1970年代、桜井で屋台から商売をはじめた「鳥光」。鮮度よくもちもち食感の焼鳥は地元で評判。評判の店ゆえ、持ち帰り客が絶えませんが、醍醐味はカウンターで楽しむ家族経営の焼鳥ライブでしょう。
奈良県桜井市で老舗焼鳥といえば「鳥光」です。2代目のご夫婦が、ご主人のお母さんが生み出した味を守り続けています。
店は20数席のカウンターだけのつくりです。早い時間から界隈の黒帯のんべえさんが集い、夕暮れの酒場時間に浸っています。店の横には「寺川」とい大和川水系の川が流れており、開け広げられた開放感ある店内からは川のせせらぎが聞こえてきます。
悠久の地で、酒場に浸る
奈良盆地の東南部にある、別名「万葉のあけぼのの地」と呼ばれる桜井。古墳や寺社仏閣が多く歴史ロマンにあふれる地域です。三輪そうめんも、ここ桜井の名物料理です。
穏やかな住宅街の駅前を歩くこと5分ほど。平屋の実用本位な店が川沿いにみえてきました。ここが「鳥光」です。映画のワンシーンに登場しそうな、いかにもな地方都市の焼き鳥店という店構えに思わず感動します。
中に入ると元気な女将さんとご主人、そして3代目候補が迎えてくれます。家族経営ならではの阿吽の呼吸でつぎつぎ焼鳥を仕上げていく様子は圧巻です。
客席はすべてカウンターで、焼台を囲むように配され、どこの席からも店を見渡すことができます。座ると女将さんがやってきて、テキパキしつつも優しく応対してくれました。
こういう雰囲気の店は、先に書いたとおり映画のセットになりそうな「いかにも」な焼鳥店ですが、実際に探してみるとそうそうこういうお店はありません。座っていると空間に溶けてしまいそうな雰囲気すらあります。
まずは一杯目。勝手口からはいる川風をほほで感じつつ、生ビール(アサヒスーパードライ・550円)で乾杯です。
品書き
メニューは壁に貼られた短冊のこれだけ。
飲み物は、樽生のアサヒスーパードライのほか、瓶でキリンラガーとサッポロ黒ラベルの用意があります。酒は白鹿(400円)、サワー系では、アサヒの樽ハイ倶楽部とブラックニッカハイボールがどちらも樽詰めで準備されており、ビールサーバーからガス圧高めで供されます。
食べ物はつけもの、めし以外、鶏料理オンリーです。
焼鳥は1人前5本(500円)で、やきとり、せせり、名物のネギを皮で巻いたかわまき、きも、しんぞう、砂ずりと揃います。親鶏の肉を編みで焼き上げるひね(400円)は常連さんに人気の一品。つくね(3本400円)、ナンコツ(400円)なども鶏肉です。
また珍しい鶏の造り(400円)があり、きもやずりが入荷次第で注文可能です。
ちょっと違った鶏づくし
きも造り(400円)
何十年と朝びきの鶏を専門業者から仕入れているという鳥光。鮮度のよさを楽しむ造りは好きな人にはたまらないでしょう。
目の前で豪快に焼いたものをできた順に次々とだしてくれます。焼台からカウンターまでの距離は1メートルほど。焼き立てホクホク、大衆焼鳥バンザイといったところです。
やきとり5本(500円)
まずは定番のやきとりを。正肉にねぎが2個ずつみっちりと刺さり、きれいな短冊状になっています。肉はかなりジューシーでネギがその肉汁を吸って、味がよくまとまっています。
そしてなにより、甘さを主張するとろみのあるタレが実にいい。ニンニクがしっかり効いており、これが濃厚なコクを作り出しています。
手羽先(3本350円)
焼鳥の味付けは塩、タレが選べます。こちらは、手羽先。すると女将さんが一味を目の前にだしてくれて、これをふりかけてという動作。タレもいいけど、塩に醤油を少しかけるのも美味。一般的な手羽先の形状よりもかなり身がついて、骨が露出しています。
身がぷりっとしていて皮も歯ごたえ十分。噛むほどに美味しさが広がります。
ひね(400円)
瓶ビールを傾けつつ、ひねにかぶりつきます。親鶏ならではの歯ごたえと滲み出る旨味がたまりません。それを長年継ぎ足してきたタレがより濃厚な旨さが上手に包み込んでいます。
〆には鶏がらのスープも人気の様子。
桜井でいい店、みーつけた。そんな満足感いっぱいで、ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 鳥光 |
住所 | 奈良県桜井市桜井249-1 |
営業時間 | 営業時間 17:00~21:00 定休日 日曜日 |
開業年 | 1977年頃 |