川崎駅前近くで落ち着いた雰囲気の老舗やき鳥店を探すならば、候補に入れたい『ぷち平林』。100品を越える膨大なメニューの中にある「なんなん」という見知らぬメニューとは? 不思議な店名の由来と名物料理をご紹介します。
目次
70年続いた老舗焼鳥店『貝屋』の系譜にある店
川崎駅周辺は居酒屋が非常に充実しています。両隣の蒲田、鶴見にひけを取らない個性派揃いで、駅から徒歩5分圏内にある店は300軒以上。
川崎は川崎大師へ参拝や、東海道五十三次で2番目の宿場町として栄え、明治以降は日本有数の産業集中エリア「京浜工業地帯」を抱える街として発展してきました。さらに競馬、競輪、映画街などが次々に誕生し、人が人を呼ぶように成長してきました。産業、歴史、そして公営競技がある街に酒場あり。今も続く老舗の個人店が多数存在します。
70年以上前に誕生した仲見世の焼鳥店『貝屋』もそのひとつでした。焼鳥なのに『貝屋』という店名なのは、創業時は貝類を焼いていたことが由来。残念ながら2019年春に閉業してしまいましたが、1984年より初代創業者の次男が独立して近くに店を構えていました。店名を『ぷち平林』として今に続いています。
“ぷち”の意味についてご主人に尋ねたところ「貝屋からの独立した意味合いをもたせたかった。当時、リトル東京や、プチ○○という言葉が流行っていたので、ぷちとつけた」と話されています。
渋くて居心地がいい酒場
内観
店は旧東海道に面しています。間口は扉2つ分ほどしかありませんが、店は奥に広くテーブル席が連なっています。一番奥はカウンター席。お客さんは飲み慣れた人、通い続けている雰囲気のベテランさん揃いで、川崎の喧騒の中で程よい落ち着きを保っています。
随所に飾られた賀茂鶴の看板やノベルティー。貝屋の頃から賀茂鶴推しはかわりません。
乾杯は賀茂鶴とキリンクラシックラガー
川崎は鶴見川を渡った対岸にキリンビールの首都圏の主力拠点・キリンビール横浜工場があることもあり、特に老舗でキリン率が非常に高く、『ぷち平林』も同様です。
ただ、今日の一杯目はお店推奨の日本酒、賀茂鶴からはじめたい。キリンクラシックラガーはチェイサーです。
取り扱っている賀茂鶴の品目は6種類。その中で最もスタンダードなお酒、日本酒上等酒賀茂鶴(450円)を選びました。それでは乾杯。
品書き
お酒も料理も、驚くほど種類が多いです。バナナビールなど、ここでしか飲めないような不思議なカクテルもあり、その品書きの膨大さからは「ぷち」とは言えません。ご主人の熱心さの現れです。
お酒
品数は多くても、日本酒は賀茂鶴ブランド一筋です。大吟醸ゴールド賀茂鶴(1,200円)からはじまり、純米酒賀茂鶴(950円)、吟醸辛口賀茂鶴(950円)、本醸造辛口4合賀茂鶴(1,800円)、日本酒上等酒賀茂鶴(450円)。
ビールは瓶ビールがキリンクラシックラガー(大びん680円)、樽生ビールはハイネケン(590円)。酎ハイ類は380円から。
ぶどうの焼酎わり(460円)、牛乳の焼酎わり(460円)、こぶの焼酎お湯わり(480円)、米屋さんのジュース武田のプラッシー焼酎わり(480円)など、アレンジ品がどれもおもしろいです。酎ハイはかなり濃い目なのでご用心。
料理
驚くほど料理が多い…。韓国風むし鳥(700円)、ホルモンスタミナ炒め(600円)、スペアリブ(700円)、コンビーフオムレツ(500円)、きつねチーズ納豆焼(500円)、川崎風お好み焼おっぺた(800円)などなど。さらに壁にはくじらの大和煮やいわしの煮付け、おでんなどが掲げられています。名物ねぎちんやキャベちん(各450円)はご想像の通り、ネギを電子レンジで加熱したシンプルなもの。丼ぶりサイズ。
そして、メインは焼鳥(110円~)ということでメニューはまたまた別にあるのです。※串は2本単位で注文
かしら、たん、はつ、れば、せいにく、とり皮、なんこつ、合鴨つくね、牛はらみ焼、手羽先など。
丁寧な仕事、オリジナルの名物料理
お通し(200円)
海鮮酒場ならお通しに魚介類を出すように、店の看板料理に近いものを出す店が好きです。『ぷち平林』のお通しは、取材時は嬉しいことに鶏もつ煮でした。お通しは日々変わりますが、個性があるものがでればアタリです。
なんなんて何?なんなん(110円)としいたけ(110円)
『貝屋』からの名物料理、なんなん。なんなんとはどんな串かといいますと、様々な部位(牛のほか砂肝など鶏も含む)のモツを一旦煮込んだものをランダムに串打ちしてやきとり台で焼き上げたもの。手間がかかっている上に様々な部位が楽しめるスペシャル品。しっかり甘めでクセになる味といえます。
鮭オムレツ(500円)
オムレツのバリエーションが豊富なので、鮭オムレツを頼んてみました。派手さはありませんが、丁寧な仕上がり。鮭とネギがたっぷりで、ちびりちびりと摘んではお酒が進みます。
昔ながらの昭和テイストそのままの雰囲気、大将やお姉さんの気さくな接客。酒場なれしている人にこそおすすめしたい一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | ぷち平林 |
住所 | 神奈川県川崎市川崎区砂子1丁目8-3 |
営業時間 | 営業時間 17:00~21:00 定休日 日曜・月曜・祝日 |
開業年 | 1984年 |