒です。

建物は新しくなっても、焼台の前のちょっとした立ち飲みコーナーは健在。一階のパイプ椅子は飲み好きな人と数人で、二階のテーブル席は居酒屋デートでもオススメですが、やはり一等は角の立ち飲みで間違いない。

もうもうと立ち昇る狼煙のような炭煙に燻されたってなんのその。帰ってシャワーを浴びればよいのですから、焼き場前のライブ感を存分に味わいます。だって、ここで飲むほうがより一層美味しく感じるのですから。

ビールはキリン。一番搾りではなく、秋田屋は昔からずっとラガーです。ラガー中ジョッキ550円で乾杯!よく冷え、するすると喉に流れる感覚がたまりません。

もつ焼きがメインですが、氷頭なます(450円)や一夜漬けなど変わらない自家製メニューもファンが多い。15時30分オープンとひとつ早めに口開けとなることもあって、定時退社で飲みに来るとヤマになっている料理もあるので、秋田屋飲みはお早めに。

もつ煮込みは、串と同じに豚をつかっているかと思いきや、牛を使っているのが珍しいとよく言われています。ぷりぷりの脂がついているのにクセは少ない。一味を多めに、ネギもたっぷり口に含めば「あー、いいねー」と思わず言いたくなります。

串が焼けるまでに煮込みと小鉢系を頼むのがいつもの流れ。めかぶ酢ややっこをつつきながら、焼番のお兄さんや隣り合ったお客さんと世間話に花が咲きます。

てっぽー、れば、たん、はつ、なんこつ、こぶくろ、ほるもん、ガツとカシラという並びも変わりません。一日に2000本近く仕込むというモツは、その日仕込みで売り切りがモットー。冷凍せず生のモツにこだわります。

塩・タレは好みがあるかと思いますが、筆者は秋田屋では断然タレ派。サラサラでしっかり甘いタレが、大ぶりでワイルドなモツに実によくマッチしています。

モツは2本一皿360円。大きいのでいっぱい頼まず少しずつ慎重に。熱々で食べるのが一番ですし。

名物のたたき(220円)は、豚軟骨をふんだんに混ぜ込んだつくねでコリコリとした食感が特長。一人1本までという本数制限もあってレア感から「たたき」を最初に注文する人も多いです。

芝浦と場(食肉市場)が近いこともあって、今のようにモツの鮮度が注目されるはるか以前からつぶしたてを求める常連さんで賑わったそうな。最近はもつ焼きブームもあって、古くからの常連さんにかわって若い人も増え、お店で働く人も世代交代が進んでいます。

それでも雰囲気が全然かわらないのは、きっと昭和のシンボル・東京タワーのしたで、夜風を浴びて乾杯するこの風情と、受け継がれる酒場の人情によるものだと感じます。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

秋田屋
03-3432-0020
東京都港区浜松町2-1-2
15:30~21:00(土は20:30まで・日祝3土定休)
予算2,500円