大塚「伊勢元」 焼酎ハイボールを語る上で外せない城北の銘店

大塚「伊勢元」 焼酎ハイボールを語る上で外せない城北の銘店

2016年12月21日

今日は大塚にやってきました。普段は当てもなく飲み歩くことが多いのですが、今回はここ「伊勢元」を目指してやってきました。

Syupoでも以前紹介しています「伊勢元」ですが、この度お店を新しくされて、もともとの店舗から数メートル離れた場所に再オープンとなりました。以前の建物は歴史があり、これぞ酒場という佇まいでしたが、新しくなってもどこか名残を感じるのがとても嬉しい。ちなみに、旧店舗の建物が残っていますので、お間違いなく。

白い暖簾にびしっとキマった筆文字の「伊勢本」。赤ちょうちんとのコントラストが、きりりと締まっていてたまりません。ぴかぴかのガラス扉を開けて、いざ店内へ。

こちらは、なつかしの伊勢元旧店舗の写真。暖簾が変わっていないことがわかります。

昔の店の雰囲気がどこか漂うと思ったら、カウンターが同じものでした。分厚い板のカウンターは酒場の財産だと思います。以前と厨房と客席の位置関係がテレコになっているのですが、席についてみるとあら不思議、以前と変わらないではありませんか。

逆になっているおかげで、出口とトイレを間違えそうになるくらい?あ、私酔っ払っているかも。

現在の店主は三代目。初代が江戸川区の小松川で創業して以来、ボールともつ焼きという下町の基本形を忠実にいまに残しています。店名の伊勢元は、亀戸や平井にもありますが、おそらく暖簾分けではないでしょうか。酒場史を記録している文献が少なく、店主も3代目・4代目ともなってくるとぼやけてきてしまうのがもったいない。

まじめで仕事熱心、寡黙な大将ですが、ここのつまみはもつ焼きだけでなく、どれもいい。名物の煮込みやポテトサラダはファンが多いし、看板のもつ焼きがなにより後を引く美味しさです。

そして、やはり最大の魅力はここの「ボール」ことハイボール焼酎(380円)です。メーカーの協賛タンブラーではなく、薄ハリの特製のグラスを使っているところにもコダワリがみられます。

一杯目はビールといきたいところですが、アサヒさんには申し訳ないと思いつつ、ここは焼酎ハイボールで乾杯がいつもの流れです。では乾杯。

新店舗になったばかりでメニュー構成は控えめに抑えているようです。以前の店の名物だったピンピン焼きや、私が個人的に猛烈にファンだったグランの復活を願いたい。

もつ焼きは一本100円から。下ごしらえばっちり、鮮度よし、なにより焼きの腕は豊島区のもつ焼き屋でトップクラスだと思う串が楽しめます。

まずは冷やしトマトで喉と胃の調子を整えて。今日のお通しはレンコンと人参にキンピラですか。

豚モツ特有のクセをキレイに磨き落として、旨味と舌触りの優しい甘みをぎゅっと閉じ込めたシロ。伊勢元にきたら、このシロとボールでほぼ満足なのです。比較的甘い方向に味をふったタレとの相性がとてもよく、豚モツ食のひとつの完成形だと思います。

ハツとカシラ。味付けはいつもお任せにしていますが、カシラは塩で食べるのがいい。ぷりっぷりの脂がしつこそうに思えますが、ボールと合わせると驚くほどに余韻が爽やかなんです。

つくねももちろん自家製。口の中で肉汁がじゅっと流れ出てくるのですが、意外なほどにコリコリとした食感が残っているのがおもしろい。こんなの食べていたら、焼酎ハイボールが進むに決まってますって。

他にも様々な部位がありますので、お腹をすかせて色々と食べ比べてみてほしいです。一度の訪問ではなく、何度も通っていろいろ食べ比べたくなるのがここ「伊勢元」です。

もつ焼きのレベルの高さはもちろんよいのですが、やはりボールとのバランスの良さこそが伊勢元に通いたくなるベースにあるのだと感じます。

薄ハリのグラスにまずは氷入りの冷水をいれ、一旦ちょうどいいあんばいまで冷やしておくのが技。そこから炭酸ディスペンサーである程度炭酸水を注いで、最後に焼酎と混ざった飴色の特製エキスとレモンスライスを入れて完成です。ご夫婦で切り盛りされているお店で、ボールづくりは奥様の担当です。

氷なし、度数高め、ガス圧しっかりで薄ハリのグラス。下町の焼酎ハイボールも今では宝酒造によって缶酎ハイで市販されるほど一般化してきましたが、ホンモノの味はここにあります。

長く地元で愛される銘店の味、店も新しくなってこれからもずっと続いていきそうです。気になったら大塚で途中下車!

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

伊勢元
03-3918-4646
東京都豊島区北大塚2-29-8
17:30~23:00(日祝定休)
予算2,000円