居酒屋で飲むというとスタイルは様々ですが、心を解いてふわっとした気持ちで飲むというものは、実は少ない。
おつかれさま!と乾杯をしていても一緒に飲む相手とあわせたり、酒場のルールや常連さん、店主さんとの距離感に気を遣うというもの。もちろんそれも含めて酒場は、パブリックな遊び場と言えるのですが。
たまには、何も考えずにゆるく飲みたいな、お財布の千円札の枚数も気にせずに、小銭入れにたまった”ゆる銭”で。そんな気分にはならないでしょうか。
そんなときは、大塚の「ゆる酒場」へどうぞ。
大塚駅周辺は、ワインや日本酒にこだわる新旧銘店や、昨今は立ち飲み屋やせんべろ系酒場も増加傾向で、池袋の隣というオマケポジションから、ノンベエタウンへとアイデンティティが確立されているように思えます。池袋よりも人が少なく庶民的な店が多い、ゆるく飲むなら大塚!なんていう人も多い。
ゆるい飲みの街・大塚で、2015年にオープンしたゆる酒場。同店は、同じ年の6月まで営業していた「立ち飲みコーナー」の居抜きとしてはじまったお店。内装や雰囲気はコーナーの名残がありますが、経営は若き大将となり生まれ変わりました。
若き大将、というと元気でチャキチャキというのが定番ですが、実にゆるい方。そのゆるさが素敵で、お客さんもゆるっとしたひとときを求め集います。
ビールはプレミアムモルツのロゴが貼られたビールサーバーから注がれますが、実はモルツ。適当な感じも素敵です。
とはいえ、お酒も料理も、提供されるものはゆるくはありません。生ビールの状態は良好で、料理も腕がいいと評判です。
ビールは400円(すべて税込み)。瓶ビールではサントリー以外も取扱。酎ハイは200円とリーズナブルで、サワー類が充実しています。3杯分の値段で1Lジョッキになるので、酎ハイ1Lをグビグビ飲む人を見かけます。
おつまみは100円から、自家製が多く、看板料理のとり皮煮込みやブタ肉生姜焼きなどファンが多いと大将。200円の麻婆豆腐ですら、注文を受けてからイチから調理を始めるまじめさがあります。あれ、ゆるくない。
ポテトサラダも自家製。通常200円ですが、小盛り100円も取り分けてくれます。これでも一人でつまむならば十分な量で、価格設定がとにかく安すぎるほど。
調味料が山ほど並んでいるのも特長で、ちょい足しが人気だよ、とのこと。私はブルドックソースのウスターで、定番の下町ポテサラに。
自家製チャーシューは多く分厚く、これで100円というのが素晴らしい。脂っけがビールや酎ハイを勢い付けてくれるのです。
プレーンな酎ハイには、調味料の中からクエン酸をみつけて振りかけることで、クエン酸サワーへ変身です。
※クエン酸などの調味料類は常備品ではありませんので、扱いがない場合もあります。
常連さんが多く、お客さん同士の仲がいいのがゆる酒場の特長です。他愛もない世間話をゆるく話しては、各々のお気に入りを摘んで飲んでいます。200円のたまごキャベツも常連さんのお気に入りの一つです。
キャベツ、揚げ玉、卵を電子レンジで加熱調理するだけの超簡単メニューですが、これに豊富な調味料群を使うことで、マイ・せんべろメシにするのだそう。
できあがり、どろソースとマヨネーズ、青のりをトッピングしたお好み焼き風に仕上げたのは吉本所属のせんべろ芸人 ひかげろう 海野氏。
駆け出しの芸人にはせんべろ酒場が一番!と語るひかげろう海野氏は、200円のたまごキャベツと600円のメガ酎ハイで激安飲みを楽しんでいる真っ最中。
紅茶サワー(250円)がおすすめと大将。頼んでみたら、なんとタンサン入り。えー、まさかのシュワシュワ紅茶!?と驚いていると、「紅茶ハイ」とは書いていないよとのこと。ま、まぁ美味しいのでよいのですが。
常連さんの名前がついているおつまみ盛り合わせがありますが、いつも同じ組み合わせで食べている人がいて、それからついたものだそう。とにかく、全体的にゆるいのです。
美味しいおつまみと、ゆるく笑える立ち飲み「ゆる酒場」。ファサードの文字も大将の直筆だそうで、それも含めてゆるいのです。
ごちそうさま。
ゆるいって何回書いた?(笑)
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ゆる酒場
東京都豊島区北大塚2-6-4 コミヤビル
16:00~24:00(不定休)
予算1,200円