古くから続く酒場といっても、いくつかのカテゴリーに分けられます。焼鳥の店、郷土料理の店などさまざま。そのひとつに、古くから「大衆割烹」というスタイルがあります。
寿司店のように板前さんが立つカウンターに、海鮮を中心とした料理。厨房が見渡せ、調理の様子がみえるお店も多いです。近年は、より魚介類に特化したコンセプト酒場も多く登場し、古くからの大衆割烹は数を減らしつつあります。
大衆酒場より本格的で、料亭や割烹より断然入りやすい。日常的に使える大衆割烹、こういうお店の存在はこれからもずっと必要ではないでしょうか。
大塚で大衆割烹といえば「鳥忠」。創業半世紀以上になる老舗です。
家族経営の正統派大衆割烹
家族経営の大衆酒場はいまでは貴重な存在。2代目の大将と板前さんが厨房に立ちます。
ここは、昭和の飲み屋のムードをいまに伝える、飴色のどっしり構えた空間。
調理場に向いたカウンターは奥に長く、直線で10メートル。ベテランの常連さんが口開けから訪れて、いつもの好物をつまみにオリジナルラベル「鳥忠」焼酎のキープボトルを傾けています。
まずは生ビールから!では乾杯。
カウンターの後ろは畳敷きの小上がりです。靴を脱いで座布団の上に座れば、自分自身が大衆割烹の景色の一部になったも同然。あとは、心をほぐすように、だらりと飲めばいいだけです。この時間がとっても気持ちいいのです。
品書き
樽生はサッポロ生ビール黒ラベル。まだ樽生が黒ラベルと呼ばれていなかった頃から続いている店ならではの、「サッポロ生ビール」という表記が品書きに残ります。
瓶ビールはサッポロ黒ラベル、赤星ことサッポロラガー、そしてアサヒスーパードライ(大びん各600円)も揃います。
サワー類は350円。ホッピーもあり、「みんなで飲むなら白と黒でハーフ&ハーフもおいしいですよ」の表記が、なんだか可愛らしい感じ。
旬の鮮魚から焼鳥、鰻まで揃う
つづいて料理の品書きをみていきましょう。品揃えが非常に多い「鳥忠」。本日のおすすめにずらっと並ぶ鮮魚類をみれば、お店の力強ささが伝わってきます。
時節柄お客さんが減少している今であっても、この顔ぶれ。あしの早いイワシもお刺身で。
黒い短冊が好き。300円ほどの手頃な価格帯の料理がずらっと並んでいます。手元のメニューに載っていない料理もあるので、店内はぐるりと見渡したいところ。
こちらが手元のメニュー。お刺身の種類、本当に多い!
一品料理いろいろ。そして焼鳥。「鳥忠」の店名の通り、魚(うなぎ)と鳥が店の二枚看板。これはもともと鳥忠の創業者が修行した浅草の料理屋から続く系譜によるもの。
焼き魚、うなぎ料理、そして揚げ物いろいろ。
旬を味わう、冬季はカキフライ
ポテトサラダ(350円)は、カニカマいりの、当たり前ですが自家製のもの。そうそう、こういう小鉢までひとつひとつ、丁寧につくっているのが大衆割烹の魅力なんです。
大衆割烹、冬の揚げ物の代表格といえば「カキフライ」(680円)。三口でも食べきれない大ぶりの牡蠣が、きれいなきつね色で登場。ソースを吸ってなおエッジが立っている衣と、その中からやけどしそうな程にジューシーな牡蠣のミルクが口いっぱいに広がります。
さて、焼鳥はどうしようと悩むところ。一般的な串打ちの焼鳥もよいですが、ここは個性的な「大山鶏もも焼き」(650円)はいかがでしょう。
ぱりっと仕上がった皮と、予め甘い下味に漬けられていた、味が染みた骨の周りの美味しいお肉。食べやすいように切り分けてくれますので、ビールや日本酒(大関)片手にちょうどいいです。
コーヒー酎ハイ(350円)。豆はUCC上島珈琲もしくはスターバックスの豆を使っているそう。杯を重ねると、こういうちょっとしたこだわりや遊びが嬉しくなっちゃいます。
大箱で明るく、常連さんだけでなく幅広い層の方が利用しやすい雰囲気の「鳥忠」。大衆割烹はあまり飲み夜行ったことがないという方も、ここならきっと一人で楽しく過ごせると思います。
ごちそうさま。
近くの酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 大塚 鳥忠 |
住所 | 東京都豊島区北大塚2-13-5 |
営業時間 | 営業時間 16:30~23:00(L.O22:45) / ランチ12:00~13:00 日曜営業 定休日 無休 |
開業年 | 1970年頃 |