奈良「酒処 蔵」 創業60余年。昭和のコの字で静かに酔う。

奈良「酒処 蔵」 創業60余年。昭和のコの字で静かに酔う。

鹿を眺めて、修学旅行以来になる春日大社へお参りしたあとは、丁度よい時間になったので、「酒処 蔵」を目指します。

ここは創業60余年になる老舗の酒場。看板料理のおでん、人気メニューのきも焼き、そして旬の魚介料理が評判の一軒です。

奈良は夜に楽しむ飲食店は多くはありません。ですが、だからこそ、いにしえの都らしい落ち着いた雰囲気に包まれています。静寂の小路をぶらり、夜風を感じ歩く時間は特別に感じます。「酒処 蔵」は、奈良の夜を楽しむ一軒目に最適なお店です。

 

ここはJR奈良駅。大阪からJR大和路線の大和路快速で約50分。京都からは近鉄特急で35分。このアクセスのよさを活かして、京都や大阪から日帰りで遊びに行くことが出来ます。

 

東大寺や春日大社周辺にしか鹿はいないものと思っていましたが、案外住宅も広がる町中にいるもので、突然の遭遇に驚いたりしつつ、各方面を参拝。

 

飲食店は多くはないものの、知る人ぞ知るような名店や、オーセンティックバーがひっそりとお客さんを迎えています。時間をかけてじっくりと伺っていきたいものです。

 

蔵のかたちをした建物にある、その名も「蔵」。二代目が守る老舗暖簾です。店内はコの字カウンターを配置したコンパクトなつくり。口開けと同時に、待ってましたとお客さんがそっと席についていきます。これが対面と丁度いい距離で、居合わせたお客さん同士の一体感も魅力です。

常連さんは店の奥にあるお寿司が食べられる部屋へと入っていきます。

 

お隣の方に軽く会釈しつつ、まずは喉を潤すビールから。今日は小瓶でゆっくり飲みたい気分。サッポロヱビス(500円)をもらって、では乾杯。

 

樽生ビールはアサヒスーパードライとキリンハートランド。老舗のコの字にハートランドというギャップも素敵です。ビンで、アサヒスーパードライ、キリンレギュラーラガー(大ビン720円)、そしてヱビス小瓶という品揃え。

日本酒は定番に奈良の酒蔵・奈良豊澤酒造がつくるお酒「貴仙寿」(1合400円)を置いています。キクマサもありますが、地酒が定番というのは嬉しいものです。これに加え、油長酒造(御所市)の「風の森 純米」(1合700円)や千代酒造の「篠峯」(1合700円)など県下のお酒を味わうことができます。

 

料理はきも焼(半分500円)からはじまり、焼き鳥(800円)、串かつ(300円)、たこ酢(800円)など。魚介類は壁の短冊から、マグロやイカのお刺身、牛網焼き、カンパチ塩焼きなどを置いています。品数は多くないものの、どれもお酒好きの心をくすぐる内容です。

 

ひろうす(がんも)、大根、あつあげ…、看板料理のおでん(100円~150円)。

 

うすくちの関西らしいおでん。出汁の旨味をしみじみと感じ、ビールや日本酒をゆったりと進めていきます。

 

貴仙寿のひやをもらって、ひとくち。散策で眺めた町並みを思い出し、その景色に重ねるように地元のお酒を味わえば、旅先のよい思い出になります。余韻がすっきりとして飲み心地の良い味わいのお酒です。

 

ボタンエビ。ミソや卵を添えた酒の肴にちょうどよい小皿でやってきました。甘さ、ねっとりとしたコクがお酒を誘います。

お寺の鐘の音を聞きながら、ゆっくり流れる時間を楽しみました。丁寧な仕事を感じるおつまみは他にも様々。きも焼をはじめ、他の料理が気になる方は、ぜひ奈良へ。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ ※外出自粛要請以前に取材)

 

酒処 蔵
奈良県奈良市光明院町16
17:00~21:30(不定休)
予算2,000円