宮城県北部太平洋側の港町・志津川で、1960年(昭和35年)から続く大衆食堂「松原」の海鮮丼は絶品です。2017年に新店舗が完成し、海を眺めて食事やお酒を楽しむことができます。その魅力をご紹介します。
南三陸町の中心市街地・志津川。牡蠣の養殖に代表される漁師町で、新鮮なとれたての魚介類を手軽に味わうことができます。
松原食堂は街の小さな食堂から始まり、長年地元に親しまれてきた家族経営のお店でした。ですが、海に近い場所にあったため、震災・津波被害により店舗は流失してしまいました。その後、仮設商店街「さんさん商店街」にて営業を再開。さらに2017年には新店舗が完成し、以前よりも8mほど嵩上げされた高台で、再び海を眺めながら食事やお酒が楽しめるようになったのです。
BRT気仙沼線で繋がる志津川
美味しい魚介料理を前にしてお酒が“おあずけ”は実にもったいないので、自家用車やレンタカーではなく公共交通で向かいます。
志津川へのアクセスは震災以前はJR気仙沼線がありましたが、震災後はJR東日本が運営する鉄道転換のBRT(バス・ラピッド・トランジット)で運行を再開。途中の柳津駅で、鉄道からバスへバトンタッチして、志津川や気仙沼を結んでいます。
鉄道跡の専用トンネルを通るため、バスでも比較的直線で結ばれて、BRT志津川駅に到着。南三陸さんさん商店街や「松原」にも近い、街の中心的な場所に着きます。このほか、仙台から高速路線バスでも同駅へアクセスできます。
リアス式海岸の美しい眺め
旧志津川町、現在は人口約1万人の南三陸町。三陸復興国立公園に指定され、リアス式海岸らしい美しい眺めが広がります。湾内には牡蠣やホタテの養殖に使用されているブイが無数に浮かんでいます。
復興商店街とワインづくり
南三陸さんさん商店街。施設内にも食事処やテイクアウトが可能な店舗がいくつもあり、天気がよければここで樽生ビールを飲むのも楽しいです。
数年前より、南三陸は町をあげてワインの生産に取り組んでおり、海を眺める傾斜地にはシャルドネなどのぶどう畑が広がっています。ワイナリーも2020年に完成し、南三陸の白ワインに、南三陸の牡蠣料理という素晴らしいペアリングが味わえます。
南三陸ワイナリーについては、日経BPに筆者が取材したインタビュー記事がありますので、ご興味がございましたらご覧ください。
津波被災地でゼロからワインづくり:宮城・南三陸「南三陸ワイナリー」(外部リンク)
新生・食事処松原へ
さてさて、お待たせしました。のどが渇いたら、街の食堂へ。松原はBRT志津川駅から徒歩3分ほど。
観光施設の南三陸さんさん商店街と比べ、こちらは地元の人の比率は高め。街の大切な食堂として移転後も親しまれている様子が伝わってきます。
開放的な窓から眺める志津川湾の景観が実に美しいです。
そんな景色を眺めたら、飲みたくなるのはやっぱりビール。アサヒスーパードライの瓶ビール(550円・以下税込)をもらって、「お昼から飲むのは最高よね」と食堂のベテランお姉さんににっこり言われたら、照れ笑いで返しつつ、では乾杯。
樽生ビールは同じくアサヒスーパードライ(550円)。瓶はキリン一番搾りも選べます。日本酒は気仙沼の男山本店がつくる「蒼天伝」(ともに300ml冷酒瓶935円)と、石越(宮城県登米市)の澤乃泉が用意されています。
品書き・ラーメンからご当地海鮮料理まで揃う
品書きをみていきます※ここからは税別表記。街の食堂といえば、ラーメン、そばうどん、カツカレーと「なんでもあるよ!」のスタイル。そこに混ざって、1,250円の刺身定食など、港町らしい定食がちらほらとでてきます。
さらにページをめくると、やってきました。ご当地料理の数々。牡蠣・ホヤの本場ならではの蒸し牡蠣やカキフライ、ホヤ刺しなど。志津川ダコとしてブランド化している地ダコ(690円)も魅力的です。
金華さばにサンマ刺し、単品の料理と地酒をもらって、海を眺めてちびりと飲めば、訪ねた甲斐を感じるはずです。
活ホタテが入る海鮮丼
海鮮丼(1,900円)。
お味噌汁、小鉢、漬物付き。
志津川の地場産業の養殖活ホタテ貝柱をはじめ、地元の名産マダコ、本マグロ中トロ、ボタンエビ、イクラ、カンパチなど。
志津川湾では、銀鮭の養殖がおこなわれており、イクラは牡蠣やホタテに次ぐ、養殖の特産品となっています。現地で食べるとより美味しく感じる土地の味です。
復興が続く志津川の老舗食堂でおいしいひとときを楽しみました。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 食事処 松原 松原食堂 |
住所 | 宮城県本吉郡南三陸町志津川字本浜町109 |
営業時間 | 営業時間 昼:11:00~14:00 夜:17:00~21:00 日曜営業 定休日 月曜日(祝日の場合は翌日) |
開業年 | 1960年(2017年に現在の店舗へ移転) |