京急沿線には今も多くの昭和を感じる街が残っています。ベッドタウンとしてきれいにまとまっている他の私鉄と比較して、京急沿線は一種独特な味わいが感じられます。もともと港街として、軍港として歴史があった沿岸部を通ることもあり、ハマの男をイメージする個性的な酒場が多いのも魅力です。
追浜もそんな歴史ある港町のひとつで、港湾関係の人々が多く働く街。海の男の酒は早い。追浜銀座通り商店街にある歴史ある酒販店「安井商店」は、そんな男たちの社交場です。
開店の午前10時から、作業着姿や老後の余暇を楽しむいぶし銀の先輩たちがひとり、またひとりとやってきます。
コンビニと同程度の大きさの店内。壁一面にお酒が並びます。日本酒、薬用酒、果実酒などと切り文字で書かれた棚が渋くかっこいい。
壁側が商品、飲酒は中央の不揃いのテーブルやP箱の上で行います。
酒販店なので、大手3社のビールは缶・瓶ともに揃います。硬派な角打ちには珍しくビールサーバーがあり、生樽の黒ラベルを提供しています。京急の赤にキリンを赤を合わせて…などと考えつつ、まずはキリンラガーの缶ビールをいただき、乾杯を。
もちろん値段は角打ち価格。
おつまみにゆで卵をひとつ。塩事業センターの食卓塩も店の雰囲気をより一層渋くしています。
右手に缶ビール、左手にゆで卵。塩を気持ち多めにふりかけて食べれば、幼き頃に憧れていた角打ちの先輩方に追いついた気分。自宅で缶ビールとゆで卵はなにも感じないけれど、角打ちの空間はたったこれだけのことも特別にしてくれるのです。
おつまみは定番の缶詰や乾き物の他に、冷奴などちょっとした料理もあります。
開放的な空間で、海風もあって冬の店内は結構寒い。ビールばかり飲むのもいいけれど、ここらでひとつ、デルカップをキメておこう。
夏場はホッピー(セット350円)もおすすめ。横須賀はホッピーの飲用文化が古くから根付いており、ここ安井商店も同じ。ホッピーを瓶ごと冷やした氷なしホッピーが楽しめます。甲類はなんと1合近く注がれてやってきます。くらくらしちゃう(笑)
中央のテレビでワイドショーをなんとなく眺めつつ、静かな午後のひととき。ここも、定時を過ぎたら仕事帰りのお父さんたちで大賑わいになります。
優しそうな女将さんと、女将さんにそっくりな若いお姉さんが切り盛りするアットホームなお店です。
追浜が古くから栄えていたことをうかがい知ることができる追浜の氏神様、雷神社(いかづち)。創建は承平元年(931年)と言われています。ご神木の大銀杏は樹齢400年、安産や子育ての信仰の対象になっています。
街の歴史を感じつつ、ほろ酔い散歩をされてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
安井商店
046-865-2881
神奈川県横須賀市追浜本町1-32
10:00~20:00(日定休)
予算1,000円以下