三輪「鳥敏」酒造りの神様の門前町で80年。地鶏やきとりと三諸杉

三輪「鳥敏」酒造りの神様の門前町で80年。地鶏やきとりと三諸杉

2021年8月24日

奈良県桜井市三輪で80年前に創業(今の居酒屋になって50余年)した焼鳥店「鳥敏」をご紹介します。奈良の地鶏を肴に、三輪の酒蔵が作る銘酒に浸るひとときが楽しめます。

スポンサーリンク

大神神社の大鳥居の下で

奈良駅からJR桜井線(万葉まほろば線)に乗って桜井方面に向かっていると、車窓に遠近感がつかめないほど巨大な鳥居が見えてきます。

JR三輪駅から徒歩10分ほどにあるこの鳥居は、日本最古の神社と言われる大神神社(おおみわじんじゃ)の一の鳥居です。掲示物によると、高さはなんと32.2mもあり、日本一の大きさを誇るのだそう。鳥居の東側正面にある三輪山がご神体で、その風景は悠久の地の風格が感じられます。

大神神社ですが、お酒とも大変関係がある神様で、酒の二大神を祀っています。京都の松尾大社と並ぶ日本を代表するお酒の神様ということで、酒造関係者が祈願に訪れます。

大神神社のお膝元、小さな飲み屋街のいぶし銀の一軒

三輪駅前には大神神社の門前町が広がっており、昔ながらの道幅が狭い路地には店々が立ち並ぶ。料理旅館や呉服店、豆腐店、そしてときどき居酒屋。都市部の駅前に形成された街にはない、ゆっくりとした時間が流れています。

駅前から伸びる「停車場線」と三輪街道が交差する所に鳥敏はあります。

暖簾が出るのは午後4時からと少し早く、旅行や出張で早めに酒場に訪ねる場合には大変うれしい。ただし、桜井線は本数が少ないので訪ねるにはタイミングをあわせる必要がありそうです。

女将さんとの会話を楽しむカウンター席

入ると正面にL字のカウンターがあり、焼鳥店ながら冷蔵ケースには魚介類が並ぶほか、多数の大皿のおばんざいが揃えられています。

地元の野菜や肉類をつかった料理が多く、日々内容はかわるものの10種類以上は揃えているそうです。料理の説明やお酒の話でもてなしてくれるのは、2代目の女将さん。3代目の若女将も途中から合流し、常連さんを交えた地元言葉の井戸端会議が始まります。そんな空間に身を置くだけでも楽しいものです。

奥にはテーブル席もあり、グループでの可能です。

お酒の神様を祀る町、地元の酒蔵もありますが、まずはビールからはじめたい!キリンビール唯一の熱処理瓶ビール、キリンクラシックラガー(中びん660円)をいただきます。それでは乾杯。

品書き

生ビールは銘柄かわってアサヒスーパードライ(600円)。瓶はキリンのほかにアサヒスーパードライも選べます。酎ハイ類は樽詰めで400円。お酒のメインは三輪や奈良のお酒で、これが冷蔵庫の中にぱんぱんにつまっています。

地酒の品書きがこちら。品書きにない季節銘柄、限定醸造品も多いので品書きは参考程度で、トーク上手な女将さんからおすすめを聞くのがスマートです。

看板料理の焼鳥は、地元奈良の鶏を使用し、2本300円。正肉のほか、ずり(すなぎも)、せせりかわひね手羽きもつくねが選べます。鶏はささみずりキモ生刺しでも提供しています。

海鮮お刺身ポテトサラダ、〆には三輪そうめん(800円)。いろいろありますが、串が焼けるまでの時間は、女将さん手作りの大皿料理を何点か選ぶのが良さそうです。

地鶏と地酒があとをひく

大皿料理のおばんざい

濃い味でお酒が進むきんぴら

出汁がきいた白ごまたっぷりの白和え

地元食材をつかって丁寧に作られているおばんざい。派手さはなくても、しみじみ美味しい。こういう美味しさ、久しぶりです。

焼鳥には樽ハイ(400円)

日本酒のまえに、もう少し喉の乾きを整えるべく…。

皮、やき鳥、ずり(2本300円)

串打ちが非常に丁寧。串は一まわり大きく食べごたえがあるサイズです。キャベツを添えるのは西日本の焼鳥ではよくみられます。

身はいい意味で固く歯ごたえがあります。そして噛むほどに旨味がでて、あっさりとしたタレと交じることで深い味が強まりお酒を誘う。この道半世紀の女将さんのベテラン技です。

一升瓶がごろごろ冷えている

今も昔も、杜氏さんが訪れるという「鳥敏」。昔は、遠方からお参りにきた蔵元や杜氏さんたちが大勢集まっていたという話を聞かせてもらいました。お酒の神様の町という背景は、他の一般的な居酒屋とは異なり大変興味深いです。

いまもそうした酒蔵との関係から、鳥敏以外ではなかなか飲むことのできない珍しい日本酒が多数入ってくると女将さん。

1杯目は、限定流通の「今西 純米吟醸」。フルーティーで吟醸酒らしい美味しさ。余韻は引き締まったお酒です。

お店から500mの場所にある造り酒屋、今西酒造本店。そこでつくる地元流通向けの三諸杉 純米吟醸をいただきます。

透き通るような米の甘さと主張しすぎない吟醸香。余韻は長く、旨味が心地いいお酒です。地元の田んぼで育てた酒米「露葉風」を一部使用しているとのこと。

ちょっとした酒の肴を少しずつだしてくれては、お酒の話でもてなしてくれる女将さん。旅先・出張先でこういう店に出会えたら、その土地のことがもっと好きになるものです。

ごちそうさま。

近くの酒場

桜井『鳥光』朝びきの鶏ひねに舌鼓。40余年続く焼鳥の人気店
1970年代、桜井で屋台から商売をはじめた「鳥光」。鮮度よくもちもち食感の焼鳥は地元で評判。評判の店ゆえ、持ち帰り客が絶えませんが、醍醐味はカウンターで楽しむ家…
syupo.com

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名鳥敏
住所奈良県桜井市三輪398-1
営業時間営業時間
17:00~23:00
日曜営業
定休日
月曜日
開業年1941年