阪東橋『信濃屋』創業100年の市民酒場!名物はトラふぐと剣菱樽酒

阪東橋『信濃屋』創業100年の市民酒場!名物はトラふぐと剣菱樽酒

2021年3月18日

大正時代に創業し、1世紀の歴史を持つ信濃屋旧横浜市民酒場組合に加盟していた居酒屋のひとつです。下関から仕入れた天然物のトラふぐ料理が名物。高級食材だけでなく、日常的に立ち寄れる居酒屋小鉢も充実しています。

最寄り駅は地下鉄阪東橋駅ですが、横浜駅や桜木町駅から来る路線バスのほうが便利。「三吉橋」バス停下車、目の前です。

お店があるのは、活気ある商店街として知られる「横浜橋通商店街」内。一直線に350メートルほどあるアーケード商店街です。安くて珍しい魚を揃える鮮魚店など、約140軒が店を構えていますが、その商店街の南側の入口に構える酒場が「信濃屋」。目を引く幟には、ふぐどぜううなぎ馬刺しと、贅沢な料理の名前が並びます。

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大正12年創業の旧市民酒場のひとつ

商店街のアーケード側にも入り口があり、店頭には、灘の銘酒「剣菱」の樽が揃えられています。どっしりとした店構えですが、現在の店舗は7年ほど前に建て替えられたもの。以前は他の市民酒場同様にレトロな雰囲気のお店でした。

早い時間から営業しており、地元のご隠居さんが明るいうちからお酒を酌み交わしています。常連さんとも仲良く話しつつ、こちらにも「いらっしゃい!」と迎えてくれる女将さんやご主人たち。長年続く家族経営の店ならではの温かい雰囲気が満ちています。

店内には河豚の形をした提灯がぶら下がっていますが、聞けば店で捌いた本物のトラフグなのだとか。

市民酒場組合と神奈川県ふぐ協会には関係があり、旧市民酒場加盟店は「信濃屋」のようにふぐ料理を提供するお店が複数あります。そんな背景も含めて、今日はひとつ、ふぐ料理を肴に飲みたいと思います。

1杯目はやっぱりビールから。樽生(中680円・以下税別)はアサヒスーパードライで、瓶(中びん630円)はアサヒキリンから選べます。

トクトクとタンブラーを満たしたら、それでは乾杯。

品書き

ビールはアサヒとキリン、お酒は剣菱

お酒は、店頭の樽からわかる通り、剣菱(1合500円~)を定番酒として置いています。サワー類は420円。お酒の種類はそれほど多くはないものの、ビールと樽酒、ボトル焼酎があれば、ベテランのノンベエさんならばまったく問題なさそうです。

魚介の仕入れにこだわりを感じさせる献立

まずは黒板メニューから。仕入れは横浜と豊洲の市場。季節の魚介に、産地表記や「天然」を冠した品書きに、あれもこれも頼みたくなってきます。

取材時は、天然ぶり刺し天然とらふぐかつを土佐タタキ、大船渡の牡蠣に、北海道の生ウニなど。ホタルイカ天然アユホヤなども季節を迎えると並びます。

ふぐ料理は白子焼きなどを除き、通年で食べさせてくれます。どぜう(どじょう)、馬刺しと、昔からの名物料理が並んでいます。

定番メニューは、普段から通う人にも優しい、500円前後の価格帯が中心です。

せっかくなのだから、黒板メニューを頼みたい

お通しは日替わり、今日は根菜とかまぼこの煮物。

生うに(1,900円)

これが驚くほど美味しいのです。量も多いですし、これで何杯でもビールや日本酒が進みます。個々がしっかりと形状を維持していて、味も濃厚です。

そのまま食べても美味しいですが、添えられた焼きのりに載せてみました。濃厚なウニがほどよくマイルドになり、磯の風味があわさって、より日本酒向きの味になりました。

冷たいおつまみには、冷やした日本酒を。きゅっと一口、鼻に抜ける米の香りとウニの余韻が実に心地いいです。

トラふぐ白子焼き(2,700円)

主役の準備が整いました。天然トラふぐ白子焼きです。まるのまま焼いたものがくるかと思っていましたが、ホイルでつくった受け皿に載せて供されました。

鍋や刺身も美味しいふぐですが、白子焼きは格別です。上品な味のふぐを、ぎゅっと味をつめて濃厚にしたようなもの。アミノ酸成分のかたまりなのだから、お酒とあわないはずがありません。

青い徳利はお燗酒

ふぐを熱々の日本酒に溶かした「白子酒」なんていう飲み方がある通り、ふぐの旨味とお燗した日本酒の相性は他にないほどいいです。辛口でもコクがしっかりある黒松剣菱はとくによくあいます。

定番の焼鳥も秀逸

軽く一杯飲んでいこうという常連さんはきまって頼む「焼鳥」(140円~)。鶏と豚モツがあり、トリ葱トリピーマントリ椎茸ツクネ、豚モツはタンカシラレバーハツという品揃えです。

蕎麦屋の焼鳥同様、鰻に力を入れている店で食べる焼鳥では、味付けは断然タレを選びたいもの。大ぶりの肉にも、継ぎ足してきたしっかり濃い味は負けません。

もつ焼き店や屋台風の焼鳥店とはまた違った魅力がある、大衆割烹・料理屋で食べる焼鳥。いい味をしています。

樽酒はお願いするとマスと塩を用意してもらえます。杉の香が心地いい剣菱の樽酒、少し割高であっても頼む価値がある一杯です。

日常からお祝いまで使えます

土曜、日曜も営業し、日暮れ前から暖簾が掲げられます。高級なふぐも比較的リーズナブルで、こういう雰囲気は他にあまりありません。日常のちょっとした一杯から、お祝いの席まで使い方いろいろの信濃屋です。

ごちそうさま。

市民酒場について

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名信濃屋
住所神奈川県横浜市南区浦舟町1-1
営業時間営業時間
16:00~23:00(L.O22:00)
日曜営業
定休日
木曜日
開業年1923年頃