2020年12月18日、JR山手線駒込駅から徒歩1分の豊島区駒込にもつ焼き酒場がオープン。店主・石山高賢さん名前から「高賢」と名付けられた同店は、大衆酒場好きの3人が開いた待望の一軒です。
山手線沿線の乗換駅において、居酒屋が比較的少ない駒込。人気店で下積みをした確かな腕と、すでにファンがついている高賢は、きっと街に賑わいを創出する一軒となるでしょう。
新しくてもネオじゃない、正統派酒場
JR駒込駅東口を降りると昔ながらの惣菜店などが並ぶ商店街「アザレア通り」が線路と交差するように伸びています。高賢は山手線の内側方向にあります。
赤い提灯に藍色の暖簾。「ネオ大衆」や若者向けのラフな雰囲気の酒場が増える昨今にあって、高賢は正統派の雰囲気です。
店内はふたつのカウンターが配置されています。入ってすぐは、焼台を前にしたL字。店の奥は、同物件で以前営業してた大衆割烹時代からのカウンターを活かしています。
店内の多くを占めるカウンター席。もとは和食店だった物件で、もともとのカウンターを活かしたほか、さらに焼台の前に増設されました。冬季をすぎれば店の外でも飲めるようにしたいと話します。
串焼きの札にも、老舗のオマージュが感じられます。
ビールも日本酒も、三人の思いを込めて
それでは、いつものようにビール(サッポロ黒ラベル・500円)ではじめましょう。取材時のドリンクの担当・加藤さんは、学生時代に渋谷の老舗焼鳥店でアルバイトをしていた頃から、樽生ビールの注ぎ方にずっとこだわり続けてきた方。本人もサッポロ黒ラベルの大ファンということです。
近年は、個性的なサーバーを使用したこだわりの生ビールを提供するお店が増えていますが、高賢ではポピュラーなニットクのマルチサーバーが設置されています。それでも注ぎ手のこだわり次第で、なんとでも美味しくなるというもの。
注ぎはじめの粗い泡を容赦せずに流し落とし、きめの細かな泡だけで作り上げた、極めてパーフェクトな樽生ビールです。
それでは乾杯。
泡まで美味しい、麦の甘さを感じる一杯です。
冷蔵ケースには、瓶ビールでサッポロラガー(大びん680円)が並ぶほか、割材も種類豊富に揃えられています。
ホッピーセットは白・黒あり(480円)。酎ハイ類は350円から。プレーンの酎ハイなどに使用する炭酸水は、マルチサーバーから注ぐ炭酸水を使用。その他は、博水社(武蔵小山)のハイサワー、ホッピービジレッジ(赤坂)のザクロ、コダマ(大森)のクエン酸など。顔ぶれに酒場好きのこだわりが感じられます。
山形県最上町出身のご主人の地元のお酒「此君(このきみ)」が定番酒です。
その他にも、日本酒は山形の銘柄を中心に大変充実しています。
燗つけは酒タンポをつかって湯煎でおこなわれます。お燗はやはり湯煎がいいですね。
もつ焼きだけでない豊富な献立
続いて、料理をみていきましょう。定番メニューは、1本単位で注文が可能な串(150円~)を筆頭に、肉刺し、煮込み、お新香など。
一品料理の豊富さは、お店の特色にしたいとご主人。料理は日々変わっていくということで、「いつきても気になる料理がたくさんあって食べきれない」、と思ってもらえればと話します。
料理担当・小林さんは、板橋区などで人気の「ひなた」や和食業態で働いていた方。レバペーストやチーズキーマカレーなどに面影があります。
此君は料理と寄り添う、日々飲みたくなる食中酒。海鮮にも濃厚なもつ焼きにもよく合います。
逸品料理に技あり
お通しはありません。串が焼けるまでの間は、種類豊富な一品料理から「真鯛と薬味の海苔巻」(500円)を。
たっぷりのミョウガやねぎと一緒に、鯛刺しを巻いて一口。前菜ながら、なかなか贅沢な料理です。
さがり刺し(380円)。
ハラミに近い部位で、低温加熱の刺身として食べられるお店はなかかな貴重です。
さて、そろそろ甲類焼酎でしっかり飲み進めましょう。ホッピーにするか、はたまた、酎ハイにするか。
城東エリアで戦後すぐから飲まれてきた色付きの焼酎ハイボール。これを再現したいとつくられた、こだわりの「焼酎ハイボール」(350円)はぜひ試してみてください。
氷なし、スライスレモンが浮かんだ黄色い酎ハイ。炭酸を叩き入れるように瓶を真下に向けてグラスに注ぎ、そこへエキスと混ぜた宝の甲類焼酎をなみなみ注いで完成です。
串打ちの形状もこだわり
そろそろ串が焼き上がりそう。水道橋の「でん」で焼きを担当していたご主人。炭火の扱いも慣れたもの。
部位ごとに味つけが異なります。ハラミ(150円)は黒胡椒をしっかりと効かせています。滴る美味しさとはまさにこれのこと。
ぷりっとした食感のレバー。直方体の整えられたレバーがみっちりと串打ちされていて、噛むほどにあふれる肉の旨味が心地よい逸品です。
ご主人はもともと美容師だったそうで、その後、大衆酒場をはじめたいと上京。秋元屋の系譜にある「やきとん赤尾」で下積みをし、その後、水道橋の「でん」で焼きを担当し、こうして開いた「高賢」。下積みの履歴を表すのが串の味付けで、秋元屋から広まった味噌ダレも味わうことができます。
かしらあぶらは、味噌ダレで。甘く濃厚な味噌と豚の主張ある脂の味がマッチしています。
評判の「チーズつくね」(300円)。もちもち食感の粗挽き肉を包み込むチーズ。タレ味なのも味のポイントでしょう。
肉味噌ピーマン(一人前350円※写真は二人前)。串物以外もどれも魅力的です。
レモンサワー(ハイサワー)をもらって、〆はちびりとつまむお新香で。
酒場好き三人衆の店
加藤さん(左)、高賢さん(中央)、小林さん(右)。こだわりと、しっかりとした技術を感じる「高賢」。人気店ですが、タイミングをみて覗いてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | もつ焼 高賢 |
住所 | 東京都豊島区駒込1丁目28-15 第二ゼノアビル1階 |
営業時間 | 営業時間 16:00~22:30 日曜営業 定休日 月曜 隔週火曜定休 |
開業年 | 2020年12月18日 |