大正時代に創業し、1世紀の歴史を持つ信濃屋。旧横浜市民酒場組合に加盟していた居酒屋のひとつです。下関から仕入れた天然物のトラふぐ料理が名物。高級食材だけでなく、日常的に立ち寄れる居酒屋小鉢も充実しています。
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最寄り駅は地下鉄阪東橋駅ですが、横浜駅や桜木町駅から来る路線バスのほうが便利。「三吉橋」バス停下車、目の前です。
お店があるのは、活気ある商店街として知られる「横浜橋通商店街」内。一直線に350メートルほどあるアーケード商店街です。安くて珍しい魚を揃える鮮魚店など、約140軒が店を構えていますが、その商店街の南側の入口に構える酒場が「信濃屋」。目を引く幟には、ふぐ、どぜう、うなぎ、馬刺しと、贅沢な料理の名前が並びます。
目次
大正12年創業の旧市民酒場のひとつ
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商店街のアーケード側にも入り口があり、店頭には、灘の銘酒「剣菱」の樽が揃えられています。どっしりとした店構えですが、現在の店舗は7年ほど前に建て替えられたもの。以前は他の市民酒場同様にレトロな雰囲気のお店でした。
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早い時間から営業しており、地元のご隠居さんが明るいうちからお酒を酌み交わしています。常連さんとも仲良く話しつつ、こちらにも「いらっしゃい!」と迎えてくれる女将さんやご主人たち。長年続く家族経営の店ならではの温かい雰囲気が満ちています。
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店内には河豚の形をした提灯がぶら下がっていますが、聞けば店で捌いた本物のトラフグなのだとか。
市民酒場組合と神奈川県ふぐ協会には関係があり、旧市民酒場加盟店は「信濃屋」のようにふぐ料理を提供するお店が複数あります。そんな背景も含めて、今日はひとつ、ふぐ料理を肴に飲みたいと思います。
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1杯目はやっぱりビールから。樽生(中680円・以下税別)はアサヒスーパードライで、瓶(中びん630円)はアサヒとキリンから選べます。
トクトクとタンブラーを満たしたら、それでは乾杯。
品書き
ビールはアサヒとキリン、お酒は剣菱
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お酒は、店頭の樽からわかる通り、剣菱(1合500円~)を定番酒として置いています。サワー類は420円。お酒の種類はそれほど多くはないものの、ビールと樽酒、ボトル焼酎があれば、ベテランのノンベエさんならばまったく問題なさそうです。
魚介の仕入れにこだわりを感じさせる献立
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まずは黒板メニューから。仕入れは横浜と豊洲の市場。季節の魚介に、産地表記や「天然」を冠した品書きに、あれもこれも頼みたくなってきます。
取材時は、天然ぶり刺し、天然とらふぐ、かつを土佐タタキ、大船渡の牡蠣に、北海道の生ウニなど。ホタルイカや天然アユ、ホヤなども季節を迎えると並びます。
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ふぐ料理は白子焼きなどを除き、通年で食べさせてくれます。鰻、どぜう(どじょう)、馬刺しと、昔からの名物料理が並んでいます。
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定番メニューは、普段から通う人にも優しい、500円前後の価格帯が中心です。
せっかくなのだから、黒板メニューを頼みたい
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お通しは日替わり、今日は根菜とかまぼこの煮物。
生うに(1,900円)
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これが驚くほど美味しいのです。量も多いですし、これで何杯でもビールや日本酒が進みます。個々がしっかりと形状を維持していて、味も濃厚です。
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そのまま食べても美味しいですが、添えられた焼きのりに載せてみました。濃厚なウニがほどよくマイルドになり、磯の風味があわさって、より日本酒向きの味になりました。
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冷たいおつまみには、冷やした日本酒を。きゅっと一口、鼻に抜ける米の香りとウニの余韻が実に心地いいです。
トラふぐ白子焼き(2,700円)
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主役の準備が整いました。天然トラふぐ白子焼きです。まるのまま焼いたものがくるかと思っていましたが、ホイルでつくった受け皿に載せて供されました。
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鍋や刺身も美味しいふぐですが、白子焼きは格別です。上品な味のふぐを、ぎゅっと味をつめて濃厚にしたようなもの。アミノ酸成分のかたまりなのだから、お酒とあわないはずがありません。
青い徳利はお燗酒
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ふぐを熱々の日本酒に溶かした「白子酒」なんていう飲み方がある通り、ふぐの旨味とお燗した日本酒の相性は他にないほどいいです。辛口でもコクがしっかりある黒松剣菱はとくによくあいます。
定番の焼鳥も秀逸
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軽く一杯飲んでいこうという常連さんはきまって頼む「焼鳥」(140円~)。鶏と豚モツがあり、トリ葱、トリピーマン、トリ椎茸、皮、ツクネ、豚モツはタン、カシラ、レバー、ハツという品揃えです。
蕎麦屋の焼鳥同様、鰻に力を入れている店で食べる焼鳥では、味付けは断然タレを選びたいもの。大ぶりの肉にも、継ぎ足してきたしっかり濃い味は負けません。
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もつ焼き店や屋台風の焼鳥店とはまた違った魅力がある、大衆割烹・料理屋で食べる焼鳥。いい味をしています。
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樽酒はお願いするとマスと塩を用意してもらえます。杉の香が心地いい剣菱の樽酒、少し割高であっても頼む価値がある一杯です。
日常からお祝いまで使えます
土曜、日曜も営業し、日暮れ前から暖簾が掲げられます。高級なふぐも比較的リーズナブルで、こういう雰囲気は他にあまりありません。日常のちょっとした一杯から、お祝いの席まで使い方いろいろの信濃屋です。
ごちそうさま。
市民酒場について
![市民酒場 特設ページ ~戦前から続く横浜独自の料飲店組合~](https://syupo.com/wp-content/uploads/2023/02/shiminsakaba-1024x341.webp)
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 信濃屋 |
住所 | 神奈川県横浜市南区浦舟町1-1 |
営業時間 | 営業時間 16:00~23:00(L.O22:00) 日曜営業 定休日 木曜日 |
開業年 | 1923年頃 |