新宿の「吉野」が復活。創業時から値段据え置きの酎ハイは200円!今度の店舗は、外観からはまったくわからないマンションの中。進んでいくと昔と同じ縄のれんがかかっています。新宿特有の空気感に浸りませんか。
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知る人ぞ知る老舗酒場はマンションの奥
新宿二丁目の老舗酒場「やきとり吉野」は、建て替え等の事情により惜しまれながらも2018年7月に閉店。界隈では随一と言われた1杯200円の安くて美味しい酎ハイや、飲兵衛好みの居酒屋料理の数々にファンも多かったです。
そんな吉野が2020年3月、隣の新宿区富久町に帰ってきました。1年以上かけて移転先の物件を探していたそうです。以前からの常連さんが来やすい立地、且つ良心価格を維持できるテナントとなると見つからない、新宿ですからさぞ大変だったと思います。
今度のお店は、なんと一階がテナントエリアになっているマンションの中。しかも公道側から直接アクセスできず、管理人室前を通過するという奥まった場所にあります。さらに、なんと外観からは一切「吉野」の文字がありません。看板が出せないルールだそうですが、それにしても隠れ家すぎる条件です。
いざ、中へ。管理人さんに会釈して飲み屋へ行く。珍しい体験です。
廊下の正面に「吉野」の看板と縄のれんが見えてきます。はじめての人は、ここまでも十分に敷居は高いと思いますが、新宿富久町という住宅街立地や、この小さな入口はますます心細くなるに違いありません。大丈夫、普通の老舗酒場ですからご安心を。
ここで、移転前の「やきとり吉野」にタイムスリップしてみましょう。
昔の吉野はこんなお店
吉野は、1974年に創業した焼鳥の店。新宿通りから一本入った路地にある、入り口はとっても小さな居酒屋です。この界隈では一番安い店として知られ、新宿三丁目新宿末廣亭エリアからわざわざ飲みに来る人もいました。
店内は意外と奥へ広く、テーブル席と調理場に向いたカウンター席、二階は広間がありました。壁を埋め尽くすほどのPOPやメニューで賑やかな店内。例えとして上手ではないのですが、非常に新宿らしいところでした。スケジュールボードを品書き代わりにされていたのが懐かしいです。300円前後の料理が並び、とてもリーズナブル。
名物は特製酎ハイ。昔からお値段据え置き、税別200円。城西エリアでは珍しい、甘くない色付きの酎ハイでした。
やきとりはタレが濃厚で食べごたえもあり、美味しかったことを覚えています。
そんな吉野ですが、テレビ番組でも紹介され、新しいお客さんも増えてきた矢先の閉店でした。
旧店舗の紹介記事はこちら
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2021年の吉野がこちら
この縄のれんは、以前の吉野の入口にかかっていたものと同じです。近年増えている建て替えや移転でも、こうした旧店舗時代からのアイテムがあると、ぐっと親しみやすくなります。
移転前と変わらない笑顔でお姉さんが迎えてくれました。厨房に立つご主人も変わらない風貌で、黙々と料理をしています。ご主人とお姉さんのお二人で切り盛りされています。居心地のよさは家族経営ならではの距離感にもありそうです。
一杯目はやっぱり特製酎ハイでしょう。新店になっても据え置き、税別200円です。それでは乾杯。
品書き
飲み物のメニュー
ビールはアサヒスーパードライ。生ビール(429円)、瓶ビール(大びん605円)と選べます。税込みでこの価格、やはり安さ変わらずです。
特製酎ハイ(220円)、ハイサワー(レモン275円)、トマト割(385円)など。特製酎ハイが目立ちますが、ハイサワーも吉野のロングセラーです。
ハイボール(275円)、大徳利(418円)ほか。
黒板メニュー
さすがにスケジュールボードではありません。黒板には日替わりの料理が並びます。ほっけ開き(429円)、レバニラ炒め(429円)、スパサラ(319円)、赤ウインナー炒め(319円)など。
定番メニュー
品書きの札は、新しいのですがすでにいい味がでています。
300円台が中心の料理。旧店舗の頃の看板料理だったやきとりはありませんが、酒場の定番が一通り揃っています。お店のオススメは自家製厚揚げ(429円)、ほうれん草ウインナー玉子炒め(539円)、焼きそば(539円→429円)です。
(写真:2014年1月)旧店舗時代から名物のひとつだったほうれん草ウインナー玉子炒め。
派手が多い新宿だから素朴が嬉しい
生姜天ぷら(253円)
紅生姜の天ぷらは酎ハイのお供にぴったり。想像通りの味で、スナック感覚でいただきます。以前からあった人気メニューです。
牛乳割(330円)
古くからの酒場で見かけることが多い牛乳割り。豆乳割りのほうがヘルシーなイメージもあってか定番化していますが、甲類から引き出されたこの甘さは酒場の優しさです。結構濃い目。
野菜炒め(429円)
キャベツ、にんじん、もやしににんにくの芽、豚バラ。これを旨味たっぷりに仕上げたもの。しっかりお酒に合うような味付けです。
200円の特製酎ハイは何杯でも飲みたくなります。氷が控えめなのもいいですね。アサヒの樽ハイ倶楽部のグラスですが、味は吉野のオリジナル。昔からエキスはヒミツです。
ハイサワーのポスター、移転後もしっかり残っていました。「お客さん終点だよ」(ハイサワーのCMコピーより)
休業期間も含めて、今年で47年。ご主人が若い頃に店を立ち上げ、以来半世紀近く守ってきたご商売です。
移転後すぐにはじまってしまった長い休業期間を複数回経て、今年10月1日から再開しました。常連さんが集うお店ですが、一見さんも優しく迎えてくれます。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 居酒屋吉野 |
住所 | 東京都新宿区富久町11-5 シャトレ市ヶ谷 103 |
開業年 | 1974年 |
営業時間 | 17:00~23:00(不定休) |