由比『さかえ食堂』名物!新鮮生桜えびを、漁港すぐの老舗食堂で

由比『さかえ食堂』名物!新鮮生桜えびを、漁港すぐの老舗食堂で

2021年3月2日

創業半世紀、由比の大衆食堂「さかえ」は名物の桜えび料理が自慢。漁期に訪ねれば水揚げされたばかりの新鮮な生桜えびが味わえます。観光向けのレストランとは違った、ローカル色溢れる空間をご紹介します。

食堂「さかえ」は、由比漁港から東海道を挟んだ反対側。港から約100mの距離にあります。駿河湾にせり出した山々と海の間の僅かな場所に広がる、旧由比宿の面影を残す市街地に位置しています。

近所に暮らす人がふらっと立ち寄る地元密着系の食堂で、家族経営ならではのあったかいムードが漂っています。昔の人々の東海道中に思いを馳せるならば、華やかな大型店舗よりもこちらが良さそうです。

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宿場町で漁師町の由比

歌川広重の東海道五十三次にでてくる地形がそのまま残っています。由比の先、伊勢に向けては難所の薩埵峠(さったとうげ)があり、きっと峠越えを前に江戸時代の人々も由比で魚を食べたことでしょう。

現在は東海道線で簡単アクセス。普通列車で旅をするなら、由比で途中下車して桜えびを食べるのも楽しさそうです。

駅前の緩やかに蛇行する道は東海道。由比桜えび通りの愛称が付けられ、巨大な海老のモニュメントが建ちます。

由比港と桜えびの歴史

7分ほど歩くと由比港にでます。

日本中で食べられている桜えびですが、国内での水揚げはすべて駿河湾産とのこと。とくに由比の水揚げ高比率が高く、ここに泊まる船によって支えられています。

由比漁協によると、漁期は春漁が3月中旬から6月初旬秋漁は10月下旬~12月下旬と、年に2回。実はとても貴重な海老なのです。

桜えびと由比港。教育委員会の看板によれば、由比で桜えびの水揚げがはじまったのは、1894年(明治27年)、鯵漁船が偶然引き上げたことがきっかけだそう。

ということは、江戸時代、本陣に泊まるお殿様は桜えびを食べていなかったということですね。

街の食堂で桜えび

由比漁港から一番近い食堂が「さかえ食堂」。お昼間から、旬の桜海老ほつまみにビールで一献といきたいと思います。

桜えび料理専門店ではなく、ここは町の食堂。とんかつ、餃子、焼きイカなど食堂らしい顔ぶれが並びます。

いらっしゃい!と女将さんが迎えてくれました。ご主人が料理の準備をはじめています。地元の常連さんはカウンターでお子さんの話をしています。

テーブル席に通された私は、品書きを眺める前にまずは瓶ビールを一本。焼津にあるサッポロビール静岡工場製造のサッポロ黒ラベルで乾杯。

品書き

ずらりと並ぶ木札のメニュー。目的の桜えびもあります。

桜えびの漁獲量が減少し近年ますます高価になりつつあります。それでも店の値段への反映は極力抑えているそう。

桜えびかき揚げ丼生桜海老沖上がりの3点がついた、桜えびかき揚げ定食(1,900円)をはじめ、それぞれ単品は700円ほど。沖上がりはこの地の郷土料理で、説明によると漁から帰ってきた「沖上がり」で食べることからその名前がついたそうです。ネギ、豆腐、桜えびをすき焼き風に煮込んだ料理。

サクサクのかき揚げとハリのある生桜海老

桜えびかき揚げ丼(1,400円)

しばらくするとサクサクのかき揚げと生桜えびの定食の出来上がり。

かき揚げは香ばしく旨味とタレの甘さのバランスが心地いい。ビールもよいですが、地酒で一献というのも格別でしょう。

小鉢いっぱいに盛られた生桜えび

漁期にあわせて(※取材は2020年秋)訪ねた甲斐があります。水々しくぷりっとハリがあります。甘さは甘海老にも負けないほど。富山の白エビとはまた違ったコクがあります。

桜えびの漁期にあわせて、東海道線で東海道めぐりがてら訪ねてみませんか。新幹線や高速バスでは見逃していた、静岡のあらたな食の魅力に気づくかもしれません。

春は由比の桜えび、お忘れなく。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名さかえ食堂
住所静岡県静岡市清水区由比町屋原593
営業時間営業時間
昼11:00~
夜16:30~
日曜営業
定休日
木曜日
開業年1970年代