立ち飲みで予算3,000円は高いと思いますが、ここにはそれを上回る価値を感じます。この道30年の大将が一人で切り盛りする「はじめ鮮魚店」は界隈の魚好きが集う知る人ぞ知る人気店です。
2018年まで取扱高世界一の魚河岸を有していた築地。築地市場の機能移転後も場外市場は残り、飲食店や家庭消費向けに多数の卸直営鮮魚店や乾物店が営業しています。銀座から近いこともあり、以前は観光客でも賑わっていました。
築地は観光地でもある場外市場に飲食店が集中していますが、実は結構周囲の路地にもいいお店があります。やはり何かしら築地市場との関係があるお店が多く、食品・市場関係のお客さんが贔屓にしている様子もよくみかけます。
はじめ鮮魚店も、そんな築地の地域性を感じられる一軒です。
駅から6分、知る人ぞ知る店
お酒を飲んでいくつか摘むと、だいたい3,000円くらいになるお店。それでいて立ち飲みというのは、居酒屋好きの皆さんからしたら割高に感じることでしょう。私も最初はそういうイメージでした。
ですが、大将の魚の話を聞きながら出される料理を食べていくうちに、「ここはいいお店!」という気持ちがふつふつと湧いてきます。好きな人にはたまらないタイプの店でしょう。
まずは喉の準備運動を。キリンのクラシックラガー(中びん600円)で乾杯。
品書き
生ビールは珍しいキリンブラウマイスター(650円)。日本酒は賀茂鶴や浦霞など180ml~300mlの瓶で提供。お手伝いの人がいない時間もあり、大将一人のときは瓶ごとの提供で省力化している様子。
ホッピーセット(550円)もあります。
お刺身の種類の多さに思わず驚き笑いがでてきます。まぐろ、あおりいか、ひらめ、ぶり、真鯛、ホッキ貝など、小さなお店ながら10種類以上もあります。煮魚焼き魚も魅力一杯、さらに品書きに載っていないものもあり、ご主人に相談しながら注文するのが良さそうです。
ご主人の渡邉 一さんは根っからの魚好き。好きすぎて築地の鮮魚店で長年働き、2011年に独立。ご自身の名前から「はじめ鮮魚店」と名付け、以来10年続けています。
1階の立ち飲みのほか、二階は貸し切りの座敷として営業しており、2020年春以前までは近隣の多くの企業が「秘密の宴会場所」として愛用していたようです。
また、「鮮魚店」という店名の通り魚料理の小売も行っていて、外食が厳しい状況下でも近隣に暮らす人達は晩酌やお祝い事のおつまみにと、はじめさんの魚をテイクアウトで買っていきます。
豪快な盛り付けが嬉しい
お刺身一人前(1,000円くらい)
一人飲みだけど色々食べたいというわがままに応えてくれる、素敵な盛り合わせを出していただきました。
生本マグロの中トロ、天然ひらめ、浅〆さば、うに。どれも輝いています。
築地で長く魚に携わる人が包丁を握る店は、とにかく仕入れ力が非常に高い。下町らしい長年の付き合いや義理人情が今の世の中どれほどあるのかはわかりませんが、続いてきた店は安くていいものを出してくれるイメージがあります。
色々言っていますが、とにかく美味しいのです。
賀茂鶴本醸造爽快辛口(300ml 800円)
お酒は賀茂鶴の本醸造を。最近、すっかり広島のお酒にはまっています。キリっとした味ですが、米のやわらかな旨味が絶妙な具合で刺身の余韻を包み込みます。
新物もずく(450円)
お刺身だけでなく貝類、海藻なども、旬のものが入るので小鉢から季節が感じられるのも楽しいポイント。
煮穴子
品書きにはありませんが、予約のお客さんの献立に入っていたものを少し余裕があるからと裏メニュー的に注文させてもらいました。
かなり大ぶりで、ホクホクに仕上がっています。大きいとはいえ小骨の食感や皮の弾力的な要素は皆無で、ただひたすらにほろほろとした上品な身が口の中で溶けていきます。
豊洲・築地にはいる旬で美味しい良い魚を、立ち飲みかつワンオペ、駅から離れた路地立地という最小限のコストにすることで提供価格を抑えているように思います。
ご主人の明朗快活な性格もあって、魚好きの筆者は終始楽しませてもらいました。常連さんが多いのも納得です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | はじめ鮮魚店 |
住所 | 東京都中央区築地7-16-14 |
営業時間 | 営業時間 11:30~13:30 17:00~22:00(L.O.21:30) ※ランチは限定数が終わり次第閉店 定休日 土日祝 |
開業年 | 2011年 |