関西発のエモ系酒場の躍進が続いています。2021年9月11日、東京・五反田には令和版の大衆食堂と評される「大衆食堂スタンドそのだ」の関東一号店が進出。平日の昼間から大勢のお酒好きで賑わっています。
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時代はネオ大衆からエモい系へ
「そのだ」の原点は、2012年に園田さんが神戸市灘区で開業した「中華そばそのだ」です。2016年には大阪市・谷町六丁目に「大衆食堂スタンドそのだ」をオープン。「肉とレモンサワー」をコンセプトに、昭和の大衆食堂・大衆中華を現代版にアレンジした料理が若い世代を中心に話題となりました。
2021年にはいると、神戸市灘区で1986年開店の「とりひげ 阪急王子公園本店」などを手掛ける株式会社リングの運営で、心斎橋PARCO内の心斎橋ネオン商店街に「大衆食堂スタンド そのだ 心斎橋PARCO店」をオープン。そして、9月11日には東京進出1号店となる「大衆食堂スタンド そのだ 五反田店」を出店。緊急事態宣言明けから、多くの人々で賑わっています。
いまから約10年ほど前に飲食業界で使われ始めた「ネオ大衆酒場」という言葉をご存知でしょうか。いまや店名に冠している店もあり、一般的に使われるようになってきました。昭和の大衆酒場を現代風・若者視点で再構築したもので、業界内では「バル」や「ビヤホール」のようなジャンルの括りとして扱われています。
今回紹介する「そのだ」もネオ大衆という括りかもしれませんが、その域を越えたいわゆる”エモさ”を感じられる店です。ネオ大衆よりも、さらに若者向けにベクトルを向け、より日常の中の非日常感を演出しています。
誰でも気軽に入れる敷居の低さや、『SNS映え』、『人に紹介したくなる店』、『エスニック』などの要素をフォローしつつ、主役の料理や飲み物に対してもより本格派に魅せる工夫が感じられます。
それでは、お店の様子をご紹介します。
タイル張りのコの字が一種の舞台
コの字が店の主役
ネオン看板に大型の白暖簾。台湾や香港の食堂のような、町中華のような、いろんな飲食店の「大衆○○」要素を整理・融合させたデザインです。
店の中央には大きなコの字のカウンターがあり、これは他のそのだにも見られるレイアウトです。豆腐店のような白いタイルは寒々しく感じるかもしれませんが、お客さんで常に賑わう空間はこれくらいが清潔感があり良いのかもしれません。
調理白衣姿の店員さんがせわしなく調理・提供をしています。マニュアル接客ではないようで、大衆酒場の名物スタッフ的な楽しさが今後出てきそうです。
間口の窓を挟んだ4人席
テーブル席代わりとして、入り口側のカウンター席を、窓越しで店内・店先の両方から使えるようにした構造がおもしろいです。これからの季節、暖かい店内か、風通しがよりよい店外か、悩むところ。
電照看板
手元に品書きがあるので、壁面の短冊や価格表はにぎやかしなのですが、こういう電照看板は昔の遊園地の食堂感があって楽しいです。全体的に、1980~90年代にタイムスリップした気分。
なにはともあれ、ビールから
瓶ビール(大瓶605円)はサッポロ黒ラベル。それでは乾杯。
ビヤタンではなく、すごいグラスがでてきます。まさしく、エモい系。有名な漫画・アニメのキャラクターが描かれたグラスが強烈です。(私はSではなく無印世代。)
ちなみに、樽生ビール(462円)は通常のメーカーグラスですから、キャラクターグラスはちょっと…という方もご安心を。銘柄はサッポロ琥珀ヱビス。取材時、隣に座った20代前半の二人組は、「生ビールって頼んで、こんな色の濃いビールがでるの、はじめて」と驚いていました。
品書き
飲み物の顔ぶれは関西と異なります。東京らしく、目黒の博水社のハイサワー、赤坂のコクカ(現ホッピービバレッジ)のレモンサワー、2種類のレモンサワー(ともに462円)を用意。
名物サワーという位置づけで、バイス(385円)があり、ほぼ全員が注文します。思い出のパタヤサワー(380円)は青りんご。
ワイン(赤白・440円)も、地味ながらサッポロ一升瓶ワイン北極星で珍しい銘柄が入っています。
料理の顔ぶれは、大衆食堂のそれに限らず、町中華、エスニック要素などを集めた内容。平凡のようでどれも一工夫されたものばかりなので選ぶ楽しさがあります。
名物は、肉豆腐(605円)、メンチカツ(385円)、アンチョビ煮玉子ポテトサラダ(495円)、チャーシューエッグ(528円)。このほか、人気は牛ハラミタタキ(660円)やラム串(198円)、手作りシューマイ(385円)など。牡蠣キムチ(528円)など、エッジを効かせたものもあります。
(プレスリリース資料より)「チャーシューエッグ」528円(税込)
(プレスリリース資料より)「肉豆腐」 605円(税込)
期待を越える?キレイでカワイイ料理
メンチカツ(385円)
オーロラソースの垂れ具合がたまりません。大ぶりのメンチカツ。
敷かれたパリっとしたキャベツをすべてしんなりとさせるほど、肉汁がパンパンにつまっています。このあと注文した他のおつまみより、明らかに鮮明に記憶に残る美味しさでした。
バイス(385円)
ドリ場にある割りと大きなフリーザーでたっぷり凍らせている、甲類焼酎とバイスのシャーベット。これをキャラクターグラスに入れ、そこへマルチサーバーから炭酸を注ぎ込みます。丁寧にかき混ぜながらグラスいっぱいにシャーベットをつくって出来上がり。(※これは『お酒(さけ)』です)
パクチーヨダレやっこ(605円)
豆腐からはみ出すほどの鶏とパクチー。これらを、ごま、ニラの味が染み込んだ甘じょっぱいタレがまとめています。
エスニックに全力にふったわけではなく、食堂のポピュラーな感じでもない。このミックスが「そのだ」を有名にした理由でしょう。
低温加熱の鶏は中華の蒸し鶏風にほんのりと味がついています。柔らかくてジューシー。
五反田ですから目黒のレモンサワー(462円)を。
グラスはちょっぴり小さめながら、ナカ(200円)を1回お変わりして丁度いいくらいは入っています。武蔵小山の老舗割材メーカー・博水社のハイサワー、五反田からはわりとご近所ですし、一杯いかがですか。
ナカ(200円)
細かな氷がたくさん入っています。度数はそれほど高くないようですからご安心を。
焼きそば(715円)
同店のラーメンは平麺ですが、焼きそばも同様。少し辛めのソースですが素朴な味。
豚肉たっぷり具だくさんで、〆を兼ねてこれでもう1・2杯は飲みたくなる内容です。一人だと結構なボリュームです。
午前11時から夜11時まで、12時間通し営業です。平日のアイドルタイム(15時頃)でも、多少の空席がある程度で、時間を問わず飲んでいる人で賑わっています。休日や夜のピークタイムは行列することもあるようです。
お客さんは20代が圧倒的に多く、皆さん楽しそうに過ごされているのが印象的でした。エモさ狙った店ですから、テーマパークを楽しむように、こちらもエンタメの狙いにハマっていくスタンスが、より楽しむコツかと思います。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 大衆食堂スタンド そのだ 五反田店 |
住所 | 東京都品川区東五反田1-15-5 第5宮本ビル 1F |
営業時間 | 営業時間 11:00~23:00(L.O.22:00) 日曜営業 定休日 年末年始 |
開業年 | 2021年9月11日 |